ギリシャ神話ファンタジーを書いてます ~パリスの大冒険~

さんかく ひかる

文字の大きさ
上 下
23 / 101
4 古代ギリシャで謎といったらスフィンクス!

(9)しつこいスフィンクス

しおりを挟む
 スフィンクスの叫びで、人々は顔を見合わせた。

「そうだ。ヘクトルが兄さんって聞いて嬉しくなって忘れてたけど、スフィンクスさんから謎を出されてたんだ」

「おいパリス。そう決まったわけじゃないだろ。この旅人が勘違いしているだけかもしれない」

「いや、そう言われてみれば、二人ともよく似ているぞ」

 また除け者にされたスフィンクスが、大声を出した。

「こらあ! もう一度問題を出すぞ。いいな? アゴラに5組の家族が集まってきた。家族構成はバラバラじゃ。赤子がいる者もいれば……」

「そうだ。えーと、5組の家族かあ」

 謎解きモードに引き戻されたパリスは、地面に向き直った。

「ストーップ! 親父!」

 怪物の息子らしい旅人が割り込んだ。

「パリスさんよ。親父のトラップにだまされるな。家族が5組とかはどーでもいい。重要なのは後半部分だぜ」


 赤子は4本足、大人は2本足、老人は3本足じゃ。

 アゴラには全部で15人。
 人の足の数は全部で40本。
 足の中には、杖が4本含まれておる。
 赤子と大人と老人は、それぞれ何人じゃ?


 懸命な読者の方は前話でとっくに答えを出しているだろうから、飛ばしていただいて構わない。


「ああ、なるほど! で、でも……足の数と人数はわかっても……」

「杖が4本ってことは、老人の人数は決定だよな?」

「そうか! 杖の数と老人の数は一緒……じゃあ老人は4人で決定! あとは赤ちゃんと大人が11人」

「そうだ。足の数も絞られるよな?」

「うん! つまりこういうことだね」

 パリスは地面に木の枝で記した。

  大人と赤子の足の数 
 = 40本 - 老人一人の足3本 × 老人の人数4人 
 = 28本


 相変わらず、ヘクトルとナウシカは、呆然としている。

「そうだ。お前さん、察しがいいじゃねえか」

「えーと、赤ちゃんは10人以下……いや足の数が28本に絞られたから……28÷4=7人以下だね。うーんと……」

「こういうことだろ?」

 中年男は、地面に書き加えた。

  赤ん坊の数 + 大人の数 = 11
  4本 × 赤ん坊の数 + 2本 × 大人の数 = 28

「そうか! 待って、この続きは僕に任せて」

 パリスは、生き生きと木の枝を動かす。

  4本 × 赤ん坊の数 + 2本 ×(11-赤ん坊の数)= 28
  だから 2本 × 赤ん坊の数 =6本

「できたよ! 赤ちゃんは3人。大人は8人。お年寄りは4人だ!」


 赤子は3人、大人は8人、老人は4人──
 パリスの答えにスフィンクスは大きく頷く。正解のようだ。
 怪物は中年男に向き直った。

「息子よ。お主、少しはできるようじゃの?」

「親父、言ってただろ? こんなの簡単な一次方程式だって」

 謎の男も笑った。

「ふはははは。まだまだこれも導入問題じゃ。さて、次は神殿の謎じゃ」

 さきほどから全く活躍していないリーダーが前に進む。

「おい! パリスは謎を解いたじゃないか! いい加減に道を通せ」

「そうだとも、卑怯ではないか! お前は誇り高い守護者ではなかったのか?」

 計算はいまひとつだが、攻撃力の高いメンバー二人が剣を構えて、怪物に食って掛かる。
 が、スフィンクスの前に、中年男が立ちはだかった。

「わるい! どうか、しばらく親父のわがままにつきあってくれねーか?」

「そこを退くのだ、旅人よ。我らの旅に、怪物とたわむれる暇はない」

 剣を構えたヘクトルは、王子モードに変身して男に迫る。

「ヘクトルの言うとおりだ! 私たちは三つも謎に付き合った」

 ナウシカは通常モードで、正義を訴える。
 が、この緊張感を田舎の狩人が破った。

「おじさん、わかった。僕、なんか楽しくなってきた。もう少し、スフィンクスさんに付き合うよ」

 中年男は、顔をほころばせた。

「へー、パリスさん、あんた、いい人だ。見直したよ。女に惑わされて戦争を引き起こしたロクでもないお坊ちゃんって思ってたけどさ」

 場の空気が凍り付いた。


 ──パリスが、女に惑わされ戦争を起こす?

 謎の男の発言に、王子と王女は眦をつりあげた。

「ふざけんなよ!」「愚かなこと言うな!」

 侮辱された当人は、青ざめて硬直する。
「パリスさん。わりいわりい。あんたは、俺たちが知ってるパリスとは別人だ」

 中年男は慌ててフォローに走った。
 田舎から出てきた狩人、そしてヒポクラテスから医術を学んだ見習い医師は、青ざめた顔をあげて、怪物に向き直った。

「スフィンクスさん、次の謎を!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...