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3 旅の仲間と出会ったが……
(1)旅立ち
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故郷の村を襲った病の謎を探るため、町の医者ヒポクラテスに弟子入りしたパリス。
彼は持ち前の美貌を生かし『壁ドン』やら『顎クイ』などの技を駆使して、あらゆる薬草を手に入れ、ヒポクラテスに重宝されていた。
ハーレムな日々を過ごしていたパリス。それはそれで、ほのぼの系なんちゃって古代ギリシャファンタジーとしてありかもしれないが、やはりファンタジーといったら冒険が王道。
ということで、そろそろ冒険の旅について語ることとしよう。
ヒポクラテスの診療所に、マッチョな男が怒鳴り込こみ、パリスに掴みかかった。
「お前か! このチャラ男! ナウシカに『後ろハグ』して、無理目ダンジョン突入させ、神の飲み物ネクタル盗ませただろ?」
マッチョに絡まれるのはイケメンの宿命。パリスは、スマイルを惜しみもなく売り飛ばす。
「僕、そんなこと言ってません! ただ『ナウシカさんって、青く染めた衣が似合って、かわいい勇者さんなんですね~』としか言ってませんよ」
村を出たときは純朴だったパリスも、すっかり町の色に染まり、立派なチャラ男に成長した。
「うわあああ! あいつ、あー見えて『かわいい』に弱いんだよ! お前、よく弱点、見抜いた。只者ではないな」
「え? 女の人は誰だって『かわいい』って言われたいもんでしょ? あ、でも本物の美人には効きませんよ」
「お前、さりげなくナウシカのこと、ブスって言ってないか? ひどいぞ」
「そんなことないって。すごくかわいいと思ってます。ブスなんて言ったら日本国民に殺されます」
「ニホン? ワケわからんこと言うな。が、それで何であいつがネクタルを盗みに行った?」
「ヒポクラテス先生がネクタルさえあれば治るのにって悩んでたから、つい『僕があなたみたいな勇者なら、ミノタウロスの洞窟にあるネクタルを取りに行けるのに』って言っただけで……」
「言ってるじゃねえか!!」
パリスはものの見事、マッチョに投げ飛ばされた。
そこへ師匠、ヒポクラテスが往診から帰ってきた。
「ありゃりゃ~パリス。またやられたのか~、今度はどんな男じゃ……おお! 素晴らしい、この上腕二頭筋!」
医師は弟子を投げ飛ばした男の二の腕をスリスリする。「上腕二頭筋」なんて単語をファンタジーに出していいかよくわからないが、なんちゃってファンタジーだし、リアルなヒポクラテスは解剖の書を残しているから、『上腕二頭筋』ぐらいいいよね……話を戻そう。
「おい、パリス~。ちょっとはこーいう男、見習ったらいーと思うよお。女ばっか口説いてないで、筋トレ筋トレ」
筋トレは古代エジプトからあったらしい。オリンピック発祥の地ギリシャのことだ。男たちは、筋トレに励んでいただろう。クロトナのミロという古代ギリシャのレスリング選手は、子牛を肩に担いで毎日歩き、牛が成長するにつれ強くなったとか……良い子も悪い子も真似しちゃダメだよ、危ないから……話を戻す。
「だって先生がネクタル取ってこいとか、無茶ぶりするからじゃないですか~」
「そ、そりゃねえ、ネクタルは、どんな病にも効くからねえ……」
師匠と弟子のやり取りに、マッチョが割り込んできた。
「センセーよ! このチャラ男のせいで、ナウシカがイカレちまったんだよ」
「おや『イカレ』たとは穏やかなではないなあ。どこが悪いかの?」
「あいつは十六歳になる。だから嫁に行けって見合いさせても『男なんかいらない。この子たちの方がカワイイ』ってアリやキリギリスを飼ってる虫オタクだった」
古代ギリシャの女性の結婚は早く十五歳ぐらいだ。男性は三十歳ぐらいなので今の日本と変わらない。羨ましいとか言わないように思わないように。
ともあれマッチョは、一気にまくしたてる。
「その虫オタクが、今じゃ毎日『パリス、パリス、もう一度会いたい』って、うぜーんだよ!」
あさっての方を向くパリス。今までも似たような展開はあったが、こんなマッチョに叩きのめされたことはない。
そこで師匠が助けに入る。
「いやいや、恋の病は、コス島の温泉でも治らんからのお~」
「思い出した! 確かあんた、マケドニア王の恋の病を治したって聞いたぞ」
「あ~、それ都市伝説じゃ。よし、パリス。その病はあんたが治すんじゃ」
ヒポクラテスは、チャラ男の弟子を起こして背中を叩いた。
「へっ? 僕? 先生と違って病気なんて治せませんよ」
パリスにできるのは、『壁ドン』と『顎クイ』で、女子、場合によっては男子をその気にさせるだけ。
「おなごが会いたいと言ってるんじゃ、会ってやりなさいな」
「ええええ~。先生! 僕は、まだ先生のもとで修業したいです!」
パリスは姿勢を正しひざまずいた。だって町のぬるい暮らし、今更辞められない。
「いんにゃ、外に出て世界を知るのも修業じゃよ。まあこいつのおかげで、珍しい薬が大分手に入ったし、近頃は、若い娘がうろつき、むさい男が怒鳴り込むし、落ち着かないったらありゃしない、ちょーどよい頃合いじゃ」
ヒポクラテスの弟子への扱い、これでは、レアアイテムゲットできたから用ないや、と身ぐるみはがされるNPCと同じ。ひどい。
マッチョは、パリスの首根っこを捕まえた。
「何でナウシカがお前みたいなヘタレ男に惚れたかわからんが、ともかく来い!」
「えええ! せんせ~、僕、故郷で流行った病の謎を解くために、弟子入りしたのに~」
パリスはすっかり忘れていた目的を取ってつけたように思い出し、師匠に訴えるが、「がんばってね~、いってらっしゃい~」とヒポクラテスはニコニコ見送った。
彼は持ち前の美貌を生かし『壁ドン』やら『顎クイ』などの技を駆使して、あらゆる薬草を手に入れ、ヒポクラテスに重宝されていた。
ハーレムな日々を過ごしていたパリス。それはそれで、ほのぼの系なんちゃって古代ギリシャファンタジーとしてありかもしれないが、やはりファンタジーといったら冒険が王道。
ということで、そろそろ冒険の旅について語ることとしよう。
ヒポクラテスの診療所に、マッチョな男が怒鳴り込こみ、パリスに掴みかかった。
「お前か! このチャラ男! ナウシカに『後ろハグ』して、無理目ダンジョン突入させ、神の飲み物ネクタル盗ませただろ?」
マッチョに絡まれるのはイケメンの宿命。パリスは、スマイルを惜しみもなく売り飛ばす。
「僕、そんなこと言ってません! ただ『ナウシカさんって、青く染めた衣が似合って、かわいい勇者さんなんですね~』としか言ってませんよ」
村を出たときは純朴だったパリスも、すっかり町の色に染まり、立派なチャラ男に成長した。
「うわあああ! あいつ、あー見えて『かわいい』に弱いんだよ! お前、よく弱点、見抜いた。只者ではないな」
「え? 女の人は誰だって『かわいい』って言われたいもんでしょ? あ、でも本物の美人には効きませんよ」
「お前、さりげなくナウシカのこと、ブスって言ってないか? ひどいぞ」
「そんなことないって。すごくかわいいと思ってます。ブスなんて言ったら日本国民に殺されます」
「ニホン? ワケわからんこと言うな。が、それで何であいつがネクタルを盗みに行った?」
「ヒポクラテス先生がネクタルさえあれば治るのにって悩んでたから、つい『僕があなたみたいな勇者なら、ミノタウロスの洞窟にあるネクタルを取りに行けるのに』って言っただけで……」
「言ってるじゃねえか!!」
パリスはものの見事、マッチョに投げ飛ばされた。
そこへ師匠、ヒポクラテスが往診から帰ってきた。
「ありゃりゃ~パリス。またやられたのか~、今度はどんな男じゃ……おお! 素晴らしい、この上腕二頭筋!」
医師は弟子を投げ飛ばした男の二の腕をスリスリする。「上腕二頭筋」なんて単語をファンタジーに出していいかよくわからないが、なんちゃってファンタジーだし、リアルなヒポクラテスは解剖の書を残しているから、『上腕二頭筋』ぐらいいいよね……話を戻そう。
「おい、パリス~。ちょっとはこーいう男、見習ったらいーと思うよお。女ばっか口説いてないで、筋トレ筋トレ」
筋トレは古代エジプトからあったらしい。オリンピック発祥の地ギリシャのことだ。男たちは、筋トレに励んでいただろう。クロトナのミロという古代ギリシャのレスリング選手は、子牛を肩に担いで毎日歩き、牛が成長するにつれ強くなったとか……良い子も悪い子も真似しちゃダメだよ、危ないから……話を戻す。
「だって先生がネクタル取ってこいとか、無茶ぶりするからじゃないですか~」
「そ、そりゃねえ、ネクタルは、どんな病にも効くからねえ……」
師匠と弟子のやり取りに、マッチョが割り込んできた。
「センセーよ! このチャラ男のせいで、ナウシカがイカレちまったんだよ」
「おや『イカレ』たとは穏やかなではないなあ。どこが悪いかの?」
「あいつは十六歳になる。だから嫁に行けって見合いさせても『男なんかいらない。この子たちの方がカワイイ』ってアリやキリギリスを飼ってる虫オタクだった」
古代ギリシャの女性の結婚は早く十五歳ぐらいだ。男性は三十歳ぐらいなので今の日本と変わらない。羨ましいとか言わないように思わないように。
ともあれマッチョは、一気にまくしたてる。
「その虫オタクが、今じゃ毎日『パリス、パリス、もう一度会いたい』って、うぜーんだよ!」
あさっての方を向くパリス。今までも似たような展開はあったが、こんなマッチョに叩きのめされたことはない。
そこで師匠が助けに入る。
「いやいや、恋の病は、コス島の温泉でも治らんからのお~」
「思い出した! 確かあんた、マケドニア王の恋の病を治したって聞いたぞ」
「あ~、それ都市伝説じゃ。よし、パリス。その病はあんたが治すんじゃ」
ヒポクラテスは、チャラ男の弟子を起こして背中を叩いた。
「へっ? 僕? 先生と違って病気なんて治せませんよ」
パリスにできるのは、『壁ドン』と『顎クイ』で、女子、場合によっては男子をその気にさせるだけ。
「おなごが会いたいと言ってるんじゃ、会ってやりなさいな」
「ええええ~。先生! 僕は、まだ先生のもとで修業したいです!」
パリスは姿勢を正しひざまずいた。だって町のぬるい暮らし、今更辞められない。
「いんにゃ、外に出て世界を知るのも修業じゃよ。まあこいつのおかげで、珍しい薬が大分手に入ったし、近頃は、若い娘がうろつき、むさい男が怒鳴り込むし、落ち着かないったらありゃしない、ちょーどよい頃合いじゃ」
ヒポクラテスの弟子への扱い、これでは、レアアイテムゲットできたから用ないや、と身ぐるみはがされるNPCと同じ。ひどい。
マッチョは、パリスの首根っこを捕まえた。
「何でナウシカがお前みたいなヘタレ男に惚れたかわからんが、ともかく来い!」
「えええ! せんせ~、僕、故郷で流行った病の謎を解くために、弟子入りしたのに~」
パリスはすっかり忘れていた目的を取ってつけたように思い出し、師匠に訴えるが、「がんばってね~、いってらっしゃい~」とヒポクラテスはニコニコ見送った。
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