上 下
61 / 92

52話 ローガンの目的(side:アレク)

しおりを挟む


「ローガン。お前は何が目的なんだ。」

互いに向き合ったまま、アレクが静かに問いかけた。
これまでの経緯を見るととてもローガンが単独でやったように見えない。そして誰かの意図によってようにも見える。

「目的……?」

「そうだ。お前にも何か事情があるなら今からでも遅くはないぞ。だから大人しく……。」

「ハーハッハッハッ!!」

俺が話している途中で奴は笑い出した。

「本当にお前はムカつく奴だよ。何が目的かって? そんなの決まっている! お前のそのムカつく顔を地面に擦り付けて嘲笑いたいのさ。ああ、でもそれだけじゃ満足できないな。お前の存在自体が消えてくれればいいって事に今気づいたよ。……… だから、死ね。」

ローガンがそう言うと同時に突進してきた。そして拳を俺目がけて振り下ろしてくる。
奴は図体がデカくなった代わりに俊敏な動きができないらしく躱すことはそう難しくはない。

「しかたないが、大人しくさせてもらうぞ。」

俺はこれ以上の説得は無理だと判断し、ローガンの動きを止めることにした。
致命傷は与えなくとも動けなくなるくらいの攻撃をすれば奴を捕らえられる。剣を構えて切りかかった。


パキーーーーン!!


「なにっ!?」

ローガンは斬りかかった俺の剣を素手で掴みそのまま掌で折った。

「なるほど…。やはり、この魔法具は成功だったようだな。魔力・身体能力すべて高位の魔物レベルだ。すばらしい!! さて、次は俺だ。‥‥アイス。」

「っ!?」

ローガンが唱えると同時に俺の両足は地面から生えた氷の塊に覆われて身動きがとれなくなった。

「すぐに死んでもらうのも面白くないからな。そうだな、まずは手足をもいで芋虫のようにはいつくばらせてやろう。ハハハ!!!」

「ファイア!」

俺は奴に向かってファイアを放った。
しかし、奴に届く前に何かに吸い込まれるように消えた。

「なんだと‥‥?」

「いいことを教えてやる。今の俺に魔法攻撃は無効となる。すばらしいだろう!? 俺は誰にも負けることはないのさ! フハハハハ!!」

「チッ。」

さて、どうする? 剣でも斬れない、魔法攻撃はできない。
くそ、足がまだ自由であればなんとかなるかもしれないのに‥‥。

「さて、無駄あがきは終わったかな? ではまず腕を1本もらおうか。」

そう言ってローガンは嘲笑いながら手を伸ばしてきた。


ドゴーッン!!!!

いきなり、辺り一面に轟音が響いた。
ローガンが振り返るとそこには丸焦げになった百本足が横たわっていた。

「なにっ!?」


騎士団の奴らが俺の退避命令を無視して何やらコソコソとやっているのはローガンの背中越しに見えていたから、奴の気を引くためにあえて正面から勝負を挑んだように見せた。
俺が時間稼ぎをしている間にどうやらあいつらだけで百本足を倒してくれたらしい。
まったく無茶をする奴らだと思いつつリュウを助けてくれたことに感謝する。これが終わったら飲み屋で奢ってやるか。



「ギュルギュルギュルルウウ!!!!」
(ぼく、もうおこったもんね!!!!)

苦手なものに追い掛け回されてかなりご立腹のリュウがその体をぐんぐんと大きくさせていく。
およそ20メートルの高さまで体を大きくさせると片足を上げてそのままローガン目がけて振り落とした。

「なっ!?」

ドーン!!

その風圧で砂埃が舞った。そしてリュウはそのままぐりぐりと足を動かしている。

周りにいた騎士団の連中もその光景をあっけにとられて眺めていた。

アレクはリュウの足が退いた後のローガンの姿を見たくないなと思ってしまった。


しおりを挟む
感想 186

あなたにおすすめの小説

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。 思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。 さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。 彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。 そんなの絶対に嫌! というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい! 私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。 ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの? ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ? この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった? なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。 なんか……幼馴染、ヤンデる…………? 「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

処理中です...