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おぞましき陵辱

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ふ、と頭上に影のような靄が浮かぶ。そこからポトポトポトと何かが雨のように降り注いだ。
「うっ、ぁ、な、なにを……! ひッ!?」
 降り注いだそれは、ぬちゃ、とクローヴェルの頭に額に、うなじに顔にとくっついて、ぬるぬると這い回る。
 小さな、ヒルのようなモノが、無数に降り注いで蠢きながら、次々とクローヴェルに取り付いていった。
「な、なんだ……」
「俺の、可愛い可愛い眷属どもさ……下等生物でな……人間の、高い体温が大好きでなァ」
 クローヴェルの服の隙間から入り込んだヒルのようなモノたちが、素肌の上をぬるぬると這い回る。
 小さな無数の吸盤のようなモノがちくちくと肌を抓るような刺すような、微細な刺激を与えて。
「んっ、ぁ……はぁ……ぁンッ!?」
 ヒルのいくつかが、クローヴェルの胸の突端にちゅうちゅうと吸い付いていく。
 くにゅくにゅと敏感な所に間断なく与えられる刺激に、クローヴェルの体が跳ねた。
「これで言い訳はたったか? 特別サービスだぜ、司祭様よぉ……くく、さて、しばらく……見ていようか?」
 クローヴェルのそそり立つモノを踏みにじっていた爪先がするりと離れていく。
 掴んでいた髪も離し、悪魔は一歩退いたところで足を組んで座った。
「ぁ、な、なんのつもりだ……!?」
「なんの……? ……くく、なんだ。やっぱり足で踏んで気持ち良くして欲しかったか?ならちゃんとおねだりしろ、やってやるぞ」
 爪先を伸ばしてクローヴェルの鼻先に突きつけると、悪魔はニヤニヤとまた笑う。
 クローヴェルはといえば、どこかショックを受けたような顔で言葉を失ったように黙り込んだ。 
 その表情に気をよくしたように、悪魔は喉の奥をクルクルと鳴らして。パチン、とまた指を鳴らした。シュルシュルと魔力を編んだ輪っかがクローヴェルの手を後ろ手に締め上げていく。
「っ……ぐ、ぅ……な、なにを……ぁぅ!」 腕を後ろにいましめられたことで開いた胸元に、ヒルたちがにゅむにゅむと集まっていく。
 既に二つの先端には幾つものヒルが取り付いてちゅうちゅうと啜り、新しいモノが無理矢理に割り込むたびにぺりりと剥がれて新しい刺激をクローヴェルに与えた。
「はっ、ぁ……んぅ、や、やめ……っあ、あぁ! み、みてない、で……こ、これを、はやく、とっ……んぁあ”」
 脇に入り込み皮膚の薄い部分に噛み付く気配が、ぞわぞわと肌を粟立たせるよう。
 堪えがたいというようにクローヴェルの口から声が漏れる。
 苦しげに背を丸め、快楽めいた刺激を逃がそうとして。
「くく、見てないで……はやく……ん? なんだ、よく聞こえんなァ」
 悪魔は相変わらずニヤニヤ笑って、その様子を見物していた。その視線に、クローヴェルは苛立たしげに眉を寄せる。
 更なる文句を繋ごうとした口は、しかし、
「ん、ぁあッ……!」
 這い回るヒルが昂ぶりそそり立つモノの先に吸い付いたことで嬌声にかき消される。
 ちぅ、ちぅぅう……、と先端に吸い付いた黒くぬめるヒルが、滲み出る汁をまるで甘い蜜でも見つけたかのように啜り出す。
 ほかのヒルたちも仲間の歓喜に気付いたか、クローヴェルの体の上を這いずりながら熱の集まり昂ぶるその一点へと押し寄せた。
「っぅあ、あ、ぁあ……! だ、ゃ……ぁあっ……ゃめ……ひっ」
 昂ぶりに集うヒルたちが、好き勝手に纏わり付く。震え脈打つその竿に巻き付いて、くにゅくにゅにゅるにゅると敏感な裏筋を揉みしだかれているような感覚にクローヴェルの体が大きく揺れた。
 目を見開き、絶え間なく与えられるもどかしい刺激に苦しげな声が漏れる。
 ジワジワと滲み出る汁に吸い付いたヒルが、もっとそれを味わおうとでもいうように切れ目にぐにぐにと頭部を押しつけ、身を細くして中へと入り込もうとしていく。
 きゅぅきゅぅと敏感な昂ぶりに吸盤が吸い付く刺激は、しかし吐き出すこともできないまま入り込んだヒルによって啜り出されるばかりで。
「ぁっ……ぐ、ぁが、ぁ、ぁあ……っっっふ、ぅう!」
 喉首をのけぞらせ、喉仏を震わせながらクローヴェルの声が溢れ出る。
 後ろ手にいましめられて、吸い付くヒルどもを払うこともできず、もどかしいばかりの刺激に理性が少しずつ焼き切れていくかのようなその姿が。
 教会のステンドグラス越し、差し込む月明かりで浮かび上がった。
 物言わぬ女神像が、司祭のあられもない姿を見下ろしている。
「ふ、くく……どうした、どうしたんだァ司祭様? 下等な魔性の眷属にたかられて気持ち良くおなりかよぉ。女神様が見ているってのに、随分と浅ましいことだなァ」
 愉悦を隠しもしない悪魔の嘲弄に、クローヴェルはまたも目を見開く。
 思わず振り返り仰ぐ女神像が、その眼差しが、まるで己を責め苛んでいるように思われてどうしようもない屈辱と羞恥をクローヴェルに齎した。
「はっ、ぁ、ぁ……主よ、敬すべき慈悲の女神よ……お許しを……お許し、を……っあぅ!」
 蹲り背を丸め、床に額を擦りつけるようにして懺悔めいた言葉を吐き出すクローヴェルの、その体を尚もヒルは這い回っていく。
 熱の集まる前にはすでに多くのヒルがたかっているからか、そこを取り逃したものたちが新天地を探しているかのようだった。
 そうして一匹のヒルが、にゅるりと新たな熱源へと至る。
「っっひ……ぁあ! いや、いやだ、やめ……いやだ、そこはッ」
 ぬち、ぬちゅ、粘液を纏いぬるぬると蠢くヒルが、クローヴェルの閉じられた後孔へと辿り着く。
 その先に感じられる熱を求めるように頭をねじ込ませていく。
 クローヴェルの体がびくりと大きく震え、しなり、恐れるように体を揺さぶった。
 前に後ろにと取り付くヒルたちを振り払おうと、腰を突き上げ左右に振る。
 ぴとりと吸盤で張り付いたヒルたちは、突然の大きな振動に振り払われまいとでもするかのようにぎゅむとかじりつき、吸盤が皮膚を摘む力が強まって、逆にクローヴェルを追い立てていった。
「ぁあ、ぁ、や……ぃ、ぁ……ひぃッ」
 そうしているうちにも、にちゅ、にちゅ、とぬるつくヒルの頭が後ろをこじ開け、入り込んでいく。
 無理矢理に割り開かれ、それでいて痛みよりもピリピリとした奇妙に痺れる甘やかさに、クローヴェルの足腰からじわじわと力が抜けていった。
 月光の下、黒くぬめるヒルに取り付かれ、腰を高く突き上げて揺らす司祭のその姿は、悪魔の目からすればただひたすらに滑稽で、憐れで、そして扇情的ですらある。
 黒くぬめるヒルが、無理矢理にこじ開けた後孔にぐにゅぐにゅと押し入り、身をよじり、狭い中を押し広げながら体を滑り込ませていく。
 そうして一匹が入り込んでしまうと、ひくひくと孔はひくつき震えて、ヒルが持つ粘液に濡れて妖しくテラテラと煌めきさえした。  
 ひくつく孔はいっそ物欲しげですらあり、開かれたそこに次々にヒルが身をねじ込み入り込んでいく。
「ぅ、ぁ、ひぁあ……ぁンッ……んぅ!!」  
 ガクガクと細い腰を揺らし、震わせ、必死に頭を振りながら喘ぐ声を吐き出す司祭の姿に、悪魔は笑った。
 にゅぷ、にゅぷ、と後ろの孔に入り込むヒルは、先に入り込んだもので渋滞して押し出され、もう一度と頭を押し込み、出たり入ったりを繰り返す。
 その抜き差しの感覚が司祭の体に電流めいた刺激となって走り抜けているようだった。
 前に取り付くヒルたちが先端から汁を啜り、後ろに入り込んだヒルたちが中から良い所を刺激する。
 抗いようのない、止め処なく与えられる快楽に、司祭の体は震えて揺れていた。
「すっかり蕩けちまったねぇ、司祭様よぉ。いいのかねぇ、女神様の御前でそんなはしたない顔晒してさァ。あぁ、もっとはしたない下半身のほうが問題か? くくッ」
 悪魔は、揶揄の声で笑うと、突き出され高く持ち上げられたクローヴェルの肉付きの薄い尻をすりりと足の裏で撫で上げる。
「っあ、ぅ……!」
 今やどのように些細な刺激も毒なのだと言わんばかりに、クローヴェルの喉が震え、体が揺れた。
 ぴりぴりと甘い痺れが体を駆け巡ってクローヴェルを支配していくのだ。
「だらしないねぇ……敬愛する神様の御前だぞ、もうちょっと頑張って感じてないふりしてみろよ。くく、ま、できないよなァ……」「っぅ、あ、ぐ……ち、ちが、ぁ……か、感じて、など……んぅ! ……ぁ、く、ぁあッッいや、やだ、そこ……そこ、ぁ! あく、ま……も、もう、頼む、や、やめさせ……んぁああッッ」
 強がりを吐いても、すぐさま堪えきれない快楽の波に呑まれ、嬌声に言葉がかき消される。
 クローヴェルのその様子が、おかしくてたまらないというように悪魔は肩を揺らし、すりり、すりすり、と相変わらず足裏で尻を撫で腰を撫で、ぬぷりと押し出されたヒルが再び中に入るのを手伝ってぎゅううと押し込んでいく。
 クローヴェルの腰はビクビクと小刻みに震え、延々と電流を流されているかのように微振動を続けていた。
「司祭……、やめさせて欲しければ、こう言うんだ……。偉大なる悪魔様、私のいやらしい体に這い回るヒルを取り出して、代わりに貴方様の逞しく雄々しいモノをぶち込んで下さいませ……って、なァ」
「なッ……」
 悪魔の言葉に、クローヴェルは真実言葉を失ったようだった。
「そ、そんなこと……言うわけ……んぁあ!」
 ハッとして拒絶の言葉を継ごうとして、ぐちゅりと押し込まれたヒルに嬌声が漏れる。 
 間断なく訪れるさざ波のような快感に震え、クローヴェルの目からは涙すら溢れていた。 
 それが生理的なものか、恥辱によるもののためなのかは、本人にも悪魔にもわからなかったが。
「言わなきゃそのまま、そうだな……いつまでも終わらない無限の快楽。朝まで。朝が来ても、か……するとどうなるかねぇ。朝一番、教会にやってきた信徒が、神の御前で淫らに腰を振る司祭様を目撃するって訳だ。ひひはッ! そいつもいい、みものだねぇ……!」 
 さも愉しげに笑う悪魔の言葉に、しかしクローヴェルの方は一気に血の気の失せる思いがした。
(あ、ばかな……そんなこと……せ、セレミア……っ)
 朝一番にやってくるのは、茶の髪の素朴な娘。
 教会の掃除や細々したことをやってくれる、記憶喪失の彼女だ。
 なにも覚えていない娘にとって、自分こそが唯一頼れる存在であろう、とクローヴェルは思っていた。そんな頼るべき者が、こんな痴態を晒すなど。
 そうでなくても、年頃の娘にこんな姿を見られることは耐え難かった。
 クローヴェルの内に強い葛藤が生じる。
 このままではいられない、いたくない。
 しかし、悪魔の言った通りにするのも嫌だった。そもそもあの逞しいモノを突き込まれたら壊れてしまうのではないか? としか思えない。
 純粋な嫌悪感と恐怖感が、クローヴェルを躊躇わせる。
 悪魔は、その葛藤すらも愉しんでいるようだった。
「ん、っあ……ひぅ……!」
 そうして悩む時間が長ければ長いほど、ヒルたちが責め苛む時間もまた延びていく。ぐつぐつと思考が千々に乱れ、クローヴェルの理性を蕩けさせていくようなおぞましいまでの快感。
(ぁ、いやだ……もう、はやく、楽に……)
 楽になりたい。それこそが最も強く確かな願いですらあった。延々と与えられる快楽は苦痛にも似て、恥辱と背徳がクローヴェルの心を痛めつけていくのだから。
 唇をぎゅっと噛み、きつく目を閉じる。溢れる涙がなにによってなのかはわからないまま。
 やがて、震える息と共にクローヴェルは口を開いた。
「ぁ……い、偉大な、る……悪、魔様……、ぅ……、ぐ、……っ私のっ、ぃ、いやらしい体に、……這い回る、ヒルを……取り出して、……ぁ、か、……っ」
 ぐ、と息が詰まる。視界が赤く明滅する。怒りと恥辱とで煮えたぎる。にも関わらず自身ではどうすることもできず、なおも蠢くヒルたちに体をいいようにされて、どうしようもなく確かに感じている。
 クローヴェルは、更に続けた。
「代わりに……貴方、様の……逞しくっ、雄々しい……モノを、……ぶち……込んで下さい……ま、せ……」
 悔し涙だろうか、高い鼻筋を伝う涙がはらはらと流れ落ちて床を濡らす。
 血反吐を吐きそうなほどに無理矢理に絞り出された声。実際、口の端からは微かに血も滲んでいた。
「く、くく……くくく……ひぁーははは! よくできましたァ……!」
 悪魔の哄笑が、教会の高い天井に響き渡り、ステンドグラスを震わせた。
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