異最強騎士

野うさぎ

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第1章 幼少期

第16話 ニート生活の末路

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「母さんはね、元炎の聖女候補だったの・・・。

鈴木氷雨とも、犬猿の仲だったし、
家が近所ってなった時は、よく喧嘩ばかりで、
旦那ともうまくいかなくて、
カンツウォーネは真の幼馴染だということも、全部本当・・・。

スクアーロから聞いたことなら、それを語るとなんとなく予測していたけど」

「そっか・・・」

 複雑だな。
 結局、誰が原因なんだろう?

 俺が悪いの?
 それとも、母さん?
 父さん?
 
 カンツウォーネ?

 どうして、何を間違えてこうなってしまったんだろう?

「また、何かあったの?」

「あった」

「じゃあ、転校する?」

「ううん。

学校に行く気がしない。

しばらく、ニートとかでもいい?」

「真がそうしたいなら」

 母さんは、俺を責めたりしない。
 転校したいとお願いすれば、そうさせてくれた。

 自分の息子が不登校になるとかなら、普通の母親は全力で否定するだろう。
 だけど、俺の母さんは他の親とは変わっている。

「お友達とか、欲しくならないの?」

「どうせ、死んじゃうから」

 俺は、ひねくれていることが自分でもわかっていた。
 だけど、母さんはそんな俺を叱ったりとかしない。

「そうか。

ごめんね。

いつも大変な思いをさせて。

母さんは、真の味方だからね」

「カンツウォーネは、記憶を捻じ曲げることができるんだ」

 母さんは、どうにもしてくれない。
 味方だと主張しても、きっと何もしない。

「平気さ。

母さんは、そんな魔法は効かないからさ」

「効かないって?」

「聖女候補になれるくらいなんだ。

魔法にある程度の耐性はあるさ」

 俺は、話があんまりわからなかったけれど、これ以上は聞かないことにした。

「井藤真ってだけで、カンツウォーネに見つかりそうな気がする」

「それなら、苗字を変える?」

「どうやって?」

「母さんの甥っ子にカムイがいてね、その子の苗字が田中なのさ。

そのご夫妻の親戚になるとかは?」

「受け入れてくれるのかな?」

「母さんが説得してみる。

どう?

養子になりたいなら、籍を入れることもできなくはないけど」

「今、カムイって人はどこにいるの?」

「異世界だけど、真が一回も行ったことない方かな。

異世界とかは、何種類もあるから」

「ふうん。

なら、そこに行ってみようかな」

「ちなみに、カムイのお宅には子供がいるけど、仲良くしてあげてね」

「しょうがないな。

一緒に住むことになるなら、仲良くしてあげるよ」

 こうして、俺は荷物を親戚の家に送ってもらって、
 苗字は田中に変わった。

 いろいろ手続きとかあったみたいだけど、母さんが全てやってくれた。

 俺は玄関の近くで、母さんに挨拶をした。
 今日は、親戚の家に行く日だから。

「母さん、本当にお別れになるかもしれないよ?

全寮制の学校の時は帰ってこれたけれど」

 全寮制は春休み、夏休み、冬休みで帰ってくるけど、親戚の家に住む場合はどうなるのかわからない。

「いいさ。

正直、真がこんな母親を持つことになるのは嫌なんて思われる方が苦だから」

「そんなこと・・・ない」

 母さんは、自分を責めているということが嫌というほど伝わってくる。

「母さんは、母親だということを受け入れてくれるの?」

 母さんは、驚いている様子だった。

「俺は、母さんがいるから今こうして生きていられるんだと思う。

辛い時は、いつも母さんだけは裏切らなかった。

俺は、感謝しているんだ。

母さんは、俺が壊れないように支えてくれたって」

 俺は、母さんに感謝の気持ちを伝えた。
 次は、いつ言えるのかわからないから、ここで言葉にしておこうと思った。

「ありがとう・・・。

こんな母さんでごめんね。

隠し事なんてしないで、最初から話せばよかったかもと今更ながらに後悔してる」

「それは、もういいよ。

全部わかればそれでいいから」

「旦那選びに失敗して、それが真を追い詰めていたって今も後悔してる」

「だから、いいって。

俺は父親ガチャは外しても、母親ガチャを外したとか思ってないから」

「本当にいい子に育ったね」

「ありがとう。

これも、全部母さんのおかげだよ」

「真、母さんは真がいるから孤独にならない。

だから、元気に・・・」

 母さんが言い終わらないうちに、家が崩れた。

 俺は反射的に母さんをかばって、母さんを抱きかかえて崩れ去る物から全てよけた。

 自分でも、避けれることに驚いた。

 目の前には、カンツウォーネがいた。

「あら?

付き合ったの?

お姫様抱っこなんかして」

「付き合ってない。

というか、いつからいたの?」

「井藤真が生きてるってわかってからよ」

 俺は母さんをおろして、背中から剣を抜き、剣を構えた。

「母さんは逃げるんだ」

 俺は、カンツウォーネに聞こえないように、そっと囁いた。

「真、相手はカンツウォーネ。

本気で戦うの?」

「戦いたいわけじゃないけど、戦うしかなくて」

 カンツウォーネは不敵な笑みを浮かべていた。
 これは、何か企んでいる。
 
「真、危ない。

一緒に逃げよう」

「母さんが言うなら」

 ここは戦った方がいいような気がしたけれど、母さんの意見に従うことにした。

 俺は母さんを抱きかかえて、逃げた。

 だけど、カンツウォーネはすごい勢いで追いかけてきた。

「あはははは、楽しいわね。

鬼ごっこかしら?」

 まずい。
 追いつかれる。

 一体、どうすれば?
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