上 下
1 / 1

ふしぎなおもちゃ屋さん

しおりを挟む
ここはおもちゃのくに。
おもちゃたちがくらす、そらのうえのくにです。
うまれたばかりのかわいいねこのぬいぐるみが、いずみのちかくであそんでいました。
このいずみは、にんげんのくにがみえるふしぎないずみ。
ねこはいずみのなかをふしぎそうにながめていました。

おんなのこがあそんでいます。
あんなこといっしょにあそべたらいいのに。
ねこはそうおもいました。
「エリゼ、ごはんですよ。」
おかあさんがよびました。
「あのこ、エリゼっていうんだ。」

おもちゃのくににはきまりがあって、クリスマスのまえにひとつだけかみさまにおねがいをいうことができました。
おもちゃたちはみんな、もっとかわいいかおにしてほしいとか、かっこいいふくがほしいとか、そんなことをおねがいしていました。

クリスマスのひがちかづいてきました。ねこはかみさまにおねがいをいうのははじめてでした。
かみさまはすこしふとっていて、しろいひげをはやしたおじいさんでした。
「ねこよ、かなえてほしいねがいはあるかな。」
かみさまはいいました。
「エリゼといっしょにあそびたいの。」
ねこはいいました。
「いちどにんげんのくににいくと、もうおもちゃのくににはかえってこられないが、それでもよいのかな。」
「それでもいいの。」
ねこはいいました。
「よろしい。それではねがいをかなえよう。」

きょうはおでかけのひ、エリゼはおとうさんとおばあちゃんといっしょにえほんやさんにいくひです。でも、おみせのまえまでいくと「ほんじつおやすみ」のかんばんがでていて、おとうさんはこまってしまいました。
「おもちゃやさんがある!」
ほそいろじをはいったずっとおくに、おもちゃやさんがあるのをエリゼはみつけました。
こんなところにおもちゃやさんなんてあったかな。とおとうさんはおもいましたが、いってみることにしました。

「いらっしゃいませ。」
しろいひげをはやしたてんしゅのおじいさんがいいました。
おもちゃやさんはずいぶんむかしからあるおみせのようで、みたこともないかわいいおもちゃがたくさんありました。
おおきなゾウのぬいぐるみ、ブリキのへいたいにあやつりにんぎょうもありました。
いりぐちをはいってすぐひだりがわに、ふるいイスがあって、そのうえにエリゼとおなじくらいのおおきさのねこのぬいぐるみがおいてありました。
あおいガラスだまのようにきれいなめ。ちゃいろくてながいけなみ。しっぽはふとくてふわふわしていました。
「このこかわいい。」
エリゼはねこをぎゅっとだきしめました。
「このこはずいぶんとおくからこのおみせにきたんだよ。あるおんなのこをさがしにね。」
てんしゅのおじいさんがやさしいこえでいいました。

おひるのじかんになりました。ごはんをたべにいくためにいちどみんなはおみせをでました。
でも、やっぱりさっきのねこのぬいぐるみのことがきになって、エリゼはおもちゃやさんのほうにひとりでもどってしまいました。
「あれ? おみせが・・ない。」
いくらさがしても、おもちゃやさんはどこにもありませんでした。

こんやはクリスマスイブです。
いちねんにいちど、こどもたちがほしいものをサンタクロースがとどけてくれるひです。
ゆうがたからゆきがふりはじめ、こどもたちはみんなそわそわしています。
エリゼもなんだかねむれません。
あのひ、おもちゃやさんでみたねこのぬぐるみのことが、ずっとわすれられませんでした。
「あのねこちゃんにあいたい。」
エリゼはつよくおもっていました。

きがつくと、あさになっていました。
よるのあいだふりつづいたゆきはすっかりやみ、にわいちめんまっしろいじゅうたんがひろがったようです。
エリゼはベットからとびおきて、まくらもとをみました。
なにもありません。
こんどはかいだんをかけおりて、リビングのほうへはしりました。
クリスマスツリーのしたに、まっかなリボンのついたおおきなプレゼントのはこがありました。
はこをあけてみると、そこにいたのは

あのかわいいねこのぬいぐるみでした。
「やっとあえたね!」
エリゼはねこをぎゅっとだきしめました。

ここはおもちゃのくにのふしぎないずみ。
しろいひげのおじいさんが、やさしくほほえんでいました。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

クリスマスなんてきらいだ

みどり
絵本
けんちゃんのお姉ちゃんはパティシエ。クリスマスは仕事で家にいません。お姉ちゃんがいなくてつまらないけんちゃんは口を尖らせてしまいます。でも本当はお姉ちゃん大好き。

とべない鳥

赤鈴
絵本
これは、とある森にすむ2羽のとべない鳥の物語――。 挿絵(イラスト):まつりさん

ヨット もっと とっととと?

カヨワイさつき
絵本
水辺に浮かぶ小さなヨットに、色々集まってきます。 おともだちに、なれるかな? 新学期、新しい場所でのスタート。 我が子の入園式に思い付いた作品です。

弟は、お人形さんになりました

るいのいろ
絵本
あるところに、お母さん、お父さん、お兄ちゃん、弟くんの4人で出来た、ごく普通の家庭がありました。 この家族は貧しくもなければ潤沢な訳でもなく、ごくごく普通の家庭でした。 お母さんは優しいし、お父さんはサラリーマン、お兄ちゃんはたくましい。 でも弟くんは、お人形さん。 【注】このお話は少しホラーテイストになっております。苦手な方は十分注意の上閲覧ください。

雨の おはなし

みるく♪
絵本
ある雨の日の出来事。 幼いころの思い出です。

大きな木の思い出

るいのいろ
絵本
何年も何年もそこにいる大きな木。 大きな木は長い間みんなを見守っている。 大きな木は、大切な人との思い出を忘れず、何年も生き続けるのである…。

音からうまれた物語

りおん雑貨店
絵本
そこは、とある世界のとある場所。 すべての命がついえようとしていました。 音からうまれた、ひとつの、すべての、ものがたり。

僕の腕時計

るいのいろ
絵本
お父さんが持っている腕時計。 お仕事に行く時に、いつも付けていく。 大きくて、ピカピカで、とてもカッコイイ。 お父さんが寝ている間に、腕時計を持ち出したヒロくん。 早速お友達に自慢しに行きます。 ところが、お友達と遊んでいる間に腕時計が壊れてしまいました。 ヒロくんは、ちゃんと謝れるのでしょうか。

処理中です...