上 下
51 / 393
番外編 白の教団

第1話

しおりを挟む
 戦う。世界のため。

 僕は、夕期《ゆうき》気合《きあい》。
 試合《きあい》という双子の兄弟もいる。

 僕は、白の教団に入団して、世界の平和を守っていると思う。
 多分、守っているかな。誰にも感謝されないし、認識されない。

 なぜなら、敵は見えないから。
 認識できる人は認識できるかもしれないけれど、そんな話だれも信じないと思う。

 敵の名前は、亜熊。
 亜人だけど、熊みたいなものだから、そんな名前にされたらしい。

 白の教団にいる人達は、全身白の服だったりとかある。
 団長の考え方とかあるから。

「白とか汚れるから、いやなのよね」
 そんな言葉を呟くのは、虹嶋《にじしま》さん。

「団長に言えば?」
「団長に言ったところで、考え方を変えないと思うよ。
昔、夕期君が入団する前に『白は汚れるから、他の色にしてほしい』と何度も、お願いしてもだめだったの。
だから、これからもだめだと思う」

 虹嶋さんは、気が強くて、情熱的かなと思うけれど、
 諦めが早いところも虹嶋さんらしい。

 白の教団で配られる飲み物は、ホットミルクとか、 
 ホワイトコーヒーだったりする。
 お菓子は大体、ホワイトチョコ。
 団長が、白が好きとしか思えなかった。

 僕は、虹嶋さんと一緒にホワイトチョコを食べた。
 食べだしたら、止まらなかった。
 成長期だから仕方ない。成長期なら、誰でもお腹がすく。

 僕と虹嶋さんも、ホワイトコーヒーとか、ホットミ ルクとか、猫舌で飲めないので、
 牛乳をたくさん飲んでいた。

 団長が「君たち、そろそろ戦いの時間だよ」と呼びかけられても、
「忙しいから、無理」と二人で声をそろえて、答えた。

「忙しいって、お菓子食べているだけじゃないか」
「あたし、この後、髪のお手入れとか、お肌のお手入れしなくてちゃいけないから」
「僕は、サッカーやりたい」
「そんなの後でいいじゃないか。そろそろ行くよ」

 僕と虹嶋さんは、しぶしぶ行くことになった。
 気分が向かないのだから、行かなくていいじゃないか。
 僕は、この後同い年の子と一緒にサッカーしたかったのだから、やらせてくれてもいいように感じる。

 団長に転送された場所には、亜熊がいた。
 亜熊は正体不明の謎の物体で、それを退治するのが白の教団の役目。
 亜熊は人間に危害を加え、選ばれし能力を秘めた僕たちしか倒せないと言われている。
 もしかしたら、倒せる存在がいるかもしれないけれど、僕は知らない。
 団長から聞かされていないのだから、知るはずもない。

 僕は剣を持ち、虹嶋さんは傘を持ち、戦いに行く。
 実際は原因不明の遺体なんて、亜熊の仕業であることも。
 
 僕は強いから、大丈夫。
 きっと亜熊に勝てる。ここで負けたりしない。
しおりを挟む

処理中です...