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番外編 白の教団

第5話

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 僕の伯父さん。そんな話を信じるの?と疑いなくなるかもしれないけれど、信じられそうな気がしてきた。
 理由なんて考えていない。ただの勘だ。
 亜熊と話してみて、本当なら、母と弟が見つかるし、見つからないなら嘘ってことになる。
 手がかりがないなら、そいつの言葉を本当と仮定して動くしかないような気もする。

 亜熊は、僕の後ろに立ったけれど、不気味だから、
「前にいろよ」
「はい」
 案外、素直な奴だ。
 一応、信じるって言っても、初対面だし、亜熊であることに変わりはないし、
 僕のテリトリーに入れるほど、心は許せていない。

「じゃあ、白の教団に帰るけど、伯父さんはどうするの?」
「多分、わしは入れないと思う」
「そっか、亜熊だもんね」
「人には触れてほしくないことがあるのをわかってくれ」
「でも、亜熊として生を受けたんでしょ?」
「何を勘違いしてる?」
「勘違いって・・・?」

 亜熊は亜熊じゃないか。
 亜熊として生を受けてるわけじゃないなら、何なんだ?

「亜熊は思いだけが形として残ってるんだ。本体は別のところにある」
「本体って?」
「わしの肉体。人間としての体が別のところにあって、思い、意識とかは影としてさまよっている」
「僕は、亜熊と人間のハーフなんだよね」
「多分な。どうやって身ごもったのか経緯は知らないから、はっきりしたことはわからないけど、亜熊と人間で身ごもったと考えるのが普通だろう」
「伯父さんが僕の出産の秘密を知っているんじゃないの?」
「バカ言え。妊娠した経緯とかいくら兄弟でも聞かんわ」

 僕だったら、聞いちゃうのにね。
 妊娠するのに、何かやましいことでもあるのかな?

「伯父さん、僕は白の教団がマイホームみたいなものだから、嫌でも帰らないといけないんだ」
「わしがなぜ、何のために来たかわかっておるのか?」
「わかってないとは思う。
僕からしてみれば、ある日当然現れて、ある日当、然謎のことを語る亜熊でしかないから」

「白の教団が近ごろに血液検査を行う予定みたいだ」
「血液検査?血液型を知るための検査?」

 そうだ、僕の血液型も調べてもらおう。

「お主、血液検査をすることで、ハーフってわかってしまう危険性もある」
「そんなのわからないよ。糖尿病の検査かもしれないし」
「子供相手に糖尿の検査をするとは思えんが、なくはないだろう。
とにかく、血液検査で、亜熊に取りつかれているかどうか知るための診断が、科学の力でできるようになったと聞いた」
「誰から聞いたの?」
「そういった話なんてどこからでも流れる。特に白の教団の団長は声が大きいから、外に大体丸聞こえ。
子供の声も丸聞こえ」

 それは考えたこともなかった。
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