異最強騎士

野うさぎ

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第1章 幼少期

第15話 冤罪での逃亡生活

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「カンツウォーネさん!」

 緑が剣を地面に置き、座り込んでいた。
 
 カンツウォーネは火にやられて、動かなくなっていた。
 目をつむったまま、うなされている様子だった。
 
 火傷をしている箇所は、この位置からじゃ見当たらないけど、気絶している感じだった。
 気絶じゃなくて、ただ横になっているだけか?
 どちらにしても、俺は状況がよくわからない。

「カンツウォーネさんに、なんてことを!」

 緑は涙を流しながらも、こちらを睨んでいた。

「緑は、何もわかっていない・・・」

 俺は、皮肉をこめて言い放った。

 今まで何人もの命を奪ってきたカンツウォーネを尊敬しているけれど、状況が逆転したらこうなるのか。
 俺は、怒る気にもなれなかった。
 むしろ、ここで怒ることは正解ではないのかもしれない。

「もし、憎いと思うなら、
自分の胸に手を当てて考えてみるんだね」

「カンツウォーネさんは、人を殺してもいいの!

何人、殺したっていい!

だけど、君達人間ごときがカンツウォーネさんを殺すことなんて許さない!」

「俺は、殺していない。

そこまでするつもりはない。

だけどさ、自分がされて悲しいことをどうして、人にするの?」

「カンツウォーネさんは、悲しい過去を送ってきたの。

だから、何してもいい」

 理屈がわからない。
 わかろうとするだけ、無駄かもしれない。

「君も含めて、カンツウォーネは救いようがない」

「救ってよ!

助けて!

かわいそうなカンツウォーネさんを!」

「これで、助けようとか思えるか・・・」

 俺は、拳を握りしめながら答えた。

「俺は、本当は憎いんだよ。

復讐したいけど、これじゃだめだって思うから、
必死に抑えているの。

それがわかったら、
ううん、君は絶対にその気持がわからない。

刑務所に入るんだ。

今すぐにでも終身刑でも、死刑にでも、なってほしいよ。

俺は、君が思うほど心が綺麗じゃない。

親切になんて、できない。

俺は言いたいことを言い切った。

これ以上、同じことを言わせないで?」

 非道なことかもしれないけど、悪を簡単に許してしまうほど俺の心は広くない。
 今でも、許せない。

 俺にできることは、彼女達と同じことをしないということだけだった。

 ここで、パトカーが走る音とサイレンが聞こえた。

「そろそろ、警察とやらが来たな」

 スクアーロがそう呟いたところに、カンツウォーネが立ち上がった。

「あははははは」
 
 なぜか、カンツウォーネは笑っていた。

「勝った、勝ったわ」

「勝ったって何に?」

「このまま警察が来れば、いいのよ。

警察の記憶にね、アーネストとスクアーロが犯人だっていうことに記憶を書き換えたのよ。

学園長がね、警察に電話なんかするからよ。

学園長の記憶も、これでねじ曲がったわね」

「やられた・・・」

 スクアーロは、悔しがっていた。

「スクアーロ、このままじゃやばいよ。

逃げよう・・・」

「そうだな」

 スクアーロは俺の左肩に乗り、俺はこの場から逃げ去った。

 朝になるまで、走り続けた。
 どこか遠くに行けるように・・・。

 翌朝の新聞には、
 スクアーロとアーネストが学園を崩壊させた上に、
 大量殺人を行ったという偽造ニュースになっていた。

 犯人はカンツウォーネであるはずだけど、
 俺はまんまと彼女の策略にはまってしまった。

「この記事って・・・?」

 俺はポスターを見て、顔を青ざめた。

「これは、まずいな。

早急に瞬間移動の魔法で、人間世界に転送しなくてはな」
 

 俺はスクアーロの瞬間移動の魔法により、
 異世界から抜け出し、’
 人間世界にいた。

「家の前についたぞ」

「その魔法、どうやって使ったの?」

「そんなことは、いいだろ?

とにかく、おいら達は異世界でいう指名手配犯だ。

お互いに、別行動をとるとしようだ。

じゃあな」

 スクアーロは一方的に話して、その場を去った。
 俺は家の前に転送されたから、家に帰る。

 俺は、アーネストという名前を名乗っていない。
 スクアーロとは異世界を抜け出して以降、会っていない。
 もしかしたら、身を隠しているか、
 ヒサっちに会いに行っているかのどちらかかもしれない。

 幸いなことに、異世界の情報は人間世界にやってこない。
 そもそも、人間世界の住人は異世界の存在を知らないし、
 聞いたとしても、そんな簡単には信じない。

 俺は、母さんに聞いてみることにした。

「カンツウォーネって知ってる?」

「急にどうしたの?」

 なぜか、母さんは青ざめていた。
 この様子だと、明らかに何か知っている。

「父さんのことも、どこまで知っているの?」

「え?」

「隠さずに教えてほしいんだ。

スクアーロっていう妖精?らしき者が、本当の話だったら、
俺がカンツウォーネに狙われている理由、
母さんが炎の聖女候補だった過去を持つこと、
そして、氷雨とカンナは犬猿の中で、それは今も続いて・・・」

 俺が最後まで言い終わらないうちに、母さんが話し始めた。

「スクアーロ?

スクアーロに既に会ってたの?

いつから?」

「やっぱり、知っているんだ・・・」

「真を傷つけないために、全て隠していたの。

何もかも秘密にしていた」

 残酷かもしれないけど、これは真実だったのか。
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