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百万円単位で損したかもしれない話――後編

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 今回のエッセイは、いつもとは違って、小説とほぼ関係ありません。タイトル通り、お金を損した話です。
 前回は、順調にお金を貯めてきた話をしました。
 今回は、いかにして私が五百万円も損したか、お話します。


 郵便局の投資信託でホクホクし、私は浮かれていました。
 今度は、お世話になってる証券会社の課長さんが、新しいファンドを勧めてきました。
 外国のすごそうな会社の株式で運用するファンド、らしいです。有名なIT企業の株も含まれます。
 課長さんは関西弁で「昔、アマゾンやマイクロソフトの株買った人、今、ウハウハですよ」とプッシュしてきます。
 ウハウハは無理でも「投資信託」です。プロが運用するんです。大きな損はしないだろう、一割二割増えればいいじゃんって……買っちゃいました。

 買ったファンドのことは気にしなかったのですが、関西弁の課長さんからまた電話がかかってきました。似たような名前のファンドを強力に勧めます。
「今、落ちてますから買い時ですよ」と押し切られ、追加で買っちゃいました。


 一年経ちました。ファンドは購入時から五百万円、減りました。私は小さな会社の平社員、この金額を貯金するのに三年はかかります。
 ファンドの掲示板では、ボロクソに言われています。一千万円損した人もいるようです。証券会社はかなり力を入れて営業したみたいで、私のように何もわからない人間が押し切られて大金を投じたようです。
 騙されたわけではありません。ちゃんと重要事項の説明書にあります。損することあるよって。課長さん、はっきり言ってました。元本割れするリスクがあるって。

 ファンドは、株や債権などを組み合わせた金融商品です。株が下がればファンドも下がる、当たり前です。
 安くない金を投じた商品がどんなものか、私は一切調べませんでした。ネットでチャートを確認すらしなかったのです。
 定期的に来る運用報告書で、シャレにならないレベルまで下がったことを知り、ようやく私は、自分が買ったファンドがどういう物か調べました。

 このファンドが始まった時、業界ではかなり話題になったようです。実質運用者がこの十年で頭角を表した有名な投資家で、ビジュアルからして、できる風の女性です。

 いろいろなファンドのチャートを見ましたが、ファンドって思った以上に変動が激しいです。半分ぐらい平気で下がります。
 プロが運用するから大きく失敗しないだろう――そんなわけないのに。
 株をやってる同僚に「なんでそんな怪しい名前の商品買ったんですか」と言われました。
 全部、買う前に調べとけよ! って話です。

 借金はありません。最悪、ゼロ円になるだけです。
 預貯金はそれなりにあるので、餓死することはありません。でも仕事は辞められないなあ~。


 証券会社の営業を妨害するつもりはありません。高校で投資の授業があると聞きましたが、いいことです。
 多くの人は私みたいにならないと思いますが、まとめます。

・投資信託はプロが運用してるから大丈夫、なんてことはない。
・ネットで、いろいろな金融商品のチャートを見てみよう。
・いくら営業が強烈にプッシュしても、ぜーったいにその場でイエスと言ってはいけない。
・買う前に金融商品を調べよう。
・投資は余ったお金ですべき。
・仮に損しても、必要以上にクヨクヨしない。

 以上、当たり前のことを述べました。
 なお、ネットで調べる際も注意が必要です。
 投資についてわかりやすくまとめたサイトが、いくつもあります。が、サイトの多くは、特定の金融商品を勧めるために書かれているようです。用心に越したことはありません。


 今回の件で、私は大いに反省しました。反省ポイントは、投資の失敗ではありません。

 自分の意志で自分なりに調べて、このファンド上がるかな? と買って損した場合、悔しいけれど、納得できます。
 しかし私は、心の底から欲しい物を買ったのではなく、営業に押し切られてノーと言えずに買ってしまったんです。
 自分の意志薄弱で大金を投じて損した、というのが情けなくて悔しいんです。


 五百万円あれば、いろいろできます。
 片付けのプロを呼んで、あっというまに部屋、きれいになるじゃん。
 エステや脂肪吸引で、痩せられるかもしれないじゃん。

 小説だって、ちゃんとしたスクールで通信添削できるじゃん。
 ココナラで、なるべく安く感想言って貰える人探すけど、気にしないで校正とか頼めるじゃん。
 知識ある先生に、小説の監修頼めるじゃん。
 実力ある作家さんに、小説をリライトしてもらえるじゃん。
 小説にイラスト、書いてもらえるじゃん。
 素敵なイラストを表紙にして、自費出版できるじゃん!

 前に書いた長編、すごーく豪華なホテルが舞台だけど、モデルになりそうな一泊百万円のホテルだって泊まれるじゃん。
 舞台となったトロントとかイタリアだって行けるじゃん。
 南極ツアーも行けるよなあ、無重力体験だってやってみたいよ。

 ……わかってます。自分は、五百万円を使わず貯めることを選んだだけです。
 今、五百万円渡されても、私は使わないで貯め込むでしょう。
 ここまで書くと、小説関係の売り込みがドバドバ入りそうですが、今のところ、お断りします。


 私は、何百万円もするバッグに宝石、何千万円もする車を買う人たちを、冷ややかな目で見ていました。
 バッグなんて物が入ればいい、宝石なんてガラスでいいじゃん、車は故障せず動けばいい、って思ってました。

 反省しました。それらはお金の使い方として正しいんです。
 自分が心の底から欲しい物を買う、素晴らしいことじゃありませんか。
 私みたいに、よくわからない商品を営業に押し切られて買うよりは、ず~っとマシです。


 今後どうするか?
 何年でも、元に戻るまで待ちます。償還日まで戻るといいんだけどなあ~。
 ただし、預貯金がゼロになり家を売るしかなくなったら、売っぱらいます。
 ありがたいことにこの一カ月で価格が上昇し、500万円の損が、400万円の損までに回復しました。この調子で上がれば半年で元に戻りそうですが……祈るしかありません。


 今回、小説と本当に関係ない話ですが、自分の情けなさが嫌になったので書かせてもらいました。
 次からは小説の話に戻りますが、また、小説と関係ない話をするかもしれません。
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