上 下
64 / 92

55話 国王陛下に会いました

しおりを挟む


「おもてをあげよ。」

国王陛下のお声により私とアレクは顔を上げた。謁見の間には玉座に陛下が座っていらして、その隣には宰相であるお父様が立っていた。
陛下は漆黒の髪と青い瞳をしていてアレクに面影が少し似ていた。

「アレックス、ヴィクトリア嬢との婚約をしたいというのは真か。」

「はい、私はヴィクトリア嬢以外には結婚は考えられません。是非、許可をいただきたく本日は参りました。」

「ふむ。アレックスはこう言っているがヴィクトリア嬢はどうなのかね?」

「はい、陛下。私もアレックス殿下と結婚しとうございます。……しかし私は一度、婚約破棄された身。それでアレックス殿下の瑕疵になるのなら……。」

「そんなことはない! あれは貴女という婚約者がいながら他の女へうつつを抜かした奴が悪い。ヴィクトリアが気に病むことは一つもない。もし、その事で何か言ってくる者がいるのならば全力で私が貴女を守ろう。」

私が話している途中でいきなりアレクは私の両手を取って真剣な表情で言ってきた。

「ア、アレク様……。」

いやいや!! 打ち合わせと違うっ、急にアレク様どうしちゃったの?
最近、変だったけど今日は特に変!! こんな熱っぽい眼差しで見てくる方だったっけ? 平常心を保つのにも限界が来て顔がだんだん熱くなるのを感じた。

「うぉおほっおん!!!」

お父様の大きな咳払いでアレクも私も我に返って慌てて陛下へ臣下の礼を執った。

「はっはっはっ!!! これはいいものが見れたわ! アレックスがそのように思える女性に会えたのは僥倖というものだ。よし、二人の婚約を認めよう。」

「はっ、ありがたき幸せ。」

「私もお礼申し上げます。」

アレクと一緒に再び頭を下げた。

「時にアレックス。お前は王位の座に未練はないな?」

「全くございません。」

アレクは即答で返す。

「…うむ。では、アレックス・オースティンはヴィクトリア嬢との婚姻を持って王位継承権を外し、メイスフィールド公爵家の次期当主とする。そして、竜を使役したというそなたには新たに竜騎士団の団長としてこの国の守護を命ずる。それに伴い第二騎士団は解体し、新たな人員の構成は第一騎士団のマーカスと協議し決めよ。」

「はっ! 承知致しました。」

なんだか、すごい話になってきたけど、これって後から結婚しませんって言えないんじゃ…。
大丈夫なの? お父様??

こっそりとお父様を見ると、なぜか結婚式でお嫁に行く娘の父親のように感極まった表情をしてハンカチで目頭を押さえている。

アレクの方をチラリと見ると嬉しそうに私の方を見ているし。
何だか、外堀が埋められて行っている感じがするのは気のせいなのだろうか。

まあ、後は今回の件が片付いたら何とかなるでしょう!と私は楽天的に考えることにした。


それから、私達は謁見の間を退室して今日から私が住む部屋へと王宮の廊下を歩いていた。アレクの腕に手を添えて歩くのはなかなか緊張する。

「そうだ。マーガレット嬢も今、王宮ここにすんで王妃教育をしているのだよ。後で会うといい、きっと彼女も喜ぶと思うよ。」

「まあ! そうなのですか、是非、お会いしたいですわ。」

よかった! マーガレット様の事は気になっていたから話ができるのは嬉しい。





それから、談笑しながらアレクとゆっくりと歩いていると聞いたことのある声が廊下に響いた。

「あー! ヴィクトリアさんだ!!」



後ろを振り返ると、そこにはゲームのヒロインであるクララが満面の笑みで私に手を振っていた。


しおりを挟む
感想 186

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました

市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。 ……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。 それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?! 上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる? このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!! ※小説家になろう様でも投稿しています

王子として育てられた私は、隣国の王子様に女だとバレてなぜか溺愛されています

八重
恋愛
リオは女しか生まれない呪いをかけられた王族の生まれで、慣習通り「王子」として育てられた。 そして17歳になったリオは隣国との外交担当に任ぜられる。 しかし、外交公務で向かった隣国にて、その国の第一王子フィルに女であることがバレてしまう。 リオはフィルがまわりに秘密をばらさないか心配になり、しょっちゅうフィルのもとに通う。 フィルはそんなリオを冷たくあしらうが、ある日フィルはリオを押し倒す。 「男を甘く見るな」 急な恋愛展開をきっかけに、二人は急接近して……。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

アクアリネアへようこそ

みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。 家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!? 可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ! やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。 私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ! 働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。

処理中です...