上 下
20 / 393
番外編 ハーレムな光の勇者の夢を見た

第3話

しおりを挟む
 母親の所に行くことになった。
 どうゆう経緯で来ることになったかはわからないけど、お兄さんかお姉さんかわからないけど、後をついていけばついた。
 気がつけば、そいつはいなくなっていた。

 数年の時が流れ、14歳の誕生日に、勇者として旅立つことになって、告げられたことがある。
「伝えなくてはならないことがあるの」
「何を?」
「実は本当の母親ではないのよ」
「うん、わかってた」

 そんな思い出に浸っていると、
 青い髪の女の子、アシュリーが「ヤンゲル様」とかけよってきた。
「ヤンゲル様、お会いできて光栄です」
「光栄って、昨日会ったばかりじゃん」
「ヤンゲル様に少しでも、一緒にいたいんですわ」
「いつでも会えるよ」
「わがままは言いませんわ。わたくしは、ヤンゲル様と一緒にいられる時間がほしいのです。そのためなら、何だってしますわ」
「俺たち、ずっと一緒にいるはずなのに…」

 俺はアシュリーが好きだけど、気持ちを伝えられずにいる。
 アシュリーの敬語を常に忘れない話し方、
貧乳だけどそれに負けないくらい清楚で穏やかなところ、
気が弱くて守ってあげたくなるような雰囲気、
短髪だけど撫でると柔らかい髪、
俺の好きな青が彼女の髪の色になっていて、
小柄の部類になるけど、身長は俺と同じくらい、
俺より年下だけど、10歳以上は離れていない、
怒るところを一切見たことがないし、
一途で、他の男になびかない。
 そんな彼女の好みのタイプは、心情に溢れる人らしい。

 アシュリーは、一人っ子ではないし、兄はいないらしい。
 彼女の姉妹弟きょうだい構成は聞かされていない。
 アシュリーには、母親というものがいないらしく、母親がいるって言うのをどういったものか知りたいと言い出す。
 
 彼女とよく二人旅をする。
「わたくしたち、結婚できるのでしょうか?」
「いきなり、何を言い出すんだ?」
「ヤンゲル様は、何故モテるのかしら?嫉妬してしまいますわ」
「あはは…」

 もかして、実は俺たちは両思いなのではと思わせるような発言はがりするから、
俺から告白しようか、アシュリーの方から告白してくれるかもしれないと、
二つの気持ちがさまよった。
 こんな会話されたら、俺のことを好きとしかとりようがないような気もする。

 アシュリーの手を握りながら、二人で歩いた。
 嫌がる気配がない?
 付き合ってもない男から、手を握られたら嫌がるはずなんだが。
 むしろ、喜んでるようにも見える。

「他のやつといたいとか、思わないのか?」
「今更何をおっしゃるのですか?
ヤンゲル様と一緒でいいんですわ」
 そんなことを言い切るアシュリーも、アシュリーだがな。

 ついた先は、洞窟。
 こわいなあ。だけど、アシュリーの前でそんなプライドを崩すようなことは言えなかった。
 震えていたら、どうしようか?
 俺はごまかせる自信がなかった。

 誰にも内緒だけど、俺は今二人の女性に恋をしている。
 アシュリーとは、正反対の女性に。
 恋をしているだけで、付き合ってはいない。

 髪は短いとも、長いとも言えない。
 胸は小さくもなければ、大きくもない。
 あいつの怒るところなんか、しょっちゅう見る気がする。
 笑うところとか見たことないが。
 かわいいよりも、かっこいい。
 アシュリーは嫉妬深いところがあるけど、嫉妬とかする様子がないから俺のことを好きでないように思えてくる。
 性格は、お転婆。
 アシュリーは薄い青い髪なのに対し、彼女は濃い青い髪だ。
 名前は、リッキー。本名かどうかは不明。
 
 そんなことを考えながら、洞窟の中に入る。

 俺が頭の中で考えていることを読まれたかなと思いながら、
 横目で見たけど、
 アシュリーは微笑みながら腕組みに夢中になっていたから、
 胸を撫でおろした。

 他の女の子のことを考えていることを知られたら、
 アシュリーの嫉妬は半端ないからな、
 思うならほどほどにして勘づかれないくらいにしておかないと。

 洞窟に入る理由、それは俺が勇者だからだ。
 勇者として、魔王とやらと戦わなくてはならない。
 俺もこわいんだよ。
 何故、魔王と戦わなくてはならない?

 年頃の少年らしいことしていたいよ。
 彼女を作って、デートして、宿があれば…。
 あんまり想像を膨らませないでおこう。

 剣を構えながら、進んでいく。
 アシュリーは俺の左を腕組みしてるから、はっきり言うと戦うのに邪魔でしかない。
 こいつ、何しに来てるんだ?
 アシュリーって、戦闘能力とかあるのかな?戦ったところを一回も見たことないような気がする。
 
 ここはどんな言い方をしよう?
 彼女を傷つけたくない。
 
「アシュリーって戦えるの?」
「大丈夫ですわ。ヤンゲル様が守ってくださるのなら、どんなに弱くても足手まといになりません」
 ええー!

 それが一番困るんだよ。
 アシュリーを守りながら戦うとか、器用なことができるかな?
 戦えないくせに、一緒にいることが足手まといそのものでしかない。

 そして、俺とアシュリーは、洞窟で魔王に出会うのではなく、牛が沢山いる牧場に辿り着いた。

 魔王の罠?
 罠にしてみたら、まともではないな。
 もし、魔王が幻覚を見せるとしたら、綺麗なお姉さんとかを見せるならわかる。
 牛なんか見たところでどうってことはない。

「可愛い~」
 どこが?
 草食って、「モー」しか鳴かない牛のどこが可愛い?

「魔王、出てこい!いるんだろ!」
 こんなところ見たところで、感動なんかするわけない。
 
「ふはははははは」
 と魔王が登場したものの、すぐに転んで擦りむいた。

「痛い!痛すぎる!もうだめだ、立てない」
 魔王は泣いていた。
 なんて弱い魔王なのだろう。

「牛は解放する、だから許してくれ」
「解放?」
「そうだ、食肉として出荷されそうな牛をさらったんだ」
 悪い魔王じゃなさそうな気がしてきた。

「わかりましたわ。その代わり、その牛をくれませんか?」
「いいとも」
「いいんかい!」 

「ただ、牛は大事な食用肉となる。となると、食肉ハンターから狙われる危険性がある」
「食肉ハンターですか?」
「そうだ、食肉ハンターは豚、牛、鶏などを狙う」
「食欲ハンターの間違いだろ?」
「とにかく、この牛を食肉ハンターから守ってほしいんだ。
わしは痛くて立てん」

 俺とアシュリーは、牛を村に持ち帰ることにした。
 
 牛は顔が似てるから、見分けがつかないな。

「大変だ、食肉ハンターが来たぞ!」
 村人の叫びを聞き付けて、俺は剣で食肉ハンターと戦う。
 何匹かは食肉ハンターに連れてかれてしまう。
 
 俺一人じゃ、勇者の力が覚醒してるようでしてない今では、複数で襲いかかる食肉ハンターに勝てそうになかった。
 アシュリーはどこにいるかわからないけど、頼りになるかどうかわからないのならいなくていいや。
 
 食肉ハンターは、一人一人は強くないけど、数が多すぎた。
 村人はただ俺を応援するだけで、なにもしない。

 とうとう、俺は疲れきってしまう。
 食肉ハンターから牛を守りきれなかったのだ。
 食肉ハンターは、牛を連れ去ってしまった。

「お前さんはよく頑張った…」
 村長は俺を慰めてくれたけど、お前も見てるだけじゃなく、何かしろよな。
 いくら勇者だからって、何で俺一人の役目になっている?

「今日は体を休めるとよい」
「親切にどうも」
 俺は皮肉を村長に吐いたつもりだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

私は魔法最強の《精霊巫女》でした。〜壮絶な虐めを受けてギルドをクビにされたので復讐します。今更「許してくれ」と言ってももう遅い〜

水垣するめ
ファンタジー
アイリ・ホストンは男爵令嬢だった。 しかし両親が死んで、ギルドで働くことになったアイリはギルド長のフィリップから毎日虐めを受けるようになった。 日に日に虐めは加速し、ギルドの職員までもアイリを虐め始めた。 それでも生活費を稼がなければなかったため屈辱に耐えながら働いてきたが、ある日フィリップから理不尽な難癖をつけられ突然ギルドをクビにされてしまう。 途方に暮れたアイリは冒険者となって生計を立てようとするが、Aランクの魔物に襲われた時に自分が《精霊巫女》と呼ばれる存在である事を精霊から教えられる。 しかも実はその精霊は最強の《四大精霊》の一角で、アイリは一夜にしてSランク冒険者となった。 そして自分をクビにしたギルドへ復讐することを計画する。 「許してくれ!」って、全部あなた達が私にしたことですよね? いまさら謝ってももう遅いです。 改訂版です。

無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす

鈴木竜一
ファンタジー
《本作のコミカライズ企画が進行中! 詳細はもうしばらくお待ちください!》  社畜リーマンの俺は、歩道橋から転げ落ちて意識を失い、気がつくとアインレット家の末っ子でロイスという少年に転生していた。アルヴァロ王国魔法兵団の幹部を務めてきた名門アインレット家――だが、それも過去の栄光。今は爵位剥奪寸前まで落ちぶれてしまっていた。そんなアインレット家だが、兄が炎属性の、姉が水属性の優れた魔法使いになれる資質を持っていることが発覚し、両親は大喜び。これで再興できると喜ぶのだが、末っ子の俺は無属性魔法という地味で見栄えのしない属性であると診断されてしまい、その結果、父は政略結婚を画策し、俺の人生を自身の野望のために利用しようと目論む。  このまま利用され続けてたまるか、と思う俺は父のあてがった婚約者と信頼関係を築き、さらにそれまで見向きもしなかった自分の持つ無属性魔法を極め、父を言いくるめて辺境の地を領主として任命してもらうことに。そして、大陸の片隅にある辺境領地で、俺は万能な無属性魔法の力を駆使し、気ままな領地運営に挑む。――意気投合した、可愛い婚約者と一緒に。

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

殿下、婚約者の私より幼馴染の侯爵令嬢が大事だと言うなら、それはもはや浮気です。

和泉鷹央
恋愛
 子爵令嬢サラは困っていた。  婚約者の王太子ロイズは、年下で病弱な幼馴染の侯爵令嬢レイニーをいつも優先する。  会話は幼馴染の相談ばかり。  自分をもっと知って欲しいとサラが不満を漏らすと、しまいには逆ギレされる始末。  いい加減、サラもロイズが嫌になりかけていた。  そんなある日、王太子になった祝いをサラの実家でするという約束は、毎度のごとくレイニーを持ち出してすっぽかされてしまう。  お客様も呼んであるのに最悪だわ。  そうぼやくサラの愚痴を聞くのは、いつも幼馴染のアルナルドの役割だ。 「殿下は幼馴染のレイニー様が私より大事だって言われるし、でもこれって浮気じゃないかしら?」 「君さえよければ、僕が悪者になるよ、サラ?」  隣国の帝国皇太子であるアルナルドは、もうすぐ十年の留学期間が終わる。  君さえよければ僕の国に来ないかい?  そう誘うのだった。  他の投稿サイトにも掲載しております。    4/20 帝国編開始します。  9/07 完結しました。

処理中です...