リコの栄光

紫蘇ジュースの達人

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二人組の男

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アルカディアとは、僕たちが住んでいるケルト王国に隣接するアルカディア王国のことだ。
もともと太古の昔からアルカディアの民が住んでいた土地を、100年前の世界統一大戦の際、ケルト王国が侵攻し、一部をケルトの領土にした地域、通称ブラッドエリア(血塗られた土地)があり、国境付近では紛争が絶えず起こっていた。

投獄されている人民解放軍の即時釈放を求め、テロ組織「アルカディアの夜明け」による事件が町中で度々起こっていた。

「アルカディアの夜明けって、ヤバいんじゃない?」

モモが男たちに気づかれないように小声で言う。幸いにも僕らの席はレジから遠く、気づかれていないようだった。

「どうしてヤバいの?」
「リコはそうゆうことにホント疎いよね。レンジャーになりたいんだったらちゃんと勉強しなきゃダメよ。」
「はい。勉強します。」
「アルカディアの夜明けは、元ケルトの特殊部隊だった軍人が率いているの。」
「裏切り者ってこと?」
「そうよ。」
「なるほどね。なんかその話、昔父さんがしていたような気がする。」
「リコのお父さんが?」
「うん。僕の父さんはケルトの軍人だったんだ。今はもう死んじゃっていないけどね。」
「お父さんの名前は?」
「リオ・バルト」
「えっ!もしかして、あの狙撃手リオ・バルト?」
「そうだけど、ちょっとモモ、声が大きいよ。」

モモが思わず大声を出したせいで、男が一人、こちらに向かってきた。
「お嬢さん、おしゃべりは禁止だと言っているのが分からないのか。こちらへ来て頂こう。」
モモがレジのほうへゆっくりと歩かされた。背中には銃が突きつけられている。
どうすればいいんだ。
リコがモモを見ると、何やら目で合図をしているように見える。
モモは何かやるつもりなのか。モモが動き出す瞬間に、もう一人を食い止めなければ。
もう一人の男は、リコに背中を向けていた。
やれるかもしれない。
その瞬間、モモがレジの男の腕を掴み、後ろ手に取ったかと思うと男の銃を叩き落した。
あいつやるな。
リコも負けずと背中を向けている男の銃を奪い取り、床に伏せさせた。
鮮やかに連携が決まった。と思ったその時、レジの男は再びモモに銃口を向けていた。
「なにっ!」
左足首のホルスターに、もう一丁銃を隠し持っていたのだ。
「銃を捨てろ。この女を撃つぞ。」
リコは言われたとおりに銃を捨て、床に伏せた。
やっちまった。
「店長はいるか。」
レジの男が言い、店長らしき人物が怯えながら出てきた。
「我らはアルカディアの夜明け、投獄されている仲間の全員解放を要求する。要求が聞き入れられない場合、この店にいる人間を1人ずつ殺す。この電話を使い、ケルト政府に伝えろ。返事は30分以内だとな。」

状況は最悪だ。
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