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4章 アラサー女子、年下宇宙男子に祈る
4-11 母がいなくなった日
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「なこ、なこ!」
わざわざ宇関までやってきた母が、叫びながら私の肩をゆすっている。
私は自分の部屋で昔を思い出し、自失していたようだ。
「衛星の打ち上げって、朝河さんの仕事でしょ。なこ、具合が悪くなるほど心配なのね」
肩に置かれた母の手を払いのけた。触らないでほしい。
「大変なのは、朝河さんたちよ。打ち上げのため、なこでもできることあるわ。励ましのメッセージを送るのよ」
そうよね。この人は、私が流斗君とちゃんと付き合ってると思ってるのね。
今さらそんなことできるわけがない。
「朝河先生は、若い子と結婚したんです」
母が目を見開いた。
「信じられない……あんなに、なこを心配してくれたのに…」
何を根拠にそんなことを言うんだろう。
「朝河さんと、話し合ったの?」
「ええ、お互い、会うのを辞めようって」
「……男の人ってわからないわ……それでもなこは、心配なんでしょう?」
もう、この人には出てってほしい。
「私のせいで、打ち上げが延期になったんです」
母が眉根を寄せている。
「私、ウサギさまに歌ったの。打ち上げ失敗すればいいって! そしたら、その通りになったじゃない!」
この人には私の言うことがわからないだろう。
母は、私を化け物かのような目で見ている。
あなたが、その化け物を産んだのに。
母がそばによってくる。
「願いが叶って嬉しい、という顔じゃないわね」
「嬉しい? どうして? 私がウサギさまに歌ったせいなんですよ! 失敗したら二度目はないんです……この国には、そんな余裕はないから……」
「後悔しているのね? 本当は成功してほしいのね?」
無言で私はうなずいた。
「どこで歌ったの?」
「はっきり覚えていないの……いつのまにか私、運動公園に行って宇鬼川に入って歌ってて、駐在さんに止められたわ」
訝しげな表情で見つめられた。
「運動公園って、お父さんが亡くなった……あなた、大丈夫なの?」
「……朝河先生の実家が川沿いなんです……」
母は平静を装いつつ考え込んでいる。
「もう一度、ウサギさまにお願いするのよ。私は間違っていた、成功してほしいって。同じ方法でやってみたら?」
この人は何を言ってるのだろう?
「今度は、儀式を止められないようにしましょう。珂目山神社の宮司様に河原へ来てもらって、祭壇を設けるの。あなたも滝行の行衣を着けて歌えば、邪魔されないわ」
もう一度、ウサギさまにお願いする。無事に衛星が軌道に乗って、宇宙の始まりに出た信号を観測し、そこから流斗君がマルチバースの証拠を見つける……。
その時、彼と彼の家族は大いに称えられ、私はそばにいないけど、彼と過ごした短い時間が、ずっと私を支えてくれるはず……。
「……倉橋さん……」
「なこは、ひどい目に遭った珂目山神社なんか行きたくないだろうから、私が話を着けておくわ」
母が立ち上がる。
「タクシー呼んで神社に行ってくるわ。日取りが決まったら連絡するね」
私も立ち上がる。
「車、私が出します」
助手席に母を乗せる。
母を乗せて運転する日がくるとは、不思議な気持ちだ。
「夢みたい。なこの車に乗れるなんて」
母が浮かれているのが面白くない。
「祭りをサボって見たプラネタリウム、きれいでしたね」
あの時までは、母が大好きだった。
「覚えてるの?」
「ええ。あなたの友だちの店でランチしましたよね。あの人、素芦の前の屋敷で古民家カフェ開いたんです、知ってます?」
「知ってるわ。招待されたけど、行ってないの。どうしても行く気になれなくて」
「私は、今年初めて行きました。あの日、首都のおばあ様の家に初めて行って、倉橋さんに会いましたよね」
今、母は、顔色を変えただろう。
母と思い出を語りたいわけではない。
二十年前から私はこれを聞きたかった。
「あなたは、倉橋さんと結婚するために家を出たんですか?」
車内が静まり返る。
私が母を嫌いな一番の理由。私を捨てお父さん以外の人と結婚したこと。
「それはないわ。でも、ずっと前からお父さんと別れて、なこと暮らそうと考えてた」
確かにそれを母が提案した。が、私はそれを拒んだのだ。
「倉橋さんが関係ないなら、なぜ別れようと?」
「疲れたのかな……男の子、跡継ぎ産めって言われて、三時間かけて首都の病院に通っても出来なくて……」
知らなかった。素芦の家に男子が望まれてたのは。
「荒本さんがお婿さんになって、私が跡を取ることになってましたよ」
助手席の上品な女性が、首を振った。
「そんなことはさせたくなかったから、がんばったんだけど、七年が限界だった。ごめんなさい」
それだけが別れの理由ではない気がした。
二~三時間程度で行き来できるのに、母の実家に行ったのが十歳の時だけ、というのも異常なことだ。この程度の距離なら一年に一度は母親の実家に帰るだろう。
素芦の古い家そのものが、都会育ちのこの人には、耐えられなかったかもしれない。
「あなたを首都に連れて帰った夜、お父さんと喧嘩して私は出ていったの。数日して戻ったら、もう遅かったわ。お父さんが若い家政婦さんを紹介したの。あなたの新しいお母さんだと」
「真理絵さん? そんな感じじゃなかったけど」
私はその家政婦の名を告げた。
母は悲しげに笑った。
「そうみたいね。まさか彼女が丞司君の子を産むなんてね……。何度か訪ねたけど、あなたは段々冷たくなって、口も聞いてくれなくてね……お父さんからあなたを取り上げるのも、申し訳なくて……いえ、やはり、疲れてたの」
「それで、落ち込んで倉橋さんと再婚したんですか」
母は、父と別れて半年後に再婚し、半年後に子どもが生まれた。それも男の子だ。父と母が望んで叶わなかったのに。
「あなたには、どれほど恨まれても仕方ないと思っているわ」
二十年前の記憶が蘇る。
祭りをサボって帰った翌日。
家に戻った母は祖母に散々罵倒された。
父は母に殴りかかった。
喧嘩ではなく一方的な暴力だった。
私は泣きながら父を止めようとしがみついた。
「やめて! 那津美がママにお願いしたの!」
しかし私の声は父の耳には届かず、怒鳴り拳を降ろし続けた。
私は、止めようとしがみついたけど止められず……卑怯にも逃げ出した。自分が殴られたくないから。
だから、忘れてしまった。忘れたふりをずっとしていた。
翌日、母は素芦の屋敷から消えた。
私は父に何度も聞いた。「ママは?」
「お母さんはお前を捨てた。田舎より都会がいいって」
私は「わたしも都会に行く!」と言い張った。
「おばあちゃんもお父さんも丞司くんも、学校の友達もみんなと二度と会えなくなるんだよ」
それが怖くて、私は我慢した。
いつの日からか、私は母を嫌うようになった。
母は心配そうな視線を、運転中の私に注いでいる。
「神社大丈夫? あんな恐ろしい目に遭って……無理しないで」
「やっぱり、倉橋さん、あの時いたんですね。幻じゃなかったんだ」
あの時。祭りの夜、荒本さんに襲われた夜。
母が息を飲む音が聞こえた。
「亀石の前で男が女を手に入れると、女は一生男に服従するなんておぞましい伝説……お金のために十歳の女の子にそんなひどいこと……あなたが普通に丞司君と恋愛するのは自由だけど、儀式だけは止めさせたかった」
それが、母が毎年、祭りに来ては私に付きまとう理由だったのか。
「まさか、疋田の叔母さんも、素芦の儀式を?」
母が首を振った。
「それは聞くべきではないわ」
叔父はそんな恐ろしいやり方で叔母を手に入れたのだろうか?
……考えるべきではない。ただ、塾で叔母は、生き生きと子どもたちを愛していた。
叔母と母が今でも交流あるのは、素芦の忌まわしい儀式を阻止しようという連帯からだろうか。
荒本さんが婚約中の私を最後まで抱こうとしなかったのに、祭りの夜、蛮行に及んだのは、天候を操る『素芦の姫の力』を手に入れるためだったから?
笑ってしまう。今は、138億年前の宇宙誕生の秘密に迫ろうと、宇宙に観測衛星を打ち上げる時代なのに。
「大丈夫ですよ。素芦は私の代で終わりだし、荒本さんは転勤しました。二度とそんな儀式は起きません」
「そろそろ孫の顔見たいわ」
残念ながらそれは無理な相談だ。流斗君との子どもは望めない。先日、生理が来てしまった。それでよかった。怨念に固まった私には、子育てなんて無理だから。
珂目山神社の宮司は、社務所に現れた途端、頭を下げた。
「お母様、那津美様、あの時は本当に申し訳もありませんでした」
「謝るならもっと前に謝るべきでしょう! 私たちが現れてからでは遅すぎます!」
母が顔を真っ赤にして送っている。
「すぐに詫びるべきでしたが、那津美様は私どもなど会いたくないであろうと、下手な噂になってもと思い……申し訳もありません」
あの出来事は、神社と荒本さんだけが知っていて、祭りの委員会など自治会の人々は関係ないようだ。
「この子の相手はこの子が選びます。相手を選ばず子どもを産まない人生だってこの子の自由です」
さっきは、孫の顔を見たいと言ったのに?
大体、母がいつまでも宮司に依頼を忘れ怒りをぶつけるので話が進まない。
私から切り出した。
「私も思うことはいろいろありますが、それどころではありません。運動公園の河原で、祈願を行います」
「あそこは、先代が亡くなられた場所では?」
「父は今回、関係ありません。宇宙研究センターで打ち上げる宇宙観測人工衛星の成功を祈願します。打ち上げには、西都科技大も参加しています」
「それは素晴らしいことです。神社の本殿で執り行いましょう」
私は首を振った。
「祈るのは私です。私はあの場所でないと歌えません」
特別な計らいで、三日後、河原で祈願祭を行うこととなった。
わざわざ宇関までやってきた母が、叫びながら私の肩をゆすっている。
私は自分の部屋で昔を思い出し、自失していたようだ。
「衛星の打ち上げって、朝河さんの仕事でしょ。なこ、具合が悪くなるほど心配なのね」
肩に置かれた母の手を払いのけた。触らないでほしい。
「大変なのは、朝河さんたちよ。打ち上げのため、なこでもできることあるわ。励ましのメッセージを送るのよ」
そうよね。この人は、私が流斗君とちゃんと付き合ってると思ってるのね。
今さらそんなことできるわけがない。
「朝河先生は、若い子と結婚したんです」
母が目を見開いた。
「信じられない……あんなに、なこを心配してくれたのに…」
何を根拠にそんなことを言うんだろう。
「朝河さんと、話し合ったの?」
「ええ、お互い、会うのを辞めようって」
「……男の人ってわからないわ……それでもなこは、心配なんでしょう?」
もう、この人には出てってほしい。
「私のせいで、打ち上げが延期になったんです」
母が眉根を寄せている。
「私、ウサギさまに歌ったの。打ち上げ失敗すればいいって! そしたら、その通りになったじゃない!」
この人には私の言うことがわからないだろう。
母は、私を化け物かのような目で見ている。
あなたが、その化け物を産んだのに。
母がそばによってくる。
「願いが叶って嬉しい、という顔じゃないわね」
「嬉しい? どうして? 私がウサギさまに歌ったせいなんですよ! 失敗したら二度目はないんです……この国には、そんな余裕はないから……」
「後悔しているのね? 本当は成功してほしいのね?」
無言で私はうなずいた。
「どこで歌ったの?」
「はっきり覚えていないの……いつのまにか私、運動公園に行って宇鬼川に入って歌ってて、駐在さんに止められたわ」
訝しげな表情で見つめられた。
「運動公園って、お父さんが亡くなった……あなた、大丈夫なの?」
「……朝河先生の実家が川沿いなんです……」
母は平静を装いつつ考え込んでいる。
「もう一度、ウサギさまにお願いするのよ。私は間違っていた、成功してほしいって。同じ方法でやってみたら?」
この人は何を言ってるのだろう?
「今度は、儀式を止められないようにしましょう。珂目山神社の宮司様に河原へ来てもらって、祭壇を設けるの。あなたも滝行の行衣を着けて歌えば、邪魔されないわ」
もう一度、ウサギさまにお願いする。無事に衛星が軌道に乗って、宇宙の始まりに出た信号を観測し、そこから流斗君がマルチバースの証拠を見つける……。
その時、彼と彼の家族は大いに称えられ、私はそばにいないけど、彼と過ごした短い時間が、ずっと私を支えてくれるはず……。
「……倉橋さん……」
「なこは、ひどい目に遭った珂目山神社なんか行きたくないだろうから、私が話を着けておくわ」
母が立ち上がる。
「タクシー呼んで神社に行ってくるわ。日取りが決まったら連絡するね」
私も立ち上がる。
「車、私が出します」
助手席に母を乗せる。
母を乗せて運転する日がくるとは、不思議な気持ちだ。
「夢みたい。なこの車に乗れるなんて」
母が浮かれているのが面白くない。
「祭りをサボって見たプラネタリウム、きれいでしたね」
あの時までは、母が大好きだった。
「覚えてるの?」
「ええ。あなたの友だちの店でランチしましたよね。あの人、素芦の前の屋敷で古民家カフェ開いたんです、知ってます?」
「知ってるわ。招待されたけど、行ってないの。どうしても行く気になれなくて」
「私は、今年初めて行きました。あの日、首都のおばあ様の家に初めて行って、倉橋さんに会いましたよね」
今、母は、顔色を変えただろう。
母と思い出を語りたいわけではない。
二十年前から私はこれを聞きたかった。
「あなたは、倉橋さんと結婚するために家を出たんですか?」
車内が静まり返る。
私が母を嫌いな一番の理由。私を捨てお父さん以外の人と結婚したこと。
「それはないわ。でも、ずっと前からお父さんと別れて、なこと暮らそうと考えてた」
確かにそれを母が提案した。が、私はそれを拒んだのだ。
「倉橋さんが関係ないなら、なぜ別れようと?」
「疲れたのかな……男の子、跡継ぎ産めって言われて、三時間かけて首都の病院に通っても出来なくて……」
知らなかった。素芦の家に男子が望まれてたのは。
「荒本さんがお婿さんになって、私が跡を取ることになってましたよ」
助手席の上品な女性が、首を振った。
「そんなことはさせたくなかったから、がんばったんだけど、七年が限界だった。ごめんなさい」
それだけが別れの理由ではない気がした。
二~三時間程度で行き来できるのに、母の実家に行ったのが十歳の時だけ、というのも異常なことだ。この程度の距離なら一年に一度は母親の実家に帰るだろう。
素芦の古い家そのものが、都会育ちのこの人には、耐えられなかったかもしれない。
「あなたを首都に連れて帰った夜、お父さんと喧嘩して私は出ていったの。数日して戻ったら、もう遅かったわ。お父さんが若い家政婦さんを紹介したの。あなたの新しいお母さんだと」
「真理絵さん? そんな感じじゃなかったけど」
私はその家政婦の名を告げた。
母は悲しげに笑った。
「そうみたいね。まさか彼女が丞司君の子を産むなんてね……。何度か訪ねたけど、あなたは段々冷たくなって、口も聞いてくれなくてね……お父さんからあなたを取り上げるのも、申し訳なくて……いえ、やはり、疲れてたの」
「それで、落ち込んで倉橋さんと再婚したんですか」
母は、父と別れて半年後に再婚し、半年後に子どもが生まれた。それも男の子だ。父と母が望んで叶わなかったのに。
「あなたには、どれほど恨まれても仕方ないと思っているわ」
二十年前の記憶が蘇る。
祭りをサボって帰った翌日。
家に戻った母は祖母に散々罵倒された。
父は母に殴りかかった。
喧嘩ではなく一方的な暴力だった。
私は泣きながら父を止めようとしがみついた。
「やめて! 那津美がママにお願いしたの!」
しかし私の声は父の耳には届かず、怒鳴り拳を降ろし続けた。
私は、止めようとしがみついたけど止められず……卑怯にも逃げ出した。自分が殴られたくないから。
だから、忘れてしまった。忘れたふりをずっとしていた。
翌日、母は素芦の屋敷から消えた。
私は父に何度も聞いた。「ママは?」
「お母さんはお前を捨てた。田舎より都会がいいって」
私は「わたしも都会に行く!」と言い張った。
「おばあちゃんもお父さんも丞司くんも、学校の友達もみんなと二度と会えなくなるんだよ」
それが怖くて、私は我慢した。
いつの日からか、私は母を嫌うようになった。
母は心配そうな視線を、運転中の私に注いでいる。
「神社大丈夫? あんな恐ろしい目に遭って……無理しないで」
「やっぱり、倉橋さん、あの時いたんですね。幻じゃなかったんだ」
あの時。祭りの夜、荒本さんに襲われた夜。
母が息を飲む音が聞こえた。
「亀石の前で男が女を手に入れると、女は一生男に服従するなんておぞましい伝説……お金のために十歳の女の子にそんなひどいこと……あなたが普通に丞司君と恋愛するのは自由だけど、儀式だけは止めさせたかった」
それが、母が毎年、祭りに来ては私に付きまとう理由だったのか。
「まさか、疋田の叔母さんも、素芦の儀式を?」
母が首を振った。
「それは聞くべきではないわ」
叔父はそんな恐ろしいやり方で叔母を手に入れたのだろうか?
……考えるべきではない。ただ、塾で叔母は、生き生きと子どもたちを愛していた。
叔母と母が今でも交流あるのは、素芦の忌まわしい儀式を阻止しようという連帯からだろうか。
荒本さんが婚約中の私を最後まで抱こうとしなかったのに、祭りの夜、蛮行に及んだのは、天候を操る『素芦の姫の力』を手に入れるためだったから?
笑ってしまう。今は、138億年前の宇宙誕生の秘密に迫ろうと、宇宙に観測衛星を打ち上げる時代なのに。
「大丈夫ですよ。素芦は私の代で終わりだし、荒本さんは転勤しました。二度とそんな儀式は起きません」
「そろそろ孫の顔見たいわ」
残念ながらそれは無理な相談だ。流斗君との子どもは望めない。先日、生理が来てしまった。それでよかった。怨念に固まった私には、子育てなんて無理だから。
珂目山神社の宮司は、社務所に現れた途端、頭を下げた。
「お母様、那津美様、あの時は本当に申し訳もありませんでした」
「謝るならもっと前に謝るべきでしょう! 私たちが現れてからでは遅すぎます!」
母が顔を真っ赤にして送っている。
「すぐに詫びるべきでしたが、那津美様は私どもなど会いたくないであろうと、下手な噂になってもと思い……申し訳もありません」
あの出来事は、神社と荒本さんだけが知っていて、祭りの委員会など自治会の人々は関係ないようだ。
「この子の相手はこの子が選びます。相手を選ばず子どもを産まない人生だってこの子の自由です」
さっきは、孫の顔を見たいと言ったのに?
大体、母がいつまでも宮司に依頼を忘れ怒りをぶつけるので話が進まない。
私から切り出した。
「私も思うことはいろいろありますが、それどころではありません。運動公園の河原で、祈願を行います」
「あそこは、先代が亡くなられた場所では?」
「父は今回、関係ありません。宇宙研究センターで打ち上げる宇宙観測人工衛星の成功を祈願します。打ち上げには、西都科技大も参加しています」
「それは素晴らしいことです。神社の本殿で執り行いましょう」
私は首を振った。
「祈るのは私です。私はあの場所でないと歌えません」
特別な計らいで、三日後、河原で祈願祭を行うこととなった。
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