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追跡者
しおりを挟む「今週も疲れたね。」
「ほんとだね。」
金曜日、訓練学校を終えたリコとサッチは、帰り支度を整え、校門へ向かっていた。
「お二人さん、背中が疲れちゃってるわよ。」
モモが後ろから声を掛けてきた。
「お、モモか。ちょうどいいや。今日はどこに行く?」
サッチが聞いた。
毎週金曜日に訓練学校が終わると、3人で夕飯を食べに行くのが決まり事のようになっていた。
「そうね、最近できたイタリアンもいいな。でもいつものお店でもいいよ。リコは?」
「あ、俺今日ちょっと用事あるから行けないんだ。ごめんな。また行こうぜ。」
「あら残念。」
リコは足早に校門から出て、一人で帰ってしまった。
「今までは毎週一緒に行ってたのに、最近いつもだよな。」
「行くわよ。」
「ちょっとモモ、待ってよ。」
走り出したモモをサッチが追いかけていく。
訓練学校から最寄りのアルゴ駅までは、歩いて30分ほどかかる。リコはいつもそこから電車でケルト駅まで行き、家まで歩いているはずだった。
「リコ、急いでいるわね。もうあんなに遠くにいる。」
細い路地の角を曲がると、遠くのほうにリコが歩いているのが見えた。
「モモ、やっぱりやめようよ・・・。」
息を切らせながら、サッチが言うのも聞かず、モモは小走りでリコを追いかける。
金曜日のアルゴ駅の周りは人で溢れていた。駅の周辺にはレストランやバーが多く、仕事終わりの会社員が多い。スーツ姿のリコは完全に周囲の人混みに同化してしまっていた。
「リコいないわね。」
「この人混みの中で探すのは無理だよ。」
「1番ホームの前から2番目の車両。いつもリコはそこから乗るわ。」
リコがいつも電車に乗る時は前から2番目の車両で、それは以前にテレビで大きな脱線事故を見たことがあって、先頭車両は危険だから乗らないのだと話したことを、モモは覚えていた。
「間もなく1番線に電車が参ります。ご乗車のお客様は白い線の内側でお待ちください。」
遠くから、駅のホームのアナウンスが聞こえた。
「急がなきゃ。」
「すみません。通して下さい!」
二人は人混みをかき分けて走り出した。駅ビルの階段を駆け上がり、改札を抜けて1番ホームへ向かう階段を下る。
「間もなく、ドアが閉まります。駆け込み乗車はおやめください。」
場内アナウンスが流れて、ドアが閉まった。
「ふう。なんとか間に合ったわね。」
「モモ、走るの早すぎるよ。」
ドアが閉まる寸前、二人は1番ホームから発車しようとする電車になんとか乗ることができた。
「ここは・・・何号車かしらね。」
「前から4両目みたいだよ。」
「前のほうへ向かいましょう。見つからないように、慎重にね。」
「この電車にリコが乗っている保証はないと思うけどね。」
夕方のケルト駅に向かう車内は混み合っていた。仕事終わりのサラリーマン、学生などで座席は満席で、つかまるための吊革も余っていないほど沢山の乗客がいた。二人は人と人とのわずかな隙間を縫うように、前の車両へと進んでいった。
3号車の先頭くらいまで来た時、モモは2号車の中間くらいに吊革につかまっているリコを見つけた。
「いたわね。このあたりにいましょう。気づかれないように。」
小声でモモが言う。
電車に揺られながら、リコから見えない位置で二人は吊革につかまっていた。
仕事帰りのサラリーマンは、座りながら眠り込んでしまっている。ひたすらケータイを操作する女子高生に、おしゃべりが止まらない主婦たち。いつもと変わらない日常があった。
しかし、他愛もない会話に紛れて、モモのちょうど後ろあたりからどこかで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「この間は散々だったな。」
「はい。途中まではうまくいきそうだったんですけどね。」
「まずいのは俺たちの顔を見られたことだ。あの2人は、おそらくケルトの訓練生だろう。あの店を定期的に見張るんだ。」
「分かりました。」
「間もなく、ケルト駅に到着致します。お降りのお客様は右側のドアが開きますので、ご注意下さい。」
「アルカディアの夜明けだ・・・。」
モモは後ろを向かないように、サッチとそっと電車から降りた。
リコが2両目の電車から降りて、改札のほうに歩いていくのが見えた。
二人は気づかれないように、そっと後からついていく。
「どこに行くんだろう。」
「さあ、どこかしらね。」
リコは改札を出ると、一直線に繁華街のほうへ歩いていった。
ブランドショップが立ち並ぶ、おしゃれなエリアにさしかかった時、突然リコは走り出した。
勢いよく細い路地を曲がっていく。
「まずい。走るわよ。」
モモとサッチは突然のことで、瞬時に反応できなかった。
路地を曲がった先には、もう誰もいなかった。
「やられたわね。」
「あいつ、気が付いていたのか。」
残念そうな顔をして引き返していく二人を、避難階段の上から見ていた人物がいた。
「お二人さん、残念でした。」
リコはニヤッと笑って、階段を飛び降りると、噴水公園のほうへ足早に歩いて行った。
リコが路地を通り過ぎた後、大きなゴミ箱が音を立てて倒れた。
「いてて。まったく狭いゴミ箱だな。」
「そうね。ここで終わる私たちじゃないわ。」
モモとサッチはゴミ箱から這い出ると、噴水公園のほうへ走っていった。
「ほんとだね。」
金曜日、訓練学校を終えたリコとサッチは、帰り支度を整え、校門へ向かっていた。
「お二人さん、背中が疲れちゃってるわよ。」
モモが後ろから声を掛けてきた。
「お、モモか。ちょうどいいや。今日はどこに行く?」
サッチが聞いた。
毎週金曜日に訓練学校が終わると、3人で夕飯を食べに行くのが決まり事のようになっていた。
「そうね、最近できたイタリアンもいいな。でもいつものお店でもいいよ。リコは?」
「あ、俺今日ちょっと用事あるから行けないんだ。ごめんな。また行こうぜ。」
「あら残念。」
リコは足早に校門から出て、一人で帰ってしまった。
「今までは毎週一緒に行ってたのに、最近いつもだよな。」
「行くわよ。」
「ちょっとモモ、待ってよ。」
走り出したモモをサッチが追いかけていく。
訓練学校から最寄りのアルゴ駅までは、歩いて30分ほどかかる。リコはいつもそこから電車でケルト駅まで行き、家まで歩いているはずだった。
「リコ、急いでいるわね。もうあんなに遠くにいる。」
細い路地の角を曲がると、遠くのほうにリコが歩いているのが見えた。
「モモ、やっぱりやめようよ・・・。」
息を切らせながら、サッチが言うのも聞かず、モモは小走りでリコを追いかける。
金曜日のアルゴ駅の周りは人で溢れていた。駅の周辺にはレストランやバーが多く、仕事終わりの会社員が多い。スーツ姿のリコは完全に周囲の人混みに同化してしまっていた。
「リコいないわね。」
「この人混みの中で探すのは無理だよ。」
「1番ホームの前から2番目の車両。いつもリコはそこから乗るわ。」
リコがいつも電車に乗る時は前から2番目の車両で、それは以前にテレビで大きな脱線事故を見たことがあって、先頭車両は危険だから乗らないのだと話したことを、モモは覚えていた。
「間もなく1番線に電車が参ります。ご乗車のお客様は白い線の内側でお待ちください。」
遠くから、駅のホームのアナウンスが聞こえた。
「急がなきゃ。」
「すみません。通して下さい!」
二人は人混みをかき分けて走り出した。駅ビルの階段を駆け上がり、改札を抜けて1番ホームへ向かう階段を下る。
「間もなく、ドアが閉まります。駆け込み乗車はおやめください。」
場内アナウンスが流れて、ドアが閉まった。
「ふう。なんとか間に合ったわね。」
「モモ、走るの早すぎるよ。」
ドアが閉まる寸前、二人は1番ホームから発車しようとする電車になんとか乗ることができた。
「ここは・・・何号車かしらね。」
「前から4両目みたいだよ。」
「前のほうへ向かいましょう。見つからないように、慎重にね。」
「この電車にリコが乗っている保証はないと思うけどね。」
夕方のケルト駅に向かう車内は混み合っていた。仕事終わりのサラリーマン、学生などで座席は満席で、つかまるための吊革も余っていないほど沢山の乗客がいた。二人は人と人とのわずかな隙間を縫うように、前の車両へと進んでいった。
3号車の先頭くらいまで来た時、モモは2号車の中間くらいに吊革につかまっているリコを見つけた。
「いたわね。このあたりにいましょう。気づかれないように。」
小声でモモが言う。
電車に揺られながら、リコから見えない位置で二人は吊革につかまっていた。
仕事帰りのサラリーマンは、座りながら眠り込んでしまっている。ひたすらケータイを操作する女子高生に、おしゃべりが止まらない主婦たち。いつもと変わらない日常があった。
しかし、他愛もない会話に紛れて、モモのちょうど後ろあたりからどこかで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「この間は散々だったな。」
「はい。途中まではうまくいきそうだったんですけどね。」
「まずいのは俺たちの顔を見られたことだ。あの2人は、おそらくケルトの訓練生だろう。あの店を定期的に見張るんだ。」
「分かりました。」
「間もなく、ケルト駅に到着致します。お降りのお客様は右側のドアが開きますので、ご注意下さい。」
「アルカディアの夜明けだ・・・。」
モモは後ろを向かないように、サッチとそっと電車から降りた。
リコが2両目の電車から降りて、改札のほうに歩いていくのが見えた。
二人は気づかれないように、そっと後からついていく。
「どこに行くんだろう。」
「さあ、どこかしらね。」
リコは改札を出ると、一直線に繁華街のほうへ歩いていった。
ブランドショップが立ち並ぶ、おしゃれなエリアにさしかかった時、突然リコは走り出した。
勢いよく細い路地を曲がっていく。
「まずい。走るわよ。」
モモとサッチは突然のことで、瞬時に反応できなかった。
路地を曲がった先には、もう誰もいなかった。
「やられたわね。」
「あいつ、気が付いていたのか。」
残念そうな顔をして引き返していく二人を、避難階段の上から見ていた人物がいた。
「お二人さん、残念でした。」
リコはニヤッと笑って、階段を飛び降りると、噴水公園のほうへ足早に歩いて行った。
リコが路地を通り過ぎた後、大きなゴミ箱が音を立てて倒れた。
「いてて。まったく狭いゴミ箱だな。」
「そうね。ここで終わる私たちじゃないわ。」
モモとサッチはゴミ箱から這い出ると、噴水公園のほうへ走っていった。
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