盗賊たちに愛されて

野うさぎ

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第1章

第6話

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 俺は、夢を見た。
 不思議で、知らない人しかいない内容だった。

「スクアーロ、私には勝てないって・・・」

 青のオーラをまとい、無傷で炎から登場したカンツウォーネさんを見て、私は勝利を諦めた。
 
 サイコキラーなんてよくわからない。
 だけど、今の戦いでカンツウォーネさんが人間ではないことがはっきりした。
 これ以上、どうあがけばいいの?

 私が騎士の娘であろうと、なかろうと関係ない。
 私は生まれた時から、父親でもないし、母親と同じなんかじゃない。

 どっちにしても、私は両親なんて知らない。
 周囲に背中を押されるがままにやったことなんだ。

「勝敗は決まってない・・・」

「ううん、決まっているの。

カンツウォーネさんは、人間じゃない。

炎の魔法も効かない。
銃もまともに当てられない。

それで無理なら、他に打つ手なしってことじゃない?」

「そうかもしれないけど、武器は?

他にはないの?」

 スクアーロは、どうして私に戦わせようとしてばかりなんだろう?
 自分でどうにかしないの?
 正直、私はうんざりしていたけれど、そこは何も言わないでおこう。

「弓はあるけど、弾丸よりは威力は弱めだろうし、たいして変わらないよ・・・」

「だけど、だけど・・・。

ここで諦めたら、次に誰が犠牲になるか・・・」

「そんなこと言っても、打つ手がないの・・・。

お願い、スクアーロ、わかって・・・?」

 これ以上、私に何も期待しないでほしかった。
 戦うことなんて、こわい。

 カンツウォーネさんから、命を奪われるかもしれない。
 死にたくない。
 死にたくない。

「はんっ。

打つ手なしっていうことは、諦めたってことだわよね?」

 ここで、カンツウォーネさんが私に向けて、蹴りを飛ばしてくるところで、目を閉じた状態で私は身構えた。

 ・・・あれ?
 何もない・・・?

 目を開けると、カンツウォーネさんは足を上げるところで止まっているし、スクアーロも動いていない。

「もしかして、時間が止まっている・・・?」

 まさか、そんなフィクションみたいなことあるわけない!って言いたいところだけど、何でも起こりそうな気がした。

「赤音ちゃん・・・」

 声がした方を振り向くと、紫髪の小さな女の子がいた。

「誰・・・?」

「憶えてない?

紫帆だよ。

小さい頃によく保育園で遊んだ・・・」

「そんなわけない!

紫帆ちゃんはとっくの昔に・・・」

 紫帆ちゃんだって思いたいけれど、死んだ人間が現れるわけがない。

「そうだよ。

紫帆は、3歳の頃に生《せい》を失うことになった」

「そしたら今の君は、何なの?

幽霊?

亡霊?

お化け?

死神?

天使?

女神様?」

「紫帆は、紫帆だよ」

 目の前で起きていることが、何も理解できなかった。

「紫帆はね、死んだ時に覚醒できるの。

そして、カンツウォーネのことも、
真君のことも、
緑《りょく》ちゃんのことも、
赤音ちゃんのことも、そばでずっと見守っていたの。

ごめんね、うまく言えなくて」

「私は幼馴染と既に疎遠になってしまったの!

君の知っている私じゃない・・・」

「それでも、赤音ちゃんは赤音ちゃんだよ」

「どうして、そんなことが言えるの?」

「紫帆はね、思うんだ。

赤音ちゃんが、こんなの自分じゃないって思っても、
そして、昔と変わってしまうことだって、これからもあるかもしれない。
だけどね、それでも、赤音ちゃんが他の誰かになることなんてない」

 ここで、私は涙を流した。

「紫帆ちゃんと、もっと一緒にいたかったよ・・・。

保育園も、
幼稚園も、
小学校も、
生きていられたら、きっと今とは違った人生になれたかもしれない・・・」

 私は、本当は誰かに相談したかった。
 だけど、どこにも本音を打ち明けられる存在がいなかった。

「紫帆も、もっと生きたかったよ・・・」

 紫帆ちゃんも、涙を流していた。

「紫帆が生きていたら、相談役になれたかもしれない・・・。

赤音ちゃんが、苦しくないように、
少しでも心が軽くなるようにアドバイスできたかもしれないのに・・・。

本当に、何もできなくて・・・ごめんなさい・・・」

 目の前で泣いてる幼い子供相手に、私はどうしていいかわからなかった。
 私は彼女が今も生きていたらと思っていたけど、だけどこの子も辛いんだ。

 ここで、俺は目を覚ました。

 部屋の近くには、こんな手書きだと思われる文字を書かれた壁紙があった。


 山賊退治。
 優秀な人材から順に、イタリア語で10番までの番号が与えられる。

 海賊退治。
 優秀な人材から順に、スペイン語で10番までの番号が与えられる。

 空賊退治。
 優秀な人材から順に韓国語で10番までの番号が与えられる。
 1 イル)。
 2 イー。
 3 サム。
 4 サー。
 5 オー。
 6 ユッ。
 7 チル。
 8 パル。
 9 クー。
 10 シプ。

 宇宙賊退治。
 地球や異世界ではなく、「宇宙賊」と呼ばれる宇宙の盗賊退治を担当する、盗賊退治の中では難易度が高く、採用される人が少ない。
 そのために、優秀な人材から順にフランス語で7番まで与えられる。
 実は、本人は自覚はしてないが、サランも優秀で宇宙賊退治に向いており、8番目に成績がいい。
 だが、7番目までという決まりなので、番号は与えられない。


 トゥリッツさんの文字と思われるけど、何故こんな内容を書こうと思った?
 昨日までなかったのに、起きた今日に貼ってある。
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