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黒の帳 『一つ目の帳』
+ 天野視点『メガネ×5』
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「……何見てんだ、あ?」
「う、うっせーな…何でそこに立ってんだ…」
「テメェにゃ関係ねーよ」
俺をジロジロと見る奴らを睨みつける。まあ、見られるのは仕方ないだろう。
何せ俺は、朝から校門の入口に立って、通る奴全員をジロジロと見ているからだ。だが、またダメだ、まだ見つからない。
一体あの人はどこに居るんだ。
昨日の、俺を助けてくれたあの人。
同じ高校だから、絶対にまた会える。
あの人は学ランをキッチリと着こなしていたから、俺みたいな不良とは全く違う真面目な人なんだろう。そんな人は、不良のように学校に遅刻してこないはずだ。
だから俺はここで朝から待っている。ここに居れば、絶対あの人に会えるはずだ。何度繰り返したか分からないが、もう一度あの人の姿を思い浮かべる。
艷めく黒髪、それを留めるピンクのピン、宝石の様に煌めく美しい瞳。極めつけは、起きた時に見えた、あの、聖女のような笑顔!
思い出すだけで顔が熱くなりそうだ。
とても、とても綺麗な人だ、本当に。
あの人にもう一度会えるなら、俺は何だってやれる。もうクラスの頭だとか不良校だとかどうでもいい。俺は、あの人に会いたいんだ。
居ないな、居ないな、ともう何度目か分からない確認をする。ふと、見覚えのある奴らが歩いてきていることに気がついた。根暗野郎と片桐だ。アイツら仲良いんだな。…何か知らないだろうか。今は少しでも情報が欲しい。
校門に来た奴らに俺は近づいた。
「天野君おはよう!」
「おはよう阿賀野」
「天野だ!!…げっ、昨日の…」
電柱の影で気が付かなかった。二人の他に、クリミツが居た。割とデカイなコイツ。
「よぉ阿賀野。俺は栗田光彦だ。BとCの頭やるけど、文句ねぇよな」
「だから天野…、つーか、まあ正直頭なんざどうでもいいんだわ」
「え?」
三人が驚いている。そりゃそうだろうな。俺にはそんなことより大切な事があるんだ。あの人を何としても探し出すぞ。
でも、本当に見つからない。もしかして裏門とか、俺の居ないところから校舎に入ったんだろうか。校門で待ち構える俺を見て、怯えてしまったのかもしれない。
だが、そうだとしても俺は諦めない。あの人が不良の格好を怖がるなら、見た目くらい変えてみせる。
三人は果たして、あの人を知っているだろうか。知っていたとしたら、昨日のことを全力で謝って全力でお願いする。土下座だって何だってしてやる!
「…なあお前ら。一年生の、黒髪で、ここにピンクのピン付けたイケメン…いや、美人知らねえか?」
「…へえ、そんな奴居るんだ」
「知らないな」
「うん、私も知らない」
だが、そんな俺の決意も虚しく、三人は知らないと答えた。やけに解答が速い気がするが、まあ気の所為だろう。
「まさか探してっからこんな朝早くから居んのか?」
「あの人は学ランの前を全部留めてたから、きっと真面目な人に違いないと思ってな。だとしたら始業時間に間に合うように学校へ来るはずだ。だから待ってんだけど…全然来ねぇ。昨日介抱してくれた礼が言いてぇんだ。お前ら、見つけたら教えろよ」
もし俺を怖がっていたり、二度と話したくない、なんてことを思われていたとしても、お礼くらいは言いたい。一方的な俺のわがままだけど、一目見て、一言言えたらそれでいいんだ。あの人に、もう一度だけでいいから、会いたい。
「礼とか言って~、本当は口説くチャンス狙ってるだけだろ」
…は?
「ばっ、違っ、ちげーよチビ!!」
咄嗟に否定する。顔に一気に熱が集まったのが分かった。
そんな、そんなわけないだろっ!!
でも、口説く…そうか。
俺はあの人のことを、好きなのかもしれない。一目惚れ、というやつか。
でも俺はあの人の行動にだって惚れている。こんな俺を介抱してくれたんだ。とても優しい人なんだろう。俺なんかを助ける奴は居ないから、余計にその好意と心配が心地よかった。
俺が咄嗟に言い返した言葉に、クリミツが反応する。な、なんだよ、何なんだよ。
「あ゙?龍牙になんか言ったか」
「…チッ!!お前らどっか行け!」
しっしと手を振れば、三人が校門を通っていく。そう、それでいいんだ、これ以上話しかけてくんな!
まだまだ探すぞ、うん。俺は諦めない。絶対に、もう一度会って、お礼を言うんだ。
ふと前を見ると、さっき校門を通ったはずの根暗野郎がクソメガネ共を引き連れて歩いていた。メガネ共は俺を見て校門に入らなかったのに、気持ち悪い笑顔を浮かべて談笑しながら俺の前を通り過ぎた。どうやら根暗野郎とのお喋りに夢中で、俺のことを忘れていたらしい。
根暗野郎はどういうつもりなんだ?よく分からない奴だ。
いや、あんな底辺共を気にしている場合か。
俺は絶対にあの人を見つけ出すんだ。
「う、うっせーな…何でそこに立ってんだ…」
「テメェにゃ関係ねーよ」
俺をジロジロと見る奴らを睨みつける。まあ、見られるのは仕方ないだろう。
何せ俺は、朝から校門の入口に立って、通る奴全員をジロジロと見ているからだ。だが、またダメだ、まだ見つからない。
一体あの人はどこに居るんだ。
昨日の、俺を助けてくれたあの人。
同じ高校だから、絶対にまた会える。
あの人は学ランをキッチリと着こなしていたから、俺みたいな不良とは全く違う真面目な人なんだろう。そんな人は、不良のように学校に遅刻してこないはずだ。
だから俺はここで朝から待っている。ここに居れば、絶対あの人に会えるはずだ。何度繰り返したか分からないが、もう一度あの人の姿を思い浮かべる。
艷めく黒髪、それを留めるピンクのピン、宝石の様に煌めく美しい瞳。極めつけは、起きた時に見えた、あの、聖女のような笑顔!
思い出すだけで顔が熱くなりそうだ。
とても、とても綺麗な人だ、本当に。
あの人にもう一度会えるなら、俺は何だってやれる。もうクラスの頭だとか不良校だとかどうでもいい。俺は、あの人に会いたいんだ。
居ないな、居ないな、ともう何度目か分からない確認をする。ふと、見覚えのある奴らが歩いてきていることに気がついた。根暗野郎と片桐だ。アイツら仲良いんだな。…何か知らないだろうか。今は少しでも情報が欲しい。
校門に来た奴らに俺は近づいた。
「天野君おはよう!」
「おはよう阿賀野」
「天野だ!!…げっ、昨日の…」
電柱の影で気が付かなかった。二人の他に、クリミツが居た。割とデカイなコイツ。
「よぉ阿賀野。俺は栗田光彦だ。BとCの頭やるけど、文句ねぇよな」
「だから天野…、つーか、まあ正直頭なんざどうでもいいんだわ」
「え?」
三人が驚いている。そりゃそうだろうな。俺にはそんなことより大切な事があるんだ。あの人を何としても探し出すぞ。
でも、本当に見つからない。もしかして裏門とか、俺の居ないところから校舎に入ったんだろうか。校門で待ち構える俺を見て、怯えてしまったのかもしれない。
だが、そうだとしても俺は諦めない。あの人が不良の格好を怖がるなら、見た目くらい変えてみせる。
三人は果たして、あの人を知っているだろうか。知っていたとしたら、昨日のことを全力で謝って全力でお願いする。土下座だって何だってしてやる!
「…なあお前ら。一年生の、黒髪で、ここにピンクのピン付けたイケメン…いや、美人知らねえか?」
「…へえ、そんな奴居るんだ」
「知らないな」
「うん、私も知らない」
だが、そんな俺の決意も虚しく、三人は知らないと答えた。やけに解答が速い気がするが、まあ気の所為だろう。
「まさか探してっからこんな朝早くから居んのか?」
「あの人は学ランの前を全部留めてたから、きっと真面目な人に違いないと思ってな。だとしたら始業時間に間に合うように学校へ来るはずだ。だから待ってんだけど…全然来ねぇ。昨日介抱してくれた礼が言いてぇんだ。お前ら、見つけたら教えろよ」
もし俺を怖がっていたり、二度と話したくない、なんてことを思われていたとしても、お礼くらいは言いたい。一方的な俺のわがままだけど、一目見て、一言言えたらそれでいいんだ。あの人に、もう一度だけでいいから、会いたい。
「礼とか言って~、本当は口説くチャンス狙ってるだけだろ」
…は?
「ばっ、違っ、ちげーよチビ!!」
咄嗟に否定する。顔に一気に熱が集まったのが分かった。
そんな、そんなわけないだろっ!!
でも、口説く…そうか。
俺はあの人のことを、好きなのかもしれない。一目惚れ、というやつか。
でも俺はあの人の行動にだって惚れている。こんな俺を介抱してくれたんだ。とても優しい人なんだろう。俺なんかを助ける奴は居ないから、余計にその好意と心配が心地よかった。
俺が咄嗟に言い返した言葉に、クリミツが反応する。な、なんだよ、何なんだよ。
「あ゙?龍牙になんか言ったか」
「…チッ!!お前らどっか行け!」
しっしと手を振れば、三人が校門を通っていく。そう、それでいいんだ、これ以上話しかけてくんな!
まだまだ探すぞ、うん。俺は諦めない。絶対に、もう一度会って、お礼を言うんだ。
ふと前を見ると、さっき校門を通ったはずの根暗野郎がクソメガネ共を引き連れて歩いていた。メガネ共は俺を見て校門に入らなかったのに、気持ち悪い笑顔を浮かべて談笑しながら俺の前を通り過ぎた。どうやら根暗野郎とのお喋りに夢中で、俺のことを忘れていたらしい。
根暗野郎はどういうつもりなんだ?よく分からない奴だ。
いや、あんな底辺共を気にしている場合か。
俺は絶対にあの人を見つけ出すんだ。
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