【完結R18】君を待つ宇宙 アラサー乙女、年下理系男子に溺れる

さんかく ひかる

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2章 アラサー女子、年下宇宙男子にハマる

2-2 芝生でランチデート

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 翌日も、飯島さんからダメだしされた。
「内線に出る時、わざわざ、大学名入れなくても、ええんとちゃいます?」

 はい、その通りです。すみません。
 塾では子機つきの家庭用電話機を使ってた。回線も一本で問題なかった。親機と子機で電話を転送するより、目の前で電話を渡せば終わり。
 外線を受ける、内線を受ける、保留して転送する、他の電話に出る……ややこしい。転送するつもりが、切れてしまったり、受けるつもりが出なかったり。そのたびに、飯島さんに叱られる。
 パートの海東さんには「電話なんていっぱい取れば慣れるって」と慰められる。

 以前の塾の仕事は、事務も講師の仕事も、自分のペースで好きにできた。叔母は基本的に任せてくれる人だった。
 二日目でこの判断は早いが、この仕事はどうも勝手が違う。第一、私はここで一番の下っ端だ。
 モヤモヤを抱えたまま、お昼が近づく。
 スマホにメッセージが入った。朝河君からだった。

『ミネルバカフェ行きませんか?』
 昨日の食堂とは別に、オシャレなカフェがあるようだ。そのことを朝河君は言ってるのだろう。しかし、私は節約のためお昼は弁当にしている。それに、気まずいから会いたくない。
『お弁当持ってきたので』
 が、彼は即、別案をもちかける。
『芝生の丘にしましょう』
 待ち合わせ場所を再指定された。

 どうしよう。
 昨日、沢井さんから、朝河君は「先生」、自分は「バイト」と釘を刺された。
 バイトが仕事と関わりあいのない准教授とご飯を食べるなんて、あまりいいことではないかもしれない。
 上司が賛成しなければ、それを口実に断れる。
「課長、朝河先生と私がお昼一緒って、あまりよくないですよね?」
「いいじゃない。いちいち私に聞かなくていいわ。いってらっしゃい」

 あれ? いいんですか? 沢井さん、顔がニヤついてるんですが。
「ついでに朝河先生への取材依頼書。返事聞いといて」
 と、パラッと印字されたA4用紙十枚を渡される。

 沢井さんがいうには、その取材依頼書を朝河先生に送ったところ、すべて断られたとのこと。
 昨日のお昼、沢井さんが先生に何か聞いて怒られたのは、このことなのね。
「でも、課長が断られたのに、私が頼んだからといって引き受けてくれるでしょうか?」
「私よりは可能性あるわ。そうでないと、あなたを採用した意味ないじゃない」

 沢井さんは謎なことを言っている。課長にできないミッションを、入って二日目のアルバイトにこなせとは、どこの無理ゲーだろうか。

 とにかく沢井さんが、私と先生のランチを歓迎している理由はよくわかった。
 ざっと取材依頼書に目を通す。テレビ局に科学雑誌、動画チャンネルからも依頼がある。何か気が重くなってきた。


 事務室のある本部棟から歩くと小高い丘が見えてきた。とっくに葉桜となった桜の木の下に、朝河君が立っていた。
「売店でおにぎり買ってきました」
 まぶしい笑顔を向けてくれる。

 見た目は、出会った時と何も変わらない。ボサボサっとしたくせ毛に大きな目。童顔で小柄。私とあまり背が変わらない。
 私も笑顔を返した。会いたかった。でも気まずい。渦巻く感情を、精一杯作った笑顔でぐるぐる巻きにして隠した。

 丘の下のベンチに並んで座る。初夏の日差しが気持ちいい。見渡すと、斜面に寝転がっている学生さんたちがいる。彼らを指して朝河君が笑った。
「角度がちょうどいいんだよね。僕も時々ああして休んでます」
「そ、そうね、そうですね。朝河……先生」
 私はバイト、彼は「先生」だ。タメ口なんて二度と聞いてはいけない。
「私、先生のこと高校生や大学生扱いして、すごい偉そうなこと言ってました」
 顔を見ることができない。

「一年前までは学生でしたから」
 彼が照れたような声をしている。
「先生、早く言ってくれればいいのに」
 ちょっと責めるような言い方になったかもしれない。先生は、私が彼を学生と勘違いしていたことを知っていたのに、指摘しなかったのだから。

素芦もとあしさんは、いつも弁当なの?」
 彼はその理由は答えず、私のタッパーを覗き込んだ。うわあ、スマホと同じぐらい、見られたくない。私は反射的に隠した。
「あまり見ないでください。キャラ弁とか作れないし、ひたすら節約してます」
 思わず私は顔を上げた。夕飯の残りを詰めている茶色い弁当なんて、見られたくない。
「素芦さんが大学に来てくれてよかった」
 その時初めて先生と目が合った。

「私、別の塾で働こうとしたけど中々決まらなくて、こんな立派な職場で働けるなんて、ありがたいです」
 塾の仕事よりつまらない、なんて思ってしまったが反省する。
 宇関の町を変えるぐらいの大学で働けるなんてすごいことだ。決して、目の前の笑顔につられて、仕事の意義を見出したわけではない。
「そうだね。設備は新しいし、首都と違ってうるさい人いなくて静かだから働きやすいな。スパコン速いし」
 朝河先生は、売店のおにぎりを頬張りながら、宇関キャンパスの説明を始めた。

 広報課で受けたレクチャーと重なるが、彼は「材料棟で作った新素材は、宇宙空間の放射線にも耐性があるんだ」「情報棟でね、大量の観測データからゴミデータを除くプログラムを開発して」など、具体的に解説してくれる。
 難しいが、その辺、覚えないとダメだよね。覚えること、いっぱいある。
「朝河……先生……宇宙以外のことも詳しいの……ですね」
 うっかりタメ口を聞かないようにしないと。

「すべて僕が参加するプロジェクトに必要なんです。優れた理論があっても、それを実現するための技術がないと、立証されませんから」
 そういって、ペットボトルのドリンクを飲み干す。ドリンクは果実入りのオレンジジュースだ。
 朝河君、自販機でも甘いドリンクに詳しかったなあと、最初の出会いを思い出した。その時は、そんなにすごい先生とは思わなかった。

「先生、のんびりして大丈夫ですか? 昨日は急いでたけど」
「本当は忙しいけど、たまには息抜きしないと持たないよ」
 そういって、先生はベンチから立ち上がって、芝生の丘に寝転がった。
 その無邪気な姿は、初めて会った時と同じ、高校生にしか見えない。
「先生の息抜きに役立てれば何よりです」
 何となく当初の気まずさが薄れてきた。彼と丁寧語で話すことに慣れてきた。

 と、彼がふいに上体を起こした。
「そのさ、あなたはどうです? 仕事大変じゃない?」
 私は、唐突に沢井さんから受けたミッションを思い出す。この先生に取材を受けさせなければならない。
「沢井課長も飯島さんも海東さんも、みなさん親切で丁寧に教えてくれます」
 嘘じゃない。ただ、私がそれに答えられないだけ。電話一つ、満足取れないなんて恥ずかしくて言えない。

 暖かい日差しの中、湿り気を帯びた風が抜けていく。
「広報の人たちって、僕に取材を押し付けてくるから、なるべく近寄らないようにしてるんですよ。だから広報の仕事はわからないし手伝えないなあ」
 手伝う? 手伝う気持ちはあるということ? それなら取材を引き受けてくれるのでは? と期待していいのかな。

「あ、あの……」
 さあ、どうやって切り出そう。
「どうしました? やっぱり慣れない仕事は大変でしょ?」
 大きな瞳で見つめられ、自分の顔が赤くなるのがわかる。
「ここのイントラ、ですか。すごいですね。先生方のスケジュールがわかるし」
「ああ、あれね。画面、カスタマイズできればいいんだけど。明らかに僕に関係ないお知らせ入ってくるし」

 先生は再び起こした上体を傾けて、芝生に寝そべる。私はベンチに座ったまま先生に顔を向ける。できれば隣で一緒にゴロっと……いや、ダメでしょう! 周りには学生さんが同じようにゴロゴロ過ごしている。仮に誰もいなくても、それはダメ。私はただのバイトだし。
「スケジュールを入れておかないと、いつのまにか会議とか委員会とか入ってくるんですよ」
 顔をくしゃっと崩して笑っている。
「じゃあ、先生、全部、予定を埋めておかないと」
 私もつられて笑ってしまう。

「そうですね、じゃ、一日中、素芦もとあしさんとご飯、とか?」

 ああ、そういう冗談キツイからやめて。心臓に悪すぎる。
「それって、私が先生とランチしているって、大学の皆さんに知らせるってことですよね」
「別におかしなことじゃないでしょう? 僕と素芦さんは、大学に来る前から、知り合ってたんだし」
 先生はまたムクっと上体を起こし、私に視線を注ぐ。この冗談への切り替えしが思いつかない。
 嫌がる取材を切り出したら、この空気を壊しそう。

「会議って、お昼休みにも勝手に入れられるんですか?」
「油断しているとね。僕らは昼休み、決まってないから……と、もう一時か」

 ランチは、あっという間に終わってしまう。
「今度は向こうのミネルバカフェでお昼しましょう。首都キャンパスのカフェよりキレイなんだ」
 一緒のお昼は気恥ずかしい。でもそう言ってくれるのがすごく嬉しい。
 彼は私がどれほど浮かれているか、知らない。無邪気な笑顔を見ると、勘違いしてしまう。彼も私と同じような気持ちだと。そんなはずないのに。彼女がいる人なのに。
 結局、私は、上司の依頼を切り出せなかった。


 芝生の丘から事務室のある本部棟までは、思った以上に距離がある。席に着いた時、一時を過ぎてしまった。
素芦もとあしさん、今、何時だかわかります?」
 飯島さんが腕時計を指した。
「すみません。今度から気をつけます」
 塾の仕事も午後からが多く、十二時から一時、きっちり昼休みを取ることは少ない。どうも、まだ慣れない。

 と、そこへ沢井さんが割り込んでくる。
「いいのよ。だって朝河先生とお話ししてたんでしょ? で、どう? 取材引き受けてくれそう?」
「あ、それが……」
 沢井さんが眉根を寄せた。
「あなたでも駄目だったの?」
「ちょっと時間がなくて話せなくて……」
「時間ない? わざわざ遅れて戻ったのに?」
 沢井さんの声色が変わった。トーンが落ち、抑揚が消えている。これは怒ってる。

「素芦さん、それじゃ、あなたを採用した意味がないのよ」

「え?」
 沢井さんがよくわからないことを言っている。
「朝河先生は二十二歳の准教授。西都科学技術大学でも特別な人なの。だから、私はどうしても先生に取材を受けさせたいのよ」

 必要性はわかるが、なぜ入って二日目のアルバイトに頼むかがわからない。
「私も飯島君もみんな失敗したわ」
「あの……嫌がってるなら無理させなくても……他に先生はたくさんいらっしゃるし……」
 新人バイトがそういうことを言うのは生意気かもしれないが、できればそんな難しい仕事はしたくない。

 が、沢井さんは力を込める。
「取材なんてただでPRできるチャンスなんだから、どんどん生かすべきなのに、朝河先生は、そのあたりわかってないのね。研究さえすればいいと思ってるんだもの」

 沢井さん、一応「先生」と呼んでるけど、態度は「先生」へのそれではない。少なくとも、社会人としてはまだ二年目の朝河君と比べれば、沢井さんはベテランだ。それを言うなら、私も七年間、社会人として経験していることになるが、電話も上手く取れない私では話にならないか。

 沢井さんの熱はとまらない。
「先生、素朴で可愛いキャラでしょ? うちみたいな地味な大学には、一般受けを狙える貴重な人なの。専門誌だけじゃなくてメジャーな雑誌や新聞、あとテレビにもまた出てもらいたいし、一般受けする本も書いてほしい。SNSで面白いこと発信してほしいわ。写真集もウケるかもね」

 美魔女の広報課長は、どこか遠くを見つめ、目をキラキラ輝かせている。見つめる先は、事務室の天井ではなく、どこか未来。朝河先生がメジャーデビューする時。
 アイドルを売り出すマネージャーみたいだ。そういえば、この人、広告代理店から転職したんだっけ? 写真集は謎すぎるけど。

素芦もとあしさん。あなた、朝河先生とお友だちでしょ? ランチに誘われるんだから。じゃ、がんばって説得してね!」
 肩をがっしり掴まれる。私は、力強くうなずいた。
「わかりました。やってみます」
 電話も満足に取れないんだから、どこかで挽回したい。
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