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6 主人公は、あっさりワナにはまる
(32)元々ギリシャの太陽神は、アポロンではなかったとか
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ギリシャ神話で太陽神というと、多くの人がアポロンを思い浮かべるだろう。造物主も同じだ。
が、元のギリシャ神話では、太陽神とはヘリオスを指した。アポロンは医学と芸術の神であり、古くからギリシャにいる神ではなく、小アジアで信仰されていた神との説がある。
アポロンは「光り輝く」と形容された光明神でもあった。
そういう事情もあってか、紀元前四世紀から太陽神ヘリオスと光明神アポロンは混合され、ローマ時代に完全に一体化し太陽神アポロンとなったらしい。
本編に入ろう。
ゼウスは、太陽神をヘリオスからアポロンに替えると宣言した。
当然、ヘリオスは納得がいかない。
しかし神々の王は、ギリシャの太陽神に犬でも追い払うように、手を振った。
「ああ、ヘリオスちゃんは、アポロンちゃんの御者をやってよ」
「え、僕、なんかやっちゃいました? ちゃんと毎日、規則正しく太陽が動くよう、調整がんばってるんですよ」
「それ、面白くないの! ヘリオスちゃんチョー真面目だから、つまんない! ときどき日食を起こして、人間をプチパニックにさせるぐらいだし」
「そんな~。ゼウス様、真面目に務めを果たしたのがいけないなんて、あんまりじゃないですか」
「アポロンちゃんは、機嫌悪いと日照りで干ばつ起こすし、不機嫌マックスだとスーパーフレア起こすじゃない? 僕、激しい男が好きだな。オリュンポスには、そういうドラマが必要! そ・れ・に」
神々の王は、アポロンの滑らかな頬をなぜる。
「見てよ、この超絶イケメン! 男は顔でしょ!」
ヘリオスは「はあ、ゼウス様がそこまで言うなら、仕方ないですね」と、小さくしぼみ、神々の宴会から退場した。
アポロンは嫌悪感をむき出しにして、ゼウスの手を振り払う。
最高神は新たな太陽神に素っ気なくされてもめげず、今度は女神にすり寄った。
「し・か・も! アフロディテちゃんもセットよ! 男どもを狂わせるこのフェロモン、やばすぎ!」
ゼウスの手は女神の肩から妖しい方角へ伸びてくる。アフロディテは「いやね、ゼウスったら。それセクハラよ」と、するっと逃げた。
「アフロディテちゃん、誘うの上手いね。今までどれほど男、漁ってきたの?」
「ふふ、ひどいわ。あたし、男ならなんでも良いわけじゃないのよ」
逃げるアフロディテをゼウスが追いかける。アポロンが「人の始まりから世界に君臨する女神に何をする!」と割って入る。
その時。オリュンポスの宴会場に、割れんばかりの金切り声が響き渡った。
「いい加減にしろ! この変態親父!」
黄金の王笏を手にした神の女王ヘラが、目を吊り上げた。
「あんた、よくあたしの目の前で、他の女に手を出せるよね!」
女王はゼウスの首に王笏を突きつける。
「ヘラ、ごめーん。僕が悪かったよ。機嫌直して。後でいっぱい可愛がってあげるからさ」
ゼウスがいくら宥めても、女王の怒りは収まらない。ヘラは笏をアフロディテに突きつけた。
「この女はね! 神だけでは飽き足らず、人間の男とも交わる汚い女なんだよ!」
美の女神への侮辱にアポロンはいきり立つ。しかしアフロディテが「あたしは平気よ」と制した。
萎れていた女神アテネも立ち上がった。
「ヘラ様は父上に操を立て、妻として女王として比類ない方! なぜ父上はいつもヘラ様を蔑ろにして、他の女神や人間の女に子を産ませるのです!」
補足するが、女神アテネはヘラの娘ではない。彼女に母親はいない。ゼウスがひとりで生んだ娘である。
戦いの女神の援護を受けて、ヘラの口撃は勢いを増す。
「太陽神をヘリオスからアポロンに替えようなんて、やめてくれ! ヘリオスはちゃんと働いてるじゃないか! なんであんたは、トロイアなんて辺境の神に拘るんだよ!」
「父上! オリュンポスには、ヘラ様と私アテナがおります! 傲慢なアポロンも淫らなアフロディテも、無用の長物どころか禍になりかねません!」
他の神々も、新しい神の参入に異議を唱える。
ざわめきが最高点に達したときだった。
「お前ら、うるせーんだよ!!」
妻のご機嫌を取っていた雷神は、叫んだ。
ざわめきは一瞬で静寂に転じる。
「お前が、僕の女や子供たちにどれほど嫌がらせをしようが、見逃してやったよ。僕の子供はみんな強いから、お前の嫌がらせには負けやしない。好きにしな」
と、ゼウスは右腕を掲げた。指先に小さな光が灯る。光の玉は巨大化し稲光がバチバチと四方八方に広がる。
「でも、オリュンポス経営には、口出しするんじゃねーよ! お前なにさま? 神の女王? 僕がいなければ、薄汚いただのババアじゃん!」
ヘラとアテナはガクガクと震え、身を寄せ合う。
「僕、アテナを贔屓しすぎたね。いくら僕の娘だからといって、図に乗りすぎ! お仕置きだよ」
「あんた、許して!」「父上! ごめんなさい!」
二柱の女神は固く抱き合い、雷神の攻撃に身構える。
周囲の神も「いくらなんでもそれは」と囁くが、面と向かって最高神に楯突くものはいない。
ゼウスは、稲妻の矢を放とうと腕を振りかざす。
「やめるんだ!」
トロイアの守護神は、ゼウスの右腕を取って後ろに捻った。
が、元のギリシャ神話では、太陽神とはヘリオスを指した。アポロンは医学と芸術の神であり、古くからギリシャにいる神ではなく、小アジアで信仰されていた神との説がある。
アポロンは「光り輝く」と形容された光明神でもあった。
そういう事情もあってか、紀元前四世紀から太陽神ヘリオスと光明神アポロンは混合され、ローマ時代に完全に一体化し太陽神アポロンとなったらしい。
本編に入ろう。
ゼウスは、太陽神をヘリオスからアポロンに替えると宣言した。
当然、ヘリオスは納得がいかない。
しかし神々の王は、ギリシャの太陽神に犬でも追い払うように、手を振った。
「ああ、ヘリオスちゃんは、アポロンちゃんの御者をやってよ」
「え、僕、なんかやっちゃいました? ちゃんと毎日、規則正しく太陽が動くよう、調整がんばってるんですよ」
「それ、面白くないの! ヘリオスちゃんチョー真面目だから、つまんない! ときどき日食を起こして、人間をプチパニックにさせるぐらいだし」
「そんな~。ゼウス様、真面目に務めを果たしたのがいけないなんて、あんまりじゃないですか」
「アポロンちゃんは、機嫌悪いと日照りで干ばつ起こすし、不機嫌マックスだとスーパーフレア起こすじゃない? 僕、激しい男が好きだな。オリュンポスには、そういうドラマが必要! そ・れ・に」
神々の王は、アポロンの滑らかな頬をなぜる。
「見てよ、この超絶イケメン! 男は顔でしょ!」
ヘリオスは「はあ、ゼウス様がそこまで言うなら、仕方ないですね」と、小さくしぼみ、神々の宴会から退場した。
アポロンは嫌悪感をむき出しにして、ゼウスの手を振り払う。
最高神は新たな太陽神に素っ気なくされてもめげず、今度は女神にすり寄った。
「し・か・も! アフロディテちゃんもセットよ! 男どもを狂わせるこのフェロモン、やばすぎ!」
ゼウスの手は女神の肩から妖しい方角へ伸びてくる。アフロディテは「いやね、ゼウスったら。それセクハラよ」と、するっと逃げた。
「アフロディテちゃん、誘うの上手いね。今までどれほど男、漁ってきたの?」
「ふふ、ひどいわ。あたし、男ならなんでも良いわけじゃないのよ」
逃げるアフロディテをゼウスが追いかける。アポロンが「人の始まりから世界に君臨する女神に何をする!」と割って入る。
その時。オリュンポスの宴会場に、割れんばかりの金切り声が響き渡った。
「いい加減にしろ! この変態親父!」
黄金の王笏を手にした神の女王ヘラが、目を吊り上げた。
「あんた、よくあたしの目の前で、他の女に手を出せるよね!」
女王はゼウスの首に王笏を突きつける。
「ヘラ、ごめーん。僕が悪かったよ。機嫌直して。後でいっぱい可愛がってあげるからさ」
ゼウスがいくら宥めても、女王の怒りは収まらない。ヘラは笏をアフロディテに突きつけた。
「この女はね! 神だけでは飽き足らず、人間の男とも交わる汚い女なんだよ!」
美の女神への侮辱にアポロンはいきり立つ。しかしアフロディテが「あたしは平気よ」と制した。
萎れていた女神アテネも立ち上がった。
「ヘラ様は父上に操を立て、妻として女王として比類ない方! なぜ父上はいつもヘラ様を蔑ろにして、他の女神や人間の女に子を産ませるのです!」
補足するが、女神アテネはヘラの娘ではない。彼女に母親はいない。ゼウスがひとりで生んだ娘である。
戦いの女神の援護を受けて、ヘラの口撃は勢いを増す。
「太陽神をヘリオスからアポロンに替えようなんて、やめてくれ! ヘリオスはちゃんと働いてるじゃないか! なんであんたは、トロイアなんて辺境の神に拘るんだよ!」
「父上! オリュンポスには、ヘラ様と私アテナがおります! 傲慢なアポロンも淫らなアフロディテも、無用の長物どころか禍になりかねません!」
他の神々も、新しい神の参入に異議を唱える。
ざわめきが最高点に達したときだった。
「お前ら、うるせーんだよ!!」
妻のご機嫌を取っていた雷神は、叫んだ。
ざわめきは一瞬で静寂に転じる。
「お前が、僕の女や子供たちにどれほど嫌がらせをしようが、見逃してやったよ。僕の子供はみんな強いから、お前の嫌がらせには負けやしない。好きにしな」
と、ゼウスは右腕を掲げた。指先に小さな光が灯る。光の玉は巨大化し稲光がバチバチと四方八方に広がる。
「でも、オリュンポス経営には、口出しするんじゃねーよ! お前なにさま? 神の女王? 僕がいなければ、薄汚いただのババアじゃん!」
ヘラとアテナはガクガクと震え、身を寄せ合う。
「僕、アテナを贔屓しすぎたね。いくら僕の娘だからといって、図に乗りすぎ! お仕置きだよ」
「あんた、許して!」「父上! ごめんなさい!」
二柱の女神は固く抱き合い、雷神の攻撃に身構える。
周囲の神も「いくらなんでもそれは」と囁くが、面と向かって最高神に楯突くものはいない。
ゼウスは、稲妻の矢を放とうと腕を振りかざす。
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