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4 古代ギリシャで謎といったらスフィンクス!

(4)ようやく本編開始

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 ここは、ローマ建国紀元……ではない。ローマ建国よりずっと前。
 いや、そのような時間軸では語れない別の世界。

 なぜか?
 今まで登場した人物を含めて列挙しよう。名前だけ登場の人物もいる。

・パリス
・ヘルミオネ
・ヒポクラテス
・ヘクトル
・ナウシカ

 古代ギリシャやギリシャ神話好きなら、ピンときただろう。
 この中で、仲間外れがいる。それは……ヒポクラテスだ。
残りの四人とヒポクラテスでは、そもそもジャンルが違う。四人はギリシャ神話世界の住人で、ヒポクラテスは古代ギリシャに実在した医者だ。

 神話世界の住人は、全員トロイア戦争やその後に登場する。トロイア戦争は実際に、紀元前1250年頃にあったという説が有力だ。
 一方、パリスの師匠であるヒポクラテスは、紀元前460年頃に生まれ、紀元前370年頃に亡くなったとされている。
 ざっくりいうと、神話時代の四人とは八百年以上、開きがある。我々でいうところの鎌倉時代のようなものだ。

 なぜこのような事態になったのか? それは、作者が先をまったく考えておらず、単に聞いたことがあるギリシャな名前を付けただけ……だとしても、ここまで話が進んでしまうと、今さら変えられない。
 聖徳太子と紫式部と福沢諭吉が同時代に生きる黄金の国「ザ・ジパング」みたいなものだと思っていただければよい。

 ちなみに、どうしてこの三人を例に挙げたか、三十代以下の人にはわからないだろう。
 が、年寄りにとって、聖徳太子は一万円札の人なのだ。
 紫式部は……二千円札になっている。私は長い生涯で三回ほどお目にかかった。そういうものがあったのだ。いや、今でも日本銀行のサイトには「現在発行されている銀行券」となっている。
 日本銀行のサイトには、明治時代のお札の見本が載っていて面白い。大黒様、武内宿禰が一円札のメンバーだった。武内宿禰たけうちのすくね(たけしうちのすくね・たけのうちのすくね、とも読む)は、今では知っているのは古代日本好きに限られるだろうが、明治時代には超メジャーだったのだろう。年寄りには五百円札も懐かしい。
 2024年には、これら日本銀行券のメンバーが一新される。


 失礼、日本銀行券の変遷が懐かしくも面白くもあり脱線した。
 ということで、ローマ建国紀元のアレクサンドリアとは別のどこかへ、物語の舞台は移る。


 要塞の町ラリサに到着したパリス・ヘクトル・ナウシカの三人。
 ここでこのパーティーの戦力を見てみよう。


 パリス
 ・攻撃力 まあまあ
 ・武器  弓  遠距離タイプ
 ・防御力 やや低め
 ・素早さ 高い
 ・スキル 狩りで食料調達 医術で回復 地形属性は森
 ・魅力  めちゃくちゃ高い 特に女子に威力を発揮する
 ・知力  まあまあ


 ヘクトル
 ・攻撃力 めちゃくちゃ高い
 ・武器  両手剣  近距離タイプ
 ・防御力 めちゃくちゃ高い
 ・素早さ 微妙
 ・スキル 大国の跡取り王子なので、カリスマ性あり
 ・魅力  なかなか ただし妻子一筋なので女子にはつれない
 ・知力  そこそこ


 ナウシカ
 ・攻撃力 結構高い
 ・武器  片手剣  近距離タイプ
 ・防御力 それなり
 ・素早さ そこそこ
 ・スキル 虫が得意 動物と会話ができる
 ・魅力  女子力やや弱い
 ・知力  微妙


 ラリサの宿の一室で荷をほどき、三人は床に座り込んだ。
 ヘクトルは二人の顔を見回し唸る。

「うーん、やっぱり俺たちの弱点は『知力』だな」

「そうかなあ? 僕、『今回は』ヒポクラテス先生のもとで勉強したから、大分、知力あがったよ」

 ナウシカが首を傾ける。

「パリス。どういうことだ? 『今回』?」

 田舎の狩人は自分の言葉に戸惑う。

「あれ? いや、何となく……とにかく、これでも僕、簡単な傷の手当なら出来るようになったよ」

 実は、パリスは、何度か時を巻き戻ってやり直している。時間が巻き戻れば、前の時のことはほとんど忘れてしまうが、心のどこかに刻まれるらしい。

「パリス。お前の力で俺たちの旅は、助かっている……しかし、これから理不尽な罠や謎が仕掛けられた場合、俺たちだけでは不安だ」

 ヘクトルは腕くみをして考え込んだ。この発言が出たからには、このあと罠や謎が登場するに決まっている。

「私に任せるんだ。動物はな、人間が思っているより賢い」

 ナウシカが胸を張る。

「すごいねー、ナウシカ姉さん。この前、森で熊に襲われかけたとき、姉さんが見つめたら、熊が大人しくなったよね」

 パリスはナウシカにすり寄るが、誇り高い王女は跳ね除けた。

「それ以上、私に近寄るな!」

「パリス! ナウシカの婿になる覚悟はあるか?」

 ヘクトルは、拳をパリスの眼前に突きつける。

「ま、待ってよ。僕、まだ結婚とか考えてないって!」

 小さな男が縮こまると、大きな男は王女にニヤっと笑った。

「いいかナウシカ? こんなチャラ男に構わず、ラリサの町でいい婿を見つけるんだぞ」

 誇り高い王女は、更に声を荒らげた。

「ふざけるな! 私が島を出たのは世界を知りたかったからだ! 男を見つけるためではない!」

「おいおい、俺はお前が心配なだけだ。こんなパリスにちょっと『かわいい』と言われたぐらいで、惚れるぐらいだからな」

 パリスが割り込んだ。

「思ったことを言っただけだよ、姉さん」

 大きな王女は顔を赤らめたが、すぐ険しい顔つきに戻り、宣言した。

「心配無用だ! 私は二度とお前のような男には騙されぬ! 私は、私より強く、妻ひとりを誠実に愛する男ではない限り、婿にしようとは思わぬ」

 ヘクトルがニヤっと笑って拍手を送った。

「いいぞナウシカ! その心意気だぞ」

「ヘ、ヘクトル。だから、私に構うのはやめろ」

 ナウシカは顔を背ける。
 パリスは「そんな男、いるわけないって、あ……」と呟くが、口をつぐんだ。
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