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古代中国の恋人たち

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 二十年も前の自作ホームページからコピーペーストするだけの企画、段々、ネタが尽きてきました。
 前回は、読書感想文からずれて、古代中国史のマイナー人物を取り上げました。

 私が一時期、古代中国にハマってたのは、司馬遷の史記を読んだからです。
 自分は恋愛脳です。書いてる小説のジャンルは色々ありますが、基本は恋愛ベースで、主要な登場人物は誰かしらに恋しています。

 古代中国は男性中心社会、司馬遷の史記は、男たちの戦いが主役です。
 しかし恋愛脳の自分は、男だらけの史記の中にも、恋愛話を見つけちゃうんですね。
 古代中国で親の許しのない結婚はタブーだったでしょうが、それでも愛を求める人の気持ちは今も昔も変わらないようです。

 私は、男中心社会の中で光るカップルたちに惹かれました。
 このエッセイは、昔作った読書感想文ページからのコピーペーストですが、同じホームページで、古代中国のカップルのコーナーを作りました。
 前回の記事は、カップル紹介ページからコピー&ペーストしたものです。

 ここで、他のカップルたちの記事をコピーペーストしてもいいのですが、エッセイの趣旨と大分ずれてしまうので、リストアップと簡単な紹介で留めておきます。
 メジャーなカップルもいれば、超マイナーカップルもいます。


(1)呂不韋りょふいと始皇帝の母

 古代中国ではメジャーカップルでしょうか。秦の始皇帝の実の父は、秦王ではなく別の男だったという説があります。史記に堂々と載っています。

 その実の父と噂されるのが、呂不韋という男です。
 史記の呂不韋列伝によると……
 商人呂不韋は、趙で、人質に出された秦の王子に近づき、彼を王にするべく秦の王室に働きかけます。
 王子は、呂不韋の館で美しい舞姫を見初め、彼女を貰い受けます。
 しかし、女は既に呂不韋の子を身ごもっていました。12か月後に男の子が生まれ政と名づけられます。その子が後の始皇帝になった、ということなのです

 始皇帝が秦の王に即位したとき少年だったので、呂不韋が実権を握ります。
 しかし成長した始皇帝は、実権を握る呂不韋を自殺に追い込のです。


 中国を始めて統一した皇帝の父は、母の愛人で実力者。成長した息子は実の父を死に追い込む……いや~、なかなか美味しいドラマです。創作意欲を掻き立てられます。

 ですが私は捻くれていたので、この説は怪しいとホームページに書きました。まず12か月後に生まれたというのが、不自然です。
 始皇帝を憎む人たちが立てた噂ではないかと思っています。


(2)漢の文帝と鄧通とうつう

 漢の文帝というと名君で有名です。彼の妻は、皇后のほかは名のある夫人は二人、皇后以外の女性が産んだ子供は三人です。古代中国皇帝にしては、女性関係もすっきりしています。皇后が失明したためか、お気に入りの夫人を皇后にしようとするも、臣下に諫められ取り下げます。なかなか自制心のある方です。

 と、女におぼれて国を乱すことはありませんでした。が、その代わり……といってはあれですが、お気に入りの美青年がいました。彼の名は鄧通。
 二人のロマンティックな出会いをはじめ、仲良しぶりが史記に載っています。臣下が二人を叱ったぐらい、イチャコラしていました。
 彼らの物語は、史記の佞幸列伝に載っています。佞幸列伝とは「容色をもって帝王に愛された男」の列伝だそうです。
 まさか史記にBLが載っているとは思いませんでした。


(3)漢の文帝と竇后とうこう

 名君文帝に、もう一度登場してもらいます。
 文帝の皇后、竇后は苦労人で、幼い弟が人買いに売られるぐらい、貧しい家に生まれました。
 もともと文帝の正妻ではなく、妾のひとりだったのですが、文帝は彼女一人を大切にしました。そして文帝は紆余曲折を経て即位し、彼女は皇后に立てられます。
 皇后となった竇后は、幼い時売られた弟と二十年ぶりに再会し、涙の体面となります。

 ……私のホームページはここで中断しております。書くのが大変になったんですけどね。
 ここで話が終わっていれば、めでたしめでたしのシンデレラストーリーなんですが、そうはいきません。
 せっかくなので、その後を簡単に記します。

 この竇后、文帝生存時は大人しい奥様でした。
 ですが夫の死後、キャラ変します。ゴッドマザーになり、息子である皇帝、景帝に口出す口出すわ。で、息子は皇帝なのに、お母様には逆らえないらしい。で、息子の次の皇帝が誰になるか、大揉めに揉めたのですが、このお母様の力が大きく働いたようです。


(4)臧児ぞうじ酈寄れきき

 マニアックな二人ですが、臧児は検索するとちょこちょこ出てきます。
 この方は、漢の武帝の母方の祖母にあたります。漢の武帝というと世界史に登場しますかね。

 この女性すごいパワフルです。占い師が「あなたの娘は高貴になるでしょう」と言ったもんだから、娘を漢の後宮に送り込みます。
 何がすごいかって、その娘、既に他家に嫁いで子供を二人産んでいるんです。それを無理矢理離婚させて後宮に送り込むんです。

 で、ものすごーいすったもんだの果て、この娘が皇后となります。彼女、王皇后が産んだ息子、後の武帝が皇太子となりました。その皇帝とは、先ほど出てきた文帝の息子、景帝です。
 ということで、臧児は皇后の母であり、皇太子の祖母となったわけです。

 そろそろ男性の酈寄の話を。彼は劉邦の部下の一族で、漢の将軍のひとりです。
 彼は皇后の母となった臧児と結婚しようと試みます、が、時の皇帝、景帝の怒りを買い、地位をはく奪され領地を没収されます。
 彼の出番はこれだけです。酈寄単体のエピソードはいろいろありますが、臧児とのからみはこれだけです。

 酈寄が結婚したかった臧児は、当時いくつだったのでしょう?
 歴史書に女性の年齢はあまり書かれませんが、彼女の孫の武帝は9才になっています。
 昔の女性の結婚は早いのでしょうが、若くても50歳でしょう。21世紀の今なら、50歳でも若々しい人がいますが、栄養状態も悪くUVケアなんてできない時代です。
 50歳を超えてプロポーズされたとは、どんな美魔女だったのでしょう?
 酈寄は皇后の母という立場に惹かれたのでしょうが、気になります。

 また彼女の娘、王皇后もすごいです。だって、子供を二人産んだバツイチが皇后になれるんですよ。
 現代日本の皇后では考えられませんよね。国民が猛反対するでしょう。ヨーロッパの王室は大分開けていますが、まだまだレアケースですよね。
 変な話ですが、前漢時代の殿方は、女性の処女性にさほど拘りがなかったんですかね?

 この二人はカップルではありませんが、美魔女の臧児が好きで、ホームページで取り上げた次第です。


(5)司馬相如しばそうじょ卓文君たくぶんくん

 こちらは、中国ではメジャーなカップルです。
 司馬相如は、前漢の天才文学者です。
 田舎の富豪の娘、卓文君は未亡人で実家に戻っていました。まだティーンエージャーだったようです。
 貧しい司馬相如は、卓文君に近づこうと作戦開始。有力なコネのおかげで、富豪、卓王孫の宴席に呼ばれることに。
 卓文君は、父の宴席で、素晴らしい歌を披露する司馬相如に一目ぼれし、二人は駆け落ちします。

 当時の司馬相如は貧しくこのままでは生活できません。卓文君は親戚からお金を借り、居酒屋を開いて生計を立てます。
 富豪の父、卓王孫は当然怒り狂いますが、親戚が窘めしぶしぶ認め、二人は貧乏から脱却します。

 後に漢の武帝が彼の文才に惚れこみ、宮廷お抱え詩人となります。
 その後、司馬相如は皇帝の使者として、卓王孫を訪れます。このお父さん「私は、娘を嫁にやるのが遅すぎた」と、ホクホク顔で迎えたそうです。


 このカップル、卓文君の逞しさが好きです。貧しさをただ我慢するのではなく、親戚からお金を借りて生計を立てようとする強さが、気に入っています。
 ゲンキンなお父さんも憎めません。駆け落ちされたときは怒ったけれど、婿が出世するとコロっと変わっちゃうところ、いいなあ。


(6)樛后きゅうこう安国少季あんこくしょうき

 こちらも、すごーくマイナーなカップルです。

 前漢の武帝時代、周囲の異民族の国をどんどん漢の支配下に置いていきます。
 この二人の物語は、それら異民族、越人の国、南越なんえつが舞台となります。場所は、今のベトナムの北部にあたるでしょうか。

 樛后とは、南越王の后です。しかし越人ではなく、漢の女性です。南越王が太子の時、人質として漢の都、長安で暮らしていました。
 その時娶った娘が、後の樛后です。実は彼女、南越に嫁ぐ前、安国少季という男と愛し合う仲でした。

 南越王の死後、樛后の若い息子が即位しますが、実権は母の手に。
 南越を臣従させたい漢帝国は、なんと、樛后のかつての恋人、安国少季を使者として送ります。
 漢政府、えげつないやり方です。

 当然二人の仲は再燃し、樛后は漢への臣従を主張。プロパー大臣たちは独立を主張し対立。ついに樛后は、漢の使者たちを入れた宴席で、プロパー大臣の筆頭、丞相の呂嘉を矛で突き刺そうとします。
 これは、息子の王が母を取り押さえ、未遂で終わりました。

 結局、丞相の呂嘉が反乱を起こし、樛后と安国少季、息子の南越王は殺されてしまいます。二人の不倫カップルは自業自得ですが、困った母親から呂嘉を守ろうとした息子の王が気の毒でなりません。

 その後、漢の攻撃により、呂嘉は殺され南越国は滅び、漢の直轄国となってしまいました。


 この話を取り上げたのは、樛后が武器を取って丞相を殺そうとする場面に惚れこんだからです。元カレにメロメロで、嫁ぎ先なんかどーでもいい態度。褒められた話ではありませんが、直接武器を手に取る女性は、なかなか珍しい気がします。



 こうして見ると、中国の前漢時代のお后様って、夫の生存時は大人しいんです。が、未亡人となり息子が王位を継ぐと、もう元気元気。
 息子が子供ならまだわかるけれど、二十歳を過ぎた息子も母には弱いようで、なんだかな~な感じです。


 エッセイの趣旨から外れてしまいました。すみません。
 次回から読書感想文のコピーペーストに戻ります。あと三冊で終了します。
 コピーペーストが尽きたら、その後に読んだ古典の感想を始めるつもりです。がんばっても月に二本程度になりますが、引き続きお付き合いください。
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