異世界勇者～それぞれの物語～

番外編 ガーネット編集部

第11話

 夢だった。
 よかった。

 長い夢を見ていた気がする。
 暁さんとつき合おうが、炎とつき合おうが、自分で選んだかもしれない。

 おれは、現実世界で暁さんを選んで、夢では炎を選んだ。

 夢の中の出来事をきっかけとしたけれど、
 おれは改心したいと思う。

 今、いる世界は仮想世界ではないよな？

 おれは、今日もガーネット編集部で働きに出る。

 仕事に出てみると、編集部の一人で自殺したという話があり、大騒ぎになっていた。
 社員みんなで強制ではないけど、
 お墓参りに向かうことになったけど、
 おれと親しい人ではないので、おれは行かないと思う。

 仕事から帰ると、ポストに一通の手紙があった。
 ダエンジェルからの手紙らしい。
 ダエって、夢でしかいないはず。

 桃火さんへ
 仮想世界という名の夢は、どうでしたか？
 さすがに、残酷なことをボクにはできないので、過去戻りを体験させる形にしました。
 後悔したことをやり直したい気持ちは、非常にわかります。
 ボクもその中の一人でした。
 ボクは騙されて、過去戻りをされて、現実世界で体がない状態とされたので、そのまま異次元の住人として過ごすことになりました。
 本来なら、桃火さんも同じようなことをさせるよう上司から命令が来ていたのですが、可哀想なのでできませんでした。
 その代わり、夢という形で過去戻りを体験させました。
 もしかしたら、別の人が過去戻りをさせようとするかもしれませんが、その時は遠慮なく、断ってください。
 過去戻りを体験させられたら、そこに待つのは、異次元の住人になることですから。
 こちらの世界にも、後悔をつけ込む人がいるかもしれませんが、騙されないように慎重な決断をするようにして下さいね。
 今回の件はボクのルール違反なので、ボクは違う仕事をすることになりました。
 だから、別の人が桃火さんの担当になったそうです。
 だから、今後は会えないみたいです。
 この手紙のことは、内緒ですよ。組織のことは機密事項で、ルール違反ですから。
 桃火さんと過ごした日々は、楽しかったです。
 桃火さんは昔のボクに似ていて、助けたくなりました。
 どうか、あちらの世界でも幸せに過ごして下さいね。
　　　　　　　　　　　　ダエンジェルより
 本名　天野川《あまのがわ》天使《エンジェル》
 ボクも、ガーネット編集部で働いたことがあらので、もしかしたら、この名前を知っている人がいるかもしれません。

 長い手紙だった。
 次の日に、ガーネット編集部の社長に聞いてみたら、
「天野川　天使って、わしの元同僚ではないか」
 と驚かれた。

 本当にいたんだ。

 おれは、現実世界で自分の人生を歩もうと思ってる。
 過去戻りなんて、必要ない。