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52話 ローガンの目的(side:アレク)
しおりを挟む「ローガン。お前は何が目的なんだ。」
互いに向き合ったまま、アレクが静かに問いかけた。
これまでの経緯を見るととてもローガンが単独でやったように見えない。そして誰かの意図によって動かされていたようにも見える。
「目的……?」
「そうだ。お前にも何か事情があるなら今からでも遅くはないぞ。だから大人しく……。」
「ハーハッハッハッ!!」
俺が話している途中で奴は笑い出した。
「本当にお前はムカつく奴だよ。何が目的かって? そんなの決まっている! お前のそのムカつく顔を地面に擦り付けて嘲笑いたいのさ。ああ、でもそれだけじゃ満足できないな。お前の存在自体が消えてくれればいいって事に今気づいたよ。……… だから、死ね。」
ローガンがそう言うと同時に突進してきた。そして拳を俺目がけて振り下ろしてくる。
奴は図体がデカくなった代わりに俊敏な動きができないらしく躱すことはそう難しくはない。
「しかたないが、大人しくさせてもらうぞ。」
俺はこれ以上の説得は無理だと判断し、奴の動きを止めることにした。
致命傷は与えなくとも動けなくなるくらいの攻撃をすれば奴を捕らえられる。剣を構えて切りかかった。
パキーーーーン!!
「なにっ!?」
ローガンは斬りかかった俺の剣を素手で掴みそのまま掌で折った。
「なるほど…。やはり、この魔法具は成功だったようだな。魔力・身体能力すべて高位の魔物レベルだ。すばらしい!! さて、次は俺だ。‥‥アイス。」
「っ!?」
ローガンが唱えると同時に俺の両足は地面から生えた氷の塊に覆われて身動きがとれなくなった。
「すぐに死んでもらうのも面白くないからな。そうだな、まずは手足をもいで芋虫のようにはいつくばらせてやろう。ハハハ!!!」
「ファイア!」
俺は奴に向かってファイアを放った。
しかし、奴に届く前に何かに吸い込まれるように消えた。
「なんだと‥‥?」
「いいことを教えてやる。今の俺に魔法攻撃は無効となる。すばらしいだろう!? 俺は誰にも負けることはないのさ! フハハハハ!!」
「チッ。」
さて、どうする? 剣でも斬れない、魔法攻撃はできない。
くそ、足がまだ自由であればなんとかなるかもしれないのに‥‥。
「さて、無駄あがきは終わったかな? ではまず腕を1本もらおうか。」
そう言ってローガンは嘲笑いながら手を伸ばしてきた。
ドゴーッン!!!!
いきなり、辺り一面に轟音が響いた。
ローガンが振り返るとそこには丸焦げになった百本足が横たわっていた。
「なにっ!?」
騎士団の奴らが俺の退避命令を無視して何やらコソコソとやっているのはローガンの背中越しに見えていたから、奴の気を引くためにあえて正面から勝負を挑んだように見せた。
俺が時間稼ぎをしている間にどうやらあいつらだけで百本足を倒してくれたらしい。
まったく無茶をする奴らだと思いつつリュウを助けてくれたことに感謝する。これが終わったら飲み屋で奢ってやるか。
「ギュルギュルギュルルウウ!!!!」
(ぼく、もうおこったもんね!!!!)
苦手なものに追い掛け回されてかなりご立腹のリュウがその体をぐんぐんと大きくさせていく。
およそ20メートルの高さまで体を大きくさせると片足を上げてそのままローガン目がけて振り落とした。
「なっ!?」
ドーン!!
その風圧で砂埃が舞った。そしてリュウはそのままぐりぐりと足を動かしている。
周りにいた騎士団の連中もその光景をあっけにとられて眺めていた。
アレクはリュウの足が退いた後のローガンの姿を見たくないなと思ってしまった。
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