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時間経過の謎に挑む
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あと五分、アト十分。
それを何度か繰り返したって、せいぜい三十分しか経たないはず。
でも、外では四時間も経っていた。
『まるで相対性理論みたい』
『一般相対性理論によると、重力が強いと時間も遅くなります』
突然、頭の中でこれらが結びついて、花火のようにひらめいた。
なぜ、三十分しか経ってないのに、外では三時間や四時間が経過しているのか。
重力だ。
重力異常が発生しているのだ。
私が眠る時間、寝室で巨大な重力が発生し、時間が異常に遅れるのだ。
だから、寝室では三十分しか経ってないのに、外では何時間も経つのだ!
休日の食卓に、ソーセージマフィンとフルーツが並んでいる。
私は、新しいハーブティーを、ホットにしてマグカップに注いだ。
同居人が、マフィンを頬張りながら、ボソッとつぶやく。
「リポート、HPに載せといた」
この前の講演の感想文のことだ。
「大丈夫? 私の感想文なんかで」
「ん」
イエスでもノーでもない。ただ、既読マークを付けただけの返事。
「あのさあ、相対性理論の意味、少しわかったよ」
「へー、すごいじゃん」
向かいの人は、スマホから顔を動かさず答える。
「三十分しか経ってないのに、外では何時間も経っているって、重力が違うってことなんだよね」
「へっ!?」
同居人がスマホから顔を上げた。
私は、なぜ、五分、十分の繰り返しが、何時間にも増えるのか、よどみなく語った。
私が寝る時、寝室で重力異常が発生し、時間が異常に遅くなるのだと。
「その理屈なら、こっちも時間が遅くなるはずだよ」
同じ部屋に寝る同居人が反論する。
「ううん。重力はね、頭のてっぺんと、つま先でも違うんだって。すごくない? 同じ人間でも時間の流れが違うって」
腕くみして同居人が考えこんでいる。
ナントカ研究所の広報なのだから、私の言ってることは、わかるはずだ。
と、向かいの人は頭を上げた。
「異常重力が発生しているなら、下の階の人も同じ現象が発生しているはずだよね。だって重力は地球の中心から発生しているんだから」
言われてみるとその通りだ。
私がうなずこうとすると、同居人が付け加えた。
「でも下の二階の人は、毎朝、忙しそうだよ。私はゴミ出しをしているからよく会うんだ」
「うるさい!」
自分がこんなに大きな声が出せるとは思わなかった。
「ゴミ出しぐらいしろって言うんだろ! わかってるよ! 私だって、もう少し、もう少し時間があればできるんだ!」
向かいの人は無言で席を立ち、自分の部屋に籠ってしまった。
それを何度か繰り返したって、せいぜい三十分しか経たないはず。
でも、外では四時間も経っていた。
『まるで相対性理論みたい』
『一般相対性理論によると、重力が強いと時間も遅くなります』
突然、頭の中でこれらが結びついて、花火のようにひらめいた。
なぜ、三十分しか経ってないのに、外では三時間や四時間が経過しているのか。
重力だ。
重力異常が発生しているのだ。
私が眠る時間、寝室で巨大な重力が発生し、時間が異常に遅れるのだ。
だから、寝室では三十分しか経ってないのに、外では何時間も経つのだ!
休日の食卓に、ソーセージマフィンとフルーツが並んでいる。
私は、新しいハーブティーを、ホットにしてマグカップに注いだ。
同居人が、マフィンを頬張りながら、ボソッとつぶやく。
「リポート、HPに載せといた」
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「大丈夫? 私の感想文なんかで」
「ん」
イエスでもノーでもない。ただ、既読マークを付けただけの返事。
「あのさあ、相対性理論の意味、少しわかったよ」
「へー、すごいじゃん」
向かいの人は、スマホから顔を動かさず答える。
「三十分しか経ってないのに、外では何時間も経っているって、重力が違うってことなんだよね」
「へっ!?」
同居人がスマホから顔を上げた。
私は、なぜ、五分、十分の繰り返しが、何時間にも増えるのか、よどみなく語った。
私が寝る時、寝室で重力異常が発生し、時間が異常に遅くなるのだと。
「その理屈なら、こっちも時間が遅くなるはずだよ」
同じ部屋に寝る同居人が反論する。
「ううん。重力はね、頭のてっぺんと、つま先でも違うんだって。すごくない? 同じ人間でも時間の流れが違うって」
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と、向かいの人は頭を上げた。
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「でも下の二階の人は、毎朝、忙しそうだよ。私はゴミ出しをしているからよく会うんだ」
「うるさい!」
自分がこんなに大きな声が出せるとは思わなかった。
「ゴミ出しぐらいしろって言うんだろ! わかってるよ! 私だって、もう少し、もう少し時間があればできるんだ!」
向かいの人は無言で席を立ち、自分の部屋に籠ってしまった。
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