上 下
90 / 92

80話 古代竜の目覚め(side:アレク、ヴィクトリア)

しおりを挟む


― アレク視点 ―


「リアッー!!!!!」


ジェフリーに投げ飛ばされて魔法陣の中へヴィクトリアが吸い込まれていく。未だに俺の腕を掴んでいるクララを乱暴に振りほどき、魔法陣へと走り寄り俺も中へと飛び込もうとしたが、見えない壁に阻まれて中へ入ることができない。

「ハッ、ハハハハハッ!!これで古代竜が復活するんだ!!」

「っ!!貴様!!!!」

近くにいたジェフリーを怒り感情と共に殴り飛ばした。どうにか中に入れないかと体当たりをするがビクともしない。

「クソッ、どうすりゃいいんだ。…いや、待てよ。」

そういえば、ヴィクトリアの近くにリュウがいたはず、辺りを見回すがリュウの姿が見えない。
もしかしてあの時、リュウも一緒に魔法陣へと入ったのか?
アレクの中で僅かな希望が見えてきた。

「アレクさまぁ~、突き飛ばすなんて、酷いです~。」

また、あの女が性懲りもなく俺に腕を絡ませてきた。

「ジェフリー、そしてクララ。お前達を捕縛させてもらう。もう、いいぞ、出てこい。こいつらを捕縛せよ!魔術師達も一人残らずだ!!」

木の陰に隠れていた部下達が一斉に飛び出してきた。クララに気づかれぬように部下達は距離を置いて俺の後をずっとついてきていた。

「何でよ!なんで私がこんなことになるのよ!!」

取り押さえようとする騎士に激しく抵抗して俺を睨みつけた。

「そんなこともわからないのか?お前達は二人で共謀してヴィクトリアを禁忌とされる古代竜の生贄にしようとした。立派な殺人未遂だ。そして、古代竜の復活を企てた国家転覆罪も適用されるな。後はリアに冤罪を着せようとしたのもあったな。」

「おい!いいのか、クララがいないと古代竜が復活した後にこの国は大変なことになるぞ!!」

ジェフリーもまた、騎士達に押さえつけられながら大声を上げた。

「それなら問題ない。の聖女がもうすぐここに来るからな。」

「は?何を馬鹿な!!」

「何を言っているのよ!本物の聖女は私なのよ!!」

俺の言葉を聞いた二人はより一層、ギャーギャーと騒ぎ出した。



「あらあら、ずいぶんと賑やかね。何か楽しい事でもあったのかしら?」

おっとりとした声が聞こえたかと思うと、年配の男女がゆっくりとアレク達の元へと歩いてきた。

「エマ様、ご足労おかけして申し訳ございません。」

「いいのよ~。こうなるじゃないかと思っていたわ。」

「おいっ、なんだこのババ…ぐふっ!!」

ジェフリーが『ババア』と言いかけようとして思いっ切り、夫であるアンドリューに顔を踏みつけられた。

「お前たちに教えてやる。この方が現在の聖女様だ。」

「なっ!?」

「そんなわけあるわけない!聖女は私よっ!!」

アレクの言葉にジェフリーが絶句し、クララは物凄い形相で食って掛かった。

「エマ様、ヴィクトリアが魔法陣の中に…。リュウも一緒らしいのですが、助けることはできますか?」

そんなクララ達の反応を無視して、アレクはエマにヴィクトリア状況を説明する。

「あら?リュウちゃんも一緒なら、大丈夫よ。だってあの子は……。」

その後のエマの言葉にその場にいる者が皆、仰天したのだった。






― ヴィクトリア視点 ―


(りあ、だいじょうぶ?)

目も開けられないような眩しい光の中でリュウの声が聞こえた。

「リュウ、あなたも一緒に来ちゃったの?」

(うん!だって、あんじゅとあれくにやくそくしたもん。りあをまもるって。)

体はどんどん下へとゆっくりと落ちていくような感覚だ。リュウが胸のあたりにそっと乗ったのを感じて両腕でやさしく抱きしめた。


『我を起こすとは何者かと思えば、愛しの我が子が会いに来てくれたのかの?』


突然、威厳のある声が響き渡った。

「え?愛しの我が子??」

恐る恐るヴィクトリアが目を開けるとそこには1匹の巨大な白い竜がこちらの覗き込むように横たわっていた。ヴィクトリアはいつの間にか地面に座っていた。

(やっぱり、おかあさまだったんだね!!なんだかそんなきがしたんだ。)

リュウがヴィクトリアの胸から飛び出してその竜の前へと飛んでいった。

『おお!我が子よ。大きくなったではないか。其方を聖女に預けたときはまだ卵だったのでな。うむ、私に似て、凛々しい顔つきをしておる。』

(えへへ。ぼくもね、おかあさまにあいたかった。)

竜の大きな頬にリュウが額を擦りつける様子をヴィクトリアは微笑ましく眺めていた。

『さて、そこにいる人間の娘よ。どうやら、聖女の血筋のようだが、なぜこのような乱暴なやり方で我を目覚めさせようとしたのじゃ。』

「申し訳ございません。古代竜様。良からぬ人間の仕業で私は生贄としてここに来させられたのです。決して私が古代竜様の眠りを妨げようとしたわけじゃありません。」

『…いつの時代も馬鹿な考えをする者がいるものじゃ。ところで、リュウは使役の契約を結んでいるようじゃが。契約主を知っておるか?』

「それは…。その。」

リュウをテイムしたのはアレクだが、それを正直に言ってもいいのだろうかとヴィクトリアは言い淀んでしまった。

『いやいや、我は怒っているのではない。子供とはいえ、竜を手名付けるほどの人間は誰か気になってな。』

(あれくはいいやつだよ!おいしいものいっぱいくれる!!)

「……リュウの契約主はこの国の第一王子のアレックス殿下です。」

ヴィクトリアは正直に話すことにした。この竜なら悪いことにはならないだろう。

(りあは、あれくのおよめさんだよ!!)

「こらっ!リュウ。まだお嫁さんにはなってないわよ!!」

リュウが飛んでもないことを言い出して慌てて訂正する。

『ああ、なるほど。先ほどより地上からお主らの事を案じている者がおるな。…ほう、聖女も来ておるではないか。ふむ、ならば少しの間だけでも、聖女とそのアレックスとやらに会いに行くか。娘、我の背中に乗るがよい。』

「は、はい!」

ヴィクトリアはリュウと共に古代竜の上に乗って鬣に掴まる。それと同時に古代竜が上へと飛び始めた。


しおりを挟む
感想 186

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

全てが終わったBADEND後の乙女ゲーム転生で反逆いたします

高梨
恋愛
 乙女ゲームの転生……。一部の人が夢にみる転生が自分の身に起こった……のだが、こんな世紀末感ただよう乙女ゲームなんて私は知らない。見たくない、聞きたくない、お家に返して。  【輪廻とロンドの果て】魔法のある中世ファンタジーの乙女ゲームの……悪役ライバルに主人公も攻略対象も負け、悪役ライバルが舞台【アンドール大国】の女王となり、世界を悪い方向に統一してしまった未来を迎えたBADEND世界の……悪役ライバルの孫に転生してしまった【大橋 賽(おおばし さい】 現在の悪役の息子の国王も……目も当てられぬさま。  こんな世界にしたご本人は甘い汁をチューチュー吸ったまま死んだけれども、孫に転生させられた私は様々な嫌悪に当てられて……。誰がどう見ても革命なり反乱なりが怒ることが分かるので、殺されないために私が国に反逆致します。けど、おかしい? 私はあの悪役の血を引いているのにもかかわらずに皆の好感度が階段飛びに上がってゆく……。  条件付きのチートを宿し、今……殺伐としたBADENDの先へ降り立ちます。 【アナタハ 実の両親ヨリモ 愛ヲ 取リマスカ?】

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。 「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。 しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。 これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。

処理中です...