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6 主人公は、あっさりワナにはまる
(31)稲光をまとう神々の王
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トロイアから、海を渡ってまっすぐ西に進むと、オリュンポス山に行きつく。
ギリシャで最も高い標高を誇るかの山は、白い冠を輝かせている。
黄金に煌めく四頭立ての馬車が、神の住む山に向かって、天を駆けぬけていた。
「意外ね。アポロンがあっさりゼウスの元に降るなんて」
美の女神アフロディテは、アポロンの繰る馬車で、黒髪をたなびかせている。
「降るとは言っていない。ゼウスに聞きたいことがある」
「喧嘩は止めてね。あなたとゼウスが戦ったら、地上は炎で焼き尽くされるわ」
「案ずるな。私は、あの横暴な神とは違う」
輝ける太陽の神は、隣に座る美の女神に笑いかけ、黄金の手綱を引いた。
神の車がオリュンポスに辿り着いた。山頂は果てのない真っ白な雲海に覆われている。神の気配も人の気配も感じられない。
アポロンは白い空間に馬車を止め、アフロディテを降ろす。
天から青年が現れ、アポロンの前に降り立った。
「アポロン様ですね。ようこそオリュンポスにお越しくださいました。ゼウス様がお待ちしています」
「伝令のヘルメスか」
アポロンが神馬に待てと命じている間に、真白の空間はたちまち虹色に彩られる。
巨大なクリスタルの柱が何本も伸びた。柱は色を赤や青へと目まぐるしく変化させ、眩しいぐらいに発光する。床にクリスタルのタイルが何百枚も出現し、柱と同じように赤や青に輝く。
一抱えもある発光球が、いくつもアポロンたちの頭上を浮遊し、ゆっくりと移動する。
あまたのクリスタルの寝椅子が出現し、雲が敷き詰められた。寝椅子の傍に小さな丸テーブルが添えられた。
「落ち着かない。いい趣味ではないな」
「そうね。下品」
神の給仕たちが何人も上から現れ、壺や皿を並べ始めた。
大きな壺を抱えた少年が、立っている。少年の黒々と光る巻き毛と青い瞳は輝き、美しい給仕たちの中にいても、目が吸い寄せられる。
アポロンは、美しい少年を見とめるや否や、急ぎ駆け寄った。
「お前はガニュメデスではないか!」
少年は、美しさのあまりゼウスがさらった、トロイアの王子だった。
「なんと哀れなことか。お前を慈しんでくれた父、トロス王は、とうの昔に冥界に旅立った。今の王は、トロスの曾孫プリアモスだ。人にとっては、どれほどの時が経ったことだろう」
「アポロン様ですね。ゼウス様から丁重にもてなすよう、言いつけられました」
ガニュメデスは、曇りのない笑顔で神に応えた。
「お前は寂しくないのか? 父母が、トロイアが、恋しくないのか?」
「トロイア? ごめんなさい。僕、覚えるの苦手なんです……そうだ、ゼウス様が気に掛けている東の国でしたっけ?」
かつてトロイアの王子だった美少年は、申し訳なさそうな顔を見せる。
「ガニュメデス……まさか、生まれ育った故郷を、お前に愛を注いでくれた父母を、忘れてしまったのか?」
給仕の少年は「本当にごめんなさい。僕、頭が悪くて……」と悲しそうに首を傾けた。
アポロンはガニュメデスを抱きしめる。
「お前は賢い子だったのに……これもゼウスの仕業に違いない」
天に大きな光り輝く球体が、いくつも現れた。発光球は宴席の場にゆったり降下し、人の形に変形する。いや、人ではなかった。オリュンポスに住む神々が姿を現し始めた。
神々の輪の中ほどに、ひと際大きな球体が眩いばかりの光を発する。
光は、輝く銀の髪と髭を持つ、壮年の逞しい男に変わった。
アポロンは、稲光をまとうその男に向き直った。
「ゼウスだな!」
太陽神は少年を抱きしめたまま、輪の中心の神を睨みつける。
雷神は、顎髭をなぜ、おもむろに口を開いた。
「やった~!!! ついにアポロンちゃんゲ~ット!! てへへ、アフロディテちゃんも一緒なんて、僕、すんごいラッキー!」
豊かな顎髭の奥から、女のように甲高い声が響く。アポロンは思わず耳を塞いだ。
神々の王は、小躍りしてアポロンに駆け寄り、巻き毛に手を伸ばす。アポロンは当然のようにゼウスの手を撥ね付けた。
「お前、この可愛らしいガニュメデスに何をした!?」
「やだな~アポロンちゃん、僕、何もしてないよ。ガニメデちゃんがおうちに帰りたいってしくしく泣いてかわいそうだったから、ムネモシュネちゃんに何とかしてもらっただけだよーん」
「ムネモシュネ……記憶の神ではないか。ガニュメデスからトロイアへの想いを全て消し去ったのか! なんと惨いことを……」
アポロンは、少年をいっそう強く抱き締める。
「アポロンちゃん、ガニメデちゃんを狙ってたのね。でも僕を恨むのは違うよ。愛は自由だし」
「お前のは愛ではない! 略奪だ!」
「へえ~、アポロンちゃん、人のこと言えるぅ?」
ゼウスに図星を刺されたアポロンは、唇を噛み締めガニュメデスの身を離した。アポロンもゼウスほどではないが、決して純愛の神ではない。多くの女たちになかなかエグい仕打ちを施している。
美少年はゼウスの元に駆け寄り頭をペコベコ下げる。神々の王は「いい子いい子」と頭を撫でてから、テーブルの盃を取った。ガニュメデスは壺からネクタルを盃に注いだ。
「ちょっとアポロン、ゼウスと美少年を争うために来たの?」
美の女神が太陽神の腕を取る。
ゼウスの背後から、三叉の長い矛を握りしめた黒髪の男神が現れ、つかつかとアポロンに近づいた。
「アポロン、まあガニュメデスは惜しいだろうが、みんな海に流せ。仲良くやろうぜ」
がははと笑った海神を、アポロンはきっと睨み付ける。
「ポセイドン。誰がお前のような裏切者と友情を育めよう!」
睨み合う二人に神の王が割って入った。
「喧嘩しないの。それよりアポロンちゃーん、せっかく来てくれたんだから、一曲聴かせてよ~」
「残虐横暴な神ゼウス! なぜお前ごときに、私が楽を奏でねばならぬ!」
ゼウスはアポロンの腕をつねった。
「へえ~、音楽の神だとえっらそ~にしてたの、嘘なんだあ。ホントーは下手くそだから、聴かせられないんでしょ?」
「私の技を侮辱するな!」
アポロンは腕を掲げた。銀色に輝く琴が浮かび上がる。
「ちょっとアポロン! 挑発されてるのよ、わからない?」
「わかっている! それでも怒りは収まらないのだ!」
神の指が、オリュンポスに音を響かせる。
途端、虹色の広間は輝きを失い、クリスタルの柱も床も、鈍い灰色に染まった。
地の底を這うような重低音が、神々の耳を震わせる。
アポロンは歌う。ギリシャの神々が如何にして、他の神々を征服したかを。征服の証として、地上の女たちは連れ去られ奴隷にされ、抵抗する男たちは無惨に槍の贄となる。
広間は血の赤で染められ、阿鼻叫喚がオリュンポスの柱を震わせる。
神々は耳を覆い「止めてくれ!」と訴える。
アポロンはますます激しく琴をかき鳴らす。オリュンポスに人の死臭が立ち込めてきた。
「父上の偉業を汚すな!」
女の叫びと共に、アポロンの右腕に槍が突き刺さった。神の青い鮮血が辺りに飛び散り、玉となって四方八方に浮遊する。
「いやああああ!」
叫んだのは、奏者ではなく美の女神だった。
銀の琴は瞬く間に消滅し、アポロンは右腕を押さえてうずくまる。
アフロディテも合わせてしゃがみこみ「ひどいわ!」と、攻撃者を睨み付ける。
黄金に輝く鎧兜に身を包んだ女神が、槍を構えていた。
「くっ! アテナか。さすが戦いの女神だけあるな」
アポロンは額に汗を滲ませる。左手で傷を押さえつけるも、指の隙間から血が湧き出す。男は目を閉じて息を吐いた。
ほどなくオリュンポスに散らばった青い血が集まりだし、アポロンの目の前に血の塊が球体となって浮かぶ。
青い血の球はふっと消え、出血が止まった。
アポロンは立ち上がりゼウスに微笑み、アテナの槍が刺さったはずの右腕を見せつけた。
「邪魔が入ったため、曲が途中で終わってしまった」
輝く肌には傷跡どころか、染みひとつ見当たらない。
戦いの女神アテネは、「信じられぬ! 私の攻撃を受けて瞬時に回復するとは!」と、目を剥いた。
「そりゃそーよ! アポロンちゃんは、医術と病の神だもん」
ゼウスがぴょんぴょん飛び跳ね、宴の間は虹色の輝きを取り戻した。
神の王は、娘の女神に向き直り、右腕を大きく掲げた。
「アテナ、お前、ちょっと悪戯が過ぎるなあ」
「お許しください! 父上を蔑ろにする傲慢な神に、我慢できなかったのです」
戦いの女神は身を震わせ跪く。途端、ゼウスは右手を降ろして、アテナの兜をなでた。
「可愛いねえ、お前はいい子だねえ」
娘の神はなおも震えていたが、ゼウスは神々に呼びかけた。
「みんな! 大事なこと言うから聞いてね!」
虹色の柱と床は色を失った。神々の誰もが最高神の言葉を待つ。
「アポロンちゃんには、オリュンポスの太陽神やってもらうからね」
静寂は破られる。神々は顔を見合わせ騒めいた。広間の柱は、紫色に輝き出した。
アポロンが太陽神? 最高神の決定に、多くの神々は納得できず戸惑いを隠さない。
騒めきの中から、一柱の神がおずおずと切り出した。
「あのー太陽神なら、僕、ヘリオスがいるんですけど、どーなっちゃうんですか?」
ギリシャで最も高い標高を誇るかの山は、白い冠を輝かせている。
黄金に煌めく四頭立ての馬車が、神の住む山に向かって、天を駆けぬけていた。
「意外ね。アポロンがあっさりゼウスの元に降るなんて」
美の女神アフロディテは、アポロンの繰る馬車で、黒髪をたなびかせている。
「降るとは言っていない。ゼウスに聞きたいことがある」
「喧嘩は止めてね。あなたとゼウスが戦ったら、地上は炎で焼き尽くされるわ」
「案ずるな。私は、あの横暴な神とは違う」
輝ける太陽の神は、隣に座る美の女神に笑いかけ、黄金の手綱を引いた。
神の車がオリュンポスに辿り着いた。山頂は果てのない真っ白な雲海に覆われている。神の気配も人の気配も感じられない。
アポロンは白い空間に馬車を止め、アフロディテを降ろす。
天から青年が現れ、アポロンの前に降り立った。
「アポロン様ですね。ようこそオリュンポスにお越しくださいました。ゼウス様がお待ちしています」
「伝令のヘルメスか」
アポロンが神馬に待てと命じている間に、真白の空間はたちまち虹色に彩られる。
巨大なクリスタルの柱が何本も伸びた。柱は色を赤や青へと目まぐるしく変化させ、眩しいぐらいに発光する。床にクリスタルのタイルが何百枚も出現し、柱と同じように赤や青に輝く。
一抱えもある発光球が、いくつもアポロンたちの頭上を浮遊し、ゆっくりと移動する。
あまたのクリスタルの寝椅子が出現し、雲が敷き詰められた。寝椅子の傍に小さな丸テーブルが添えられた。
「落ち着かない。いい趣味ではないな」
「そうね。下品」
神の給仕たちが何人も上から現れ、壺や皿を並べ始めた。
大きな壺を抱えた少年が、立っている。少年の黒々と光る巻き毛と青い瞳は輝き、美しい給仕たちの中にいても、目が吸い寄せられる。
アポロンは、美しい少年を見とめるや否や、急ぎ駆け寄った。
「お前はガニュメデスではないか!」
少年は、美しさのあまりゼウスがさらった、トロイアの王子だった。
「なんと哀れなことか。お前を慈しんでくれた父、トロス王は、とうの昔に冥界に旅立った。今の王は、トロスの曾孫プリアモスだ。人にとっては、どれほどの時が経ったことだろう」
「アポロン様ですね。ゼウス様から丁重にもてなすよう、言いつけられました」
ガニュメデスは、曇りのない笑顔で神に応えた。
「お前は寂しくないのか? 父母が、トロイアが、恋しくないのか?」
「トロイア? ごめんなさい。僕、覚えるの苦手なんです……そうだ、ゼウス様が気に掛けている東の国でしたっけ?」
かつてトロイアの王子だった美少年は、申し訳なさそうな顔を見せる。
「ガニュメデス……まさか、生まれ育った故郷を、お前に愛を注いでくれた父母を、忘れてしまったのか?」
給仕の少年は「本当にごめんなさい。僕、頭が悪くて……」と悲しそうに首を傾けた。
アポロンはガニュメデスを抱きしめる。
「お前は賢い子だったのに……これもゼウスの仕業に違いない」
天に大きな光り輝く球体が、いくつも現れた。発光球は宴席の場にゆったり降下し、人の形に変形する。いや、人ではなかった。オリュンポスに住む神々が姿を現し始めた。
神々の輪の中ほどに、ひと際大きな球体が眩いばかりの光を発する。
光は、輝く銀の髪と髭を持つ、壮年の逞しい男に変わった。
アポロンは、稲光をまとうその男に向き直った。
「ゼウスだな!」
太陽神は少年を抱きしめたまま、輪の中心の神を睨みつける。
雷神は、顎髭をなぜ、おもむろに口を開いた。
「やった~!!! ついにアポロンちゃんゲ~ット!! てへへ、アフロディテちゃんも一緒なんて、僕、すんごいラッキー!」
豊かな顎髭の奥から、女のように甲高い声が響く。アポロンは思わず耳を塞いだ。
神々の王は、小躍りしてアポロンに駆け寄り、巻き毛に手を伸ばす。アポロンは当然のようにゼウスの手を撥ね付けた。
「お前、この可愛らしいガニュメデスに何をした!?」
「やだな~アポロンちゃん、僕、何もしてないよ。ガニメデちゃんがおうちに帰りたいってしくしく泣いてかわいそうだったから、ムネモシュネちゃんに何とかしてもらっただけだよーん」
「ムネモシュネ……記憶の神ではないか。ガニュメデスからトロイアへの想いを全て消し去ったのか! なんと惨いことを……」
アポロンは、少年をいっそう強く抱き締める。
「アポロンちゃん、ガニメデちゃんを狙ってたのね。でも僕を恨むのは違うよ。愛は自由だし」
「お前のは愛ではない! 略奪だ!」
「へえ~、アポロンちゃん、人のこと言えるぅ?」
ゼウスに図星を刺されたアポロンは、唇を噛み締めガニュメデスの身を離した。アポロンもゼウスほどではないが、決して純愛の神ではない。多くの女たちになかなかエグい仕打ちを施している。
美少年はゼウスの元に駆け寄り頭をペコベコ下げる。神々の王は「いい子いい子」と頭を撫でてから、テーブルの盃を取った。ガニュメデスは壺からネクタルを盃に注いだ。
「ちょっとアポロン、ゼウスと美少年を争うために来たの?」
美の女神が太陽神の腕を取る。
ゼウスの背後から、三叉の長い矛を握りしめた黒髪の男神が現れ、つかつかとアポロンに近づいた。
「アポロン、まあガニュメデスは惜しいだろうが、みんな海に流せ。仲良くやろうぜ」
がははと笑った海神を、アポロンはきっと睨み付ける。
「ポセイドン。誰がお前のような裏切者と友情を育めよう!」
睨み合う二人に神の王が割って入った。
「喧嘩しないの。それよりアポロンちゃーん、せっかく来てくれたんだから、一曲聴かせてよ~」
「残虐横暴な神ゼウス! なぜお前ごときに、私が楽を奏でねばならぬ!」
ゼウスはアポロンの腕をつねった。
「へえ~、音楽の神だとえっらそ~にしてたの、嘘なんだあ。ホントーは下手くそだから、聴かせられないんでしょ?」
「私の技を侮辱するな!」
アポロンは腕を掲げた。銀色に輝く琴が浮かび上がる。
「ちょっとアポロン! 挑発されてるのよ、わからない?」
「わかっている! それでも怒りは収まらないのだ!」
神の指が、オリュンポスに音を響かせる。
途端、虹色の広間は輝きを失い、クリスタルの柱も床も、鈍い灰色に染まった。
地の底を這うような重低音が、神々の耳を震わせる。
アポロンは歌う。ギリシャの神々が如何にして、他の神々を征服したかを。征服の証として、地上の女たちは連れ去られ奴隷にされ、抵抗する男たちは無惨に槍の贄となる。
広間は血の赤で染められ、阿鼻叫喚がオリュンポスの柱を震わせる。
神々は耳を覆い「止めてくれ!」と訴える。
アポロンはますます激しく琴をかき鳴らす。オリュンポスに人の死臭が立ち込めてきた。
「父上の偉業を汚すな!」
女の叫びと共に、アポロンの右腕に槍が突き刺さった。神の青い鮮血が辺りに飛び散り、玉となって四方八方に浮遊する。
「いやああああ!」
叫んだのは、奏者ではなく美の女神だった。
銀の琴は瞬く間に消滅し、アポロンは右腕を押さえてうずくまる。
アフロディテも合わせてしゃがみこみ「ひどいわ!」と、攻撃者を睨み付ける。
黄金に輝く鎧兜に身を包んだ女神が、槍を構えていた。
「くっ! アテナか。さすが戦いの女神だけあるな」
アポロンは額に汗を滲ませる。左手で傷を押さえつけるも、指の隙間から血が湧き出す。男は目を閉じて息を吐いた。
ほどなくオリュンポスに散らばった青い血が集まりだし、アポロンの目の前に血の塊が球体となって浮かぶ。
青い血の球はふっと消え、出血が止まった。
アポロンは立ち上がりゼウスに微笑み、アテナの槍が刺さったはずの右腕を見せつけた。
「邪魔が入ったため、曲が途中で終わってしまった」
輝く肌には傷跡どころか、染みひとつ見当たらない。
戦いの女神アテネは、「信じられぬ! 私の攻撃を受けて瞬時に回復するとは!」と、目を剥いた。
「そりゃそーよ! アポロンちゃんは、医術と病の神だもん」
ゼウスがぴょんぴょん飛び跳ね、宴の間は虹色の輝きを取り戻した。
神の王は、娘の女神に向き直り、右腕を大きく掲げた。
「アテナ、お前、ちょっと悪戯が過ぎるなあ」
「お許しください! 父上を蔑ろにする傲慢な神に、我慢できなかったのです」
戦いの女神は身を震わせ跪く。途端、ゼウスは右手を降ろして、アテナの兜をなでた。
「可愛いねえ、お前はいい子だねえ」
娘の神はなおも震えていたが、ゼウスは神々に呼びかけた。
「みんな! 大事なこと言うから聞いてね!」
虹色の柱と床は色を失った。神々の誰もが最高神の言葉を待つ。
「アポロンちゃんには、オリュンポスの太陽神やってもらうからね」
静寂は破られる。神々は顔を見合わせ騒めいた。広間の柱は、紫色に輝き出した。
アポロンが太陽神? 最高神の決定に、多くの神々は納得できず戸惑いを隠さない。
騒めきの中から、一柱の神がおずおずと切り出した。
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