レイズワード伯は翻弄される【R18】

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そういうのがお好き?

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 「いよぉ、奥方。ふっ、いやいや、こうなると奥方というにはあまりにも……、なぁ、“クロード”!」

 ざっくり切ってしまった髪を短く整えたクローディアに、グイードが揶揄じみた物言いとともにぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜる。

「ちょっと! やめてくださいます? 私はもう伯爵夫人なんですから。弁えてくれないと困ります」

 そのグイードの手をパシンとクローディアが払い除け、腰に手をやって怒りを露わにする。

「いやぁすまんすまん。すっかり上手いこと擬態したと思っていたらコレだからなぁ」

 払われた手をヒラヒラと振りながらグイードが笑い、視線をランドリューに向けた。

「さぞかし驚いただろ、ランディ」
「あ、あぁ……」

 ランドリューはむっつりと押し黙り、いつもの険しい顔でカップを傾けた。
 騒動から数日、ランドリューら夫婦とグイードは庭園でティータイムを楽しんでいた。
 ことの始まりは数刻前。

「そろそろお暇させてもらうかな、すっかり長居してしまったし」

 朝食時、逗留していたグイードがこぼしたこの言葉に端を欲する。
 それなら最後にゆっくり落ち着いた時間を過ごしませんか、とクローディアが提案したのがこのティータイムだった。
 使用人の女たちは突然のこの予定に、嫌な顔ひとつせず、むしろ喜んでセッティングに参加したがった。

(グイードめ……うちのメイドたちに手を出してはおらんだろうな……)

 ランドリューは、率先して給仕をかって出る使用人たちとそれににこやかに視線を送るグイードにかなり疑いを抱いていた。

(グイード……クローディア……いくらなんでも馴れ馴れしくしすぎではないのか!?)

 そこにきてグイードとクローディアのじゃれあいめいたやり取りに、ランドリューは衝撃を受けていた。

 振り返ってみれば、グイードはクローディアが“クロード”という男名を名乗り騎士として名を馳せていたことを知っていたということになる。知っていてランドリューに黙っていた。クローディアとの関係などおくびにも出さず、結婚式で初めて会ったような顔をしていたのだ。と、ランドリューはその事に気付いてしまった。

 騎士団は結束が固い。仲間意識が強い。寝食を騎士団寮で共にするからだ。

(可能なのか……女だてらに、男たちと……そんなこと)

 ランドリューは、眉を顰め、頭痛を堪えるような顔をした。

「貴方……? ご気分が優れませんか、随分と怖い顔」
「怖い顔はいつものことだろう。……ランディ、心配するな、さすがにアンタのとこのメイドにゃ手は出さんって!」
「あぁ、そういう心配……」

 グイードの察しの良さはなかなかのもので、己のことをよく知りまた友のこともよく知ればその発想でもあった。しかし、それは半分だけの正解だ。

「……私は、少し休んでくる。グイード、くれぐれも、発つ鳥後を濁すなよ」

 じろりと睨みながら釘を刺すランドリューに、グイードは肩を竦めた。

「わかってるって」

――

 「クロード……騎士団では、結束力が大事なんだ、わかるな」
「は、はい……」

 騎士にしては小柄で華奢な、まだ少年の雰囲気を強く残す青年に、明るいオレンジ色の髪の男が言う。騎士団寮の執務室には西日が差し込み、濃い影が落ちる。

「クロード。お前が女だと知るのはほんの一握りの騎士団上層部だけ。逆に言えば、それがおまえさんのアキレス腱でもある。上に睨まれたらおしまいだぞ、同僚にバレても」
「わ、わかっております! どんなこともいたします、騎士として名を挙げるためなら」
「いい心掛けだな」

 キッとまなじりを釣り上げ、勝ち気に言い放つクロードに、オレンジ髪の騎士は目を細めた。




「そう、握る力は優しく……剣の柄じゃないんだ、気をつけて」

 窓辺に佇む男の前に跪き、クロードはズボンの股間を寛げた男の逸物を引き出すと、優しく両手に握り言われるがままに手で上下に擦り上げる。

「ふ、うまいうまい。それから、唾を口によく含んで、濡れた舌で裏筋から舐めていく。やってみろ」
「は、はい……っ」

 男の剣だこだらけの大きな逞しい手が、クロードの黒い癖毛をくしゃりとかき混ぜた。
 教えられるままに、クロードは唾でよく濡らした舌先で、硬くなりつつある男のソレをれろ、と舐めていく。

「ん、いいぞ。繰り返し、舐めながら、手も使って……」

 両手で扱きながらぺろぺろと舐めるソレが、ムクムクと目の前で硬くなり反り返り、大きく太くなっていくのにクロードは目を瞠った。

「つ、つぎは……どう、したら?」

 ごくり、と知れず唾を飲み込みながら、クロードは男を見上げて指示を仰ぐ。

「咥えて、先端を、舌先で念入りに……手も忘れるなよ、できるか?」
「できます!」

 クロードはそう言うと、あん、と口を開けてパクリと屹立を咥え込んだ。それは大きく太く、咥えただけで口が疲れ痺れてしまいそうな。

 クロードは、言われた通りに、舌先を必死に動かして先端をしゃぶり、ぢゅうちゅっと吸い付きながら、太い怒張の竿から根元までを両手で一心に扱いていく。

「んっ、んくっ」
「うっ、ぁ、あぁ、いいぞ、いい。その調子、だ」

 頭を動かし、角度を変えながら咥え込んだモノをじゅぷじゅぷと舐めて、硬く窄めた舌でグリッと先端の切れ目を刺激する。

「ウッ……! 出すぞっ」

 男の手が癖毛をがしりと掴みながら、喉の奥に太いそれを押し込んだ。

「んぐうっ……!」

 苦しげに歪むクロードの顔。
 口の中にじわっと広がる、苦く饐えた味と匂い。
 ずる、と引き抜かれたそれは萎えて、僅かに透明な糸を引いた。

「うっ、うぇっ……ごほっ、うっ」
「偉いじゃないか、クロード。よく頑張ったな。団長にはこうして奉仕してやれ……そうすれば」

 安泰だ、と言いながら男はもう一度クロードの頭をくしゃりと撫でて、ズボンを整えた。

――

「嗚呼……! なにを考えているのだ、私はっ……」

 ガンッと書斎机に突っ伏し頭を抱え、ランドリューは激しい自己嫌悪に貫かれた。

「クローディアも、グイードも、そんなことはしないっ」

 わかりきっているのだ。
 グイードは人の弱みに付け入るような卑劣とは縁遠い男で、クローディアは誇り高い女である。騎士団の内情をよくは知らないが、さすがにこんなことは横行すまい。

 全て妄想である。

「く、ぅ……クローディア……」 

 ランドリューは、クローディアと漸く分かり合えたと思っていた。夫婦の営みもうまくいった。もはやこのような下らない妄想は不用であるはずだった。

 しかし。

「うっ……」

 勃っている。どうしようもなく興奮している。ランドリューは自らの手で昂りを慰めながら、一層の嫌悪と後悔とに苛まれ、それでもなお脳裏に過ぎるあり得ないクローディアの淫らな様を思い描いて。

「あぁっ……!」
 果てた。

――

「貴方。もう明日にはグイード様もお発ちになるのだから、夕食はちゃんとご一緒しましょうよ」

 最初はルーグが呼びに来た夕食の誘いであったが、ランドリューは体調が悪いという理由で突っぱねた。

 グイードはさほど気にした風もなかったが、クローディアが書斎に顔を出したのだった。

 寝椅子に横になっているランドリューにクローディアが近付いてその顔を覗き込む。

「貴方……本当に起き上がれもしないほど体調が? お医者様をお呼びする?」
「良い、構わぬ。しばらくひとりにしてくれないか。グイードなどにそこまで義理を立てることもあるまい」

 気が向けばふらっと現れ、他愛もない話をして秘蔵の酒を飲んでいく気の置けぬ仲の間柄である。ランドリューにとっては親友とも悪友ともいえる存在であったが、それだけに気を使う理由も感じられないのだ。

「もう、そんなこと言って。殿方の友情とはそういうものなのかもしれませんけれど……」

 クローディアは呆れたように息を吐く。

「では、私がグイード様とふたりきりで晩餐を?」

 ランドリューの眉根が寄った。

「騎士仲間同士、積もる話もあろう」
「拗ねていらっしゃるの? 私が……本当のことを隠していたから」

 クローディアにも負い目はある。眉を下げて困ったように笑うと、ランドリューの眉間の皺をツンとつついた。

「違う、君が悪いわけではないんだ。ただ……あぁ、私が、狭量で」

 親友と愛する妻の間に、よからぬ妄想を走らせてあまつさえ果てたのだ。あまりにも罪深く、どんな顔をして会えば良いというのかわからない、というのが本音だった。

「また……なにかよからぬことを考えていたのではないでしょうね!?」

 クローディアも存外に聡いところがある。確信を突いたその言葉に、ランドリューはぐっと詰まった。

「呆れたひと。……もういいわ、さぁ立って! 夕食の時間よ。貴方の懺悔なら夜にたっぷり聞いてあげるから」

 クローディアはランドリューの腕を取り、ぐいと引っ張った。渋々のていで身を起こすと、ランドリューは刑場に引きずり出される囚人のような気持ちで食堂へと赴くのだった。

――

 クローディアの黒表紙の本を持つ手が震えている。文字を読みながら眉を顰め、赤くなったり唇を噛みしめたりとその表情は忙しない。

 ランドリューは黙っていた。最終審判を待つ囚人の如き心持ちは継続している。

「なんということを……」

 クローディアの唇からこぼれ落ちた声は、冷たく低い。

 ランドリューは胃の腑から冷えていくようで、手を祈りの形に組み合わせると項垂れて目を閉じた。

「貴方……」

 ランドリューの肩がびくりと震える。
 クローディアの手がその肩に触れた。

「顔を上げてくださいな」
「……し、しかし」

 上げたくとも上げられない。すっかり挫け、恐れていた。今度こそ幻滅されたのではないか、という思いに。

「良いから、顔を上げて」

 クローディアの言葉は静かだが強い。有無を言わさぬ何かがあった。
 ランドリューは弾かれたように顔を上げる。

「淫らで、はしたないクローディアがお好き? それとも、クロードが良かった?」

 ランドリューの目元のほくろを親指で撫でて、クローディアが微笑む。嫣然と。

「あ、いや……そんなことは」
「お願いします、宰相閣下。伯爵様。どうか、私の秘密を誰にも黙っていてください……なんでも、致しますから」

 クローディアが、ランドリューの耳元で囁くように言った。それから、座り込むランドリューの膝の間に跪き、ズボンの前を寛げる。

「な、なにを……クローディア!?」
「“クロード”と、そうお呼びください、閣下。どうか」

 クローディアが下履きの中に押し込まれていたランドリューのそれを引っ張り出す。

「おや、もう……少し硬くなっておいでですね、閣下。期待されておりましたか? 私に、こうされるのを……」

 クローディアの唇が、ランドリューの欲望の先端に軽く口付けする。

「ぅあっ……!」

 グッ、とランドリューのソレが硬さを増し、唇を跳ね返すように聳り立った。

「閣下も、存外にスキモノでいらっしゃる」

 ふ、と揶揄するように笑うクローディアの上目遣いと、チロ、と覗く赤い舌が先端を舐める姿に、ランドリューはますます己が昂っていくのを自覚させられた。

 クローディアの手が優しく竿を握り、ゆっくりと上下に動かす。ちゅ、ちゅう、と先に吸い付き、にゅるにゅると舌を動かしては舐め回す。

「あっ……ぅ、う、く、クローディア」

 カリ、と敏感な場所に走る痛みにランドリューの目が見開いた。

「“クロード”……と、お呼びください、閣下」
「あ、ぐ、ぅ……く、クロー……ド」

 ゾワゾワと、腰の辺りから駆け上がっていくえもいわれぬ感覚に、ランドリューは恐怖を覚えた。

 足の間で、黒く短い癖毛が蠢いて、己の昂りを咥え込み舌と手を使って高めていく。

 奇妙に倒錯的な心地に襲われて、恐れと共にランドリューは確かな官能を覚えてもいた。

「閣下、気持ちいいですか? ちょっと、お汁がこぼれてきましたね……、閣下は、こういうのがお好きでございましたか」

 くちゅ、くちゅ、と、溢れてきた先走りの透明な液を指に絡めてなお扱く。

 揶揄のような言葉で指摘され、ランドリューは自尊心を嬲られているように思えた。無礼者、と叱り飛ばすべきだと理性が叫ぶ。

「閣下……そんなに気持ちよさそうなお顔をなさって。お可愛らしいことですね」

 ぎゅっときつく眉を寄せ、奥歯を噛み締めて堪える顔をそう言われては、カッと熱が高まり赤くなる。

「あ、……くっ!」

 何かを言おうと口を開いたら最後、ただ感じるままに声が出そうで一層強く引き絞った。

 あぁん、と口を開け、熱い口腔が昂りを咥え込む。絡み付く舌にねぶられ吸われ、ぐちゅぐちゅと鼓膜に響く水音に。

「あ、ぁっ、あぁっ……!」

 ドクンッと脈打ち、膨れ上がり、溢れ出たモノがクローディアの口の中に広がっていった。

「んっ、ぅ……」

 ちゅ、ぱ、と口を離し、クローディアは自らの手でその口をおさえて。顔をぎゅっと顰めて飲み込んだ。

「けほっ……ぅ」
「く、くろ……」

 その名を呼ぼうと口を開きかけて、ランドリューは躊躇った。

「うぇ。にがぃ」

 涙目でランドリューを見上げるクローディアに。

「す、すまぬっ!」

 思わず、謝り慣れていない男にしてはすんなりと口から出た。
 跪くクローディアの手を取り、引き上げて抱き寄せる。

「白くて、ミルクみたいだから、甘いんじゃないかと思ったのに」
「莫迦な」

 本気で言っているのか、冗談なのか判じ兼ねて呟いた。

「ばかだなんてひどい!」

 ランドリューは神妙な顔をして、クローディアの顔を覗き込む。

「うむ。……クローディア、と、呼んでも良いな?」
「あ、えぇ、もちろんです。えぇ、閣下?」

 にこりと微笑むクローディアの、やはり揶揄を含んだような物言いに。ランドリューは口付けして、じろりと睨む。

「怖い顔、なさらないでくださいな。貴方。ね、でも、良かったでしょう?」

 ちゅ、と眉間の皺に口付けしながらクローディアがいたずらっぽく笑った。

「う……。クローディア、はしたない君も、とても良い……」

 観念したように、ランドリューは頷くと、もう一度深く口付けをした。
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