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テン族の誠意※
しおりを挟むシュシュリは戸惑っていた。
夜伽のための貢物としてテン族から差し出された、とはいうものの。
閨に至ればすぐさま刃を突き付けるつもりで、実際そうした。
まさかこんな展開になるなど、想像だにしていなかった。
絹織りの羽織りの帯を解きながらもこの後どうするべきか、シュシュリの脳内は激しく空転する。
この時、シュシュリはある意味隙だらけだった。そのことにハッと気付いて、シュシュリはまたぞろ混乱した。
燕白は、隙だらけのシュシュリを前にして何も行動するそぶりを見せなかったのだ。
ほんの一瞬とはいえ、その隙に刃を奪い取ることも、駆け出して助けを呼びに行くこともしようと思えばできたはずだ。
「なぜ……なにもしない? 今の隙に、なにかはできたはずだ」
思わずそう問うてしまってから、シュシュリはしまったと思った。
燕白は、不可解そうな顔をする。
「仮に……わしが刃を奪ってそなたに向かってもおそらく返り討ちだ。わしは武の心得がない。また、大声で助けを呼ばわれば……衛士は集まるだろうが、わしはそなたに殺されるかもしれん。そなたが無事逃げ延びられるか、捕まるかまではしれんが……テン族からの貢物に刺客の紛れていたことはすぐに知れる。未来は大して変わるまいよ」
燕白の答えは、冷静とも言えたし諦念の極みとも言えた。
「で、あるならば……! そなたのような美しいおなごとまぐわい、最期の手向けにする方が良い」
にま、と笑う顔は好色だ。
思わず引っ叩いてやりたい衝動に駆られながらも、シュシュリは溜息を吐いてそれをやり過ごした。
「腕を後ろに回せ。ギチギチに縛っておいてやるからな」
シュシュリは燕白を後ろ手に縛り、その体を寝台に押し倒した。
その上に乗り上げながら、ばさりと絹の寝巻きを脱ぎ落とす。
燕白は、武の心得がないというその言葉そのままに、確かに貧相そのものな体付きだった。猫背で撫で肩、胸板も薄く筋肉のきの字もない。
対して、シュシュリの無駄のないよく鍛えられた瑞々しい身体が露わになる。
燕白は、それを見上げてごくりと唾を飲み込んだ。
「美しい……」
「っ……どこが。よく見ろ。傷だらけの、柔らかさもなにもない体だぞ」
シュシュリは戦士だ。そのことに誇りはあった。しかし、戦士であるということは、女を捨てるということにも等しい。
テン族の中でもわざわざ戦士を目指すような女は、嫁の貰い手のない跳ねっ返りとして扱われる。
「わしには美しく見えるさ。しなやかに伸びた長い手足、引き締まって無駄のない身体……張りのある乳房も」
「も、もういい! 黙れ……! 貴様がとんだ軟弱者のうえに好色なのはよくわかった」
シュシュリはつい手のひらでばちっと燕白の口を塞いだ。
ただの色好みの男の口先だけのことと思いながらも、顔がカッと熱くなる。
言われたこともない賞賛の数々に、ひどく狼狽えてしまった。
「そなたの周りの男どもは……どうやらよほど見る目がないらしい。……シュシュリ、わしはどうせ間もなく死ぬ身だからな。怖いものもないし、恥ずかしがることもない……思う様、美しいそなたの身体に溺れたい」
燕白の舌が、ぬるりとシュシュリの手のひらを這った。
ぞわっ、と鳥肌が立ち、シュシュリは急いで手を引く。
ギッと睨み付けるシュシュリのきつい眼差しにも、燕白はどこ吹く風とばかりにヘラヘラと笑った。
「テン族の誠意は……?」
「円華の男は卑怯者だな」
シュシュリの声は微かに拗ねたようなものになる。
燕白は巧妙にシュシュリの痛いところを突いてくる。
やると言ったからにはやりきらなければならない。しかし、シュシュリにはこうしたことの経験がそもそもなかった。ぐ、とほぞを噛む。
(こんなことなら……ヨエに手解きでも受けておくのだった……)
相棒の男の顔がシュシュリの脳裏を過ぎる。
あれも好色な男で、その手の経験は豊富だった。
貢物の夜伽の巫女の替え玉として成り代わると決めた時、ヨエはシュシュリに冗談まじりに言ったのだ。
「俺が手解きしてやろうかシュシュリ」と。
当然ながら断った。それをシュシュリは今更後悔している。
後ろ手に縛った男の上に裸で跨ったまでは良いものの、この後なにをどうすればいいのちっととかわからなかったのだ。
「それで……どう誠意を示してくれるのかね?」
「……う、うるさい。そもそも、命の危険を前にして、役に立つのか……貴様のそれは!」
立つものもなければなにもしようがないのでは? と思ったシュシュリがそう言い放つ。
そうあってくれと願うシュシュリの希望を打ち砕くように、燕白はひくりと喉を震わせて笑った。
「役に立ちそうかどうか、見てみるかね? それとも触ってくれるか。男というものは、危機に瀕するほど高まるものとはよく言ったものでなぁ」
燕白の挑発じみた物言い。だがそれは、同時にシュシュリにとって助け舟にも思えた。
まさか、という気持ちもあったが、そろりと寝間着の帯を解いて合わせ目を広げる。
果たしてそこに、天突くが如く屹立したモノが確かにあった。
シュシュリは思わず息を呑む。
男のそんなものをまじまじと目の当たりにしたことなどないのだ。
「シュシュリ……わしは自由を奪われて何もできんのだ。そなたがしてくれねば」
「わ、わかっている……! わかっ、て……」
「触ってくれるか。そなたの、その手で。触れて、包み込み、扱いてみてくれ」
シュシュリは、困惑とも羞恥ともわからない混沌とした感情に支配されていた。
燕白の言うがままに、そろそろと手を伸ばし触れてみる。手のひらに、初めての感触が広がる。
硬い。なのに柔らかい。ふにふにと弾力があり、意外にもすべすべと滑らか。
両手で捧げ持つように包み込みながら、シュシュリはそっとその手を上下に動かしてみた。
「ん……ぁあ、いい……良い、ぞ。シュシュリ……」
燕白の屹立は、上下に扱くごとにより硬さを増し、太さを増し、先端からじわりと透明な汁が滲んでいく。
ぎゅ、と寄っていく燕白の眉根と、目尻に差す朱色に、そしてなにより雄弁な怒張に、シュシュリは微かに安堵を覚える。
「シュシュリ……その汁を指に絡めて……もっと、すべりを、よく……してくれ」
「わ、……わかっ、てる! い、言われずともっ」
おそらくバレている。
燕白に。
シュシュリにはこうしたことの経験どころか知識すらもさほどないことが。
しかし何をどうすれば良いのか、聞くのも悔しく躊躇われていたなか、明確な指示は助かるものだった。
シュシュリの咄嗟の反駁に、燕白は眉をかすかに寄せて口角を持ち上げた。苦笑めいたその表情に、シュシュリの羞恥が増す。
「し、知っている……! 男が、なにをどうされたらイイかくらい……」
「ぅっ……ぐ! ぁ、ぁあ、知っててくれるのは、実に良い、良いが……っ、に、握り潰すのはやめてくれ!」
「……あ、す、すまん」
思わず力が篭りすぎた手を緩める。
燕白の怒張はしかし、一層きつく張り詰め、どろりと先より多く汁を滲ませた。
「シュシュリ……何をどうしたら男が悦ぶか、よく知っているのなら……この後もわかろうな」
シュシュリは、燕白の言葉に動揺した。
おそらく、燕白の言いたいのは……。
「わ、わかっている。誠意だ……わかって……い、る……」
昂りを見て。しかしシュシュリは震えた。
燕白のモノは、シュシュリが想像していたよりも立派だった。
男のイチモツを、女の中に入れる。
知識としてはあった。
初めては痛いとも聞く。
自分の中に、この男のモノを招き入れねばならない。
できるのか。
シュシュリは、強張っていく手で、燕白のモノを包む。
「シュシュリ……わしにも、そなたを味わわせてくれんか」
「え……?」
シュシュリは思わず燕白を見た。
「怪しいと思えば、すぐにも掻っ切ってくれて良い。だから……」
そこに腰を下ろして脚を開いてくれ。
と、燕白は言った。
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