83 / 92
74話 ヴィクトリアの失踪(side:アレク)
しおりを挟む「こいつはぶったまげたな……。」
マーカスが呟いているのが聞こえた。アレクも信じられないような光景に言葉を失う。
目の前に迫っていた魔物の大群が一瞬で消えてしまったのだ。
「ね?言ったでしょう?私ならできるって……あっ。」
クララは笑っているが力を大量に使った為か顔色が悪く言っている途中で体がフラついたので思わず支えてやる。
「大丈夫か?」
「はい、疲れただけです。少しだけアレク様の胸を貸していただけますか?」
そう言ってクララはアレクへとしなだれかかった。
「すぐに馬車を用意させます。クララ嬢はそれに乗ってお帰り下さい。俺は後処理が残っていますので。」
アレクは眉間にしわを寄せてしなだれかかったクララの肩を掴んで己から引き剝がした。
馬車を呼ばせようと周りを見たらロイが慌てたように走ってくるのが見えた。
「アレク!大変だ!!王宮から早馬が来た。…ヴィクトリア嬢がいなくなったそうだ。」
「なんだとっ!?」
「それに、アルフレッド殿下の居場所もわからないらしい。…アルフレッド様についてはお一人でマーガレット嬢を探しに行かれたのかもしれないが……。」
アレクが王宮からいなくなった途端に二人が一気にいなくなったのは誰かが意図的に行ったに違いない。
「アレク。ここはワシがやるからお前はヴィクトリア嬢を探しに行け。」
ここまで成り行きを見ていたマーカスが口を開いた。
「しかし……。」
「ここは大丈夫だ。それより早く探してやれ。」
「…わかりました、後はお願いします。ロイ、馬車を用意して………?」
マーカス団長の好意を素直に受け取ることにして、クララの為に馬車を用意させようとしたらそのクララが俺の腕を引っ張った。
「私も一緒にヴィクトリアさんを探しに行きます!」
「駄目だ。」
「お願いです!!」
「クララ嬢はさっきので疲れているのでしょう?今日はお帰りになってゆっくり休んでください。」
「私は大丈夫です!それに友達のヴィクトリアさんがいなくなったと聞いてじっとはしていられません。それに……私、心当たりがあるのです。」
「なんだと!?それはどこだ!!」
思わず我を忘れてクララに詰め寄った。
「い、言いません!私を連れていくのなら教えます。」
「チッ。」
クララは俺の剣幕に怯えたように見せるが頑なに連れて行けと言う。
くそっ、どうすりゃいいんだ!!
「まあまあ、アレク団長。ここはクララ嬢の言うとおりに彼女を連れて心当たりがあるというところに行きましょう。ここで言い争いしていても何にもなりませんよ。」
ロイが俺たちの間に割って入ってきた。
ふぅ…。俺としたことが冷静さに欠けていたようだ。ロイに窘められるとはな。
俺は大きく息を吐いて苛立った気持ちを落ち着けさせた。
「わかった。ではクララ嬢、心当たりがあるという場所へ案内してもらえるか?」
「はい!」
クララは嬉しそうに返事をした。
「では、さっそく馬車を用意させます。俺も一緒に行きますので。」
「あの、どうしても副団長にお話ししたいという女性が押しかけてきていまして……。」
そこへまた俺達の方へ走って来た騎士が報告するがその後ろから女が走ってくるのが見えた。
「ロイさん!!」
「おいっ、勝手に入ってくるなと言っただろう!!」
報告に来た騎士が慌てて女を押さえた。
「ロゼちゃん。こんなところまでどうしたの?」
ロイの顔見知りらしく驚いたような表情を浮かべている。
次から次へと一体何なんなんだ。
『知り合いか?』
『例の目撃者です…。』
『なるほどな…。』
他の者には気づかれないようにロイと俺しかわからないサインで会話をする。
「あの、思い出したことがあってどうしても早くロイさんに伝えたくて……。」
「なるほど、でも今日は僕も立て込んでいてね。明日ではダメかな?」
「いえっ、今すぐ聞いてほしいのです!!」
「じゃあ、今ここで聞くよ。」
「ここではちょっと……。二人きりでお話ししたいのです。」
ロゼという女は始終、落ち着かない様子で周りを気にしながら目をキョロキョロとさせている。
「ロイ、聞いてやれ。俺はクララ嬢と二人で行く。」
「しかしっ!!」
「大丈夫だ。俺一人で十分だし、お前も彼女の事が気になるだろう?」
「…わかりました。」
これが仕組まれた事でも行くしかない。
『気を付けろよ。』
『そっちこそ。』
そして、俺とロイは分かれて行動することになった。
0
お気に入りに追加
3,632
あなたにおすすめの小説
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?

誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる