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49話 救出されました。
しおりを挟む窓ガラスが割れてリュウとアレクが部屋へ飛び込んできた。
「ヴィクトリア!!」
「アレク様!?」
アレクがいきなり現れたのには驚きはしたがそれと同時に安心した。
助けに来てくれた。
それだけで胸が熱くなるのを感じた。
私は手錠をかけられたままベッドで寝かされていたが窓から飛び込んできたアレクは私をすぐに見つけて駆け寄ってきた。
リュウも一緒に来てくれたみたいだ。
「これは、魔法封じの手錠か。‥‥お前、その額の傷は誰につけられた?」
アレクはベッドの側まで来て、私の状態を確認すると一段と表情が険しくなった。
「え?」
手錠したままの手で額を触ると痛い。どうやら腫れているみたいだ、ローガンに殴られた時についたものだろう。
「あの‥‥。ハワード様でらっしゃいますか?」
「君は…、スコット子爵のデイジー嬢かな? 助けに来たから、もう大丈夫だ。」
「は、はい! この方はローガン様に連れてこられてその際に暴力を振るわれたようです。この方から先に早く手当てしてもらえないでしょうか?」
「‥‥なんだと?」
アレクから聞いた事のないような低い声が聞こえた。
「ヴィクトリア。何をされた。」
「い、いえ! 別に大した事は。ちょっとお腹を蹴られたくらいで後は肉体強化の魔法を使っていたのでそんなにダメージはありません‥‥。」
「腹だと?」
私の話を聞いているうちにどんどん顔が怖くなっていくアレクはいきなり私の服の裾を引っ張り出して捲った。
「ア、ア、アレクさまっ!?」
アレクのいきなりの暴挙にヴィクトリアは目を白黒させた。
ヴィクトリアのお腹には足型が赤く残っていた。
アレクはゆっくりとめくった服を戻してヴィクトリアを抱き起すとそのまま優しく包み込むように抱きしめた。
「すまない。もう少し俺が早く奴を捕まえていればこんなことにならなかった。」
「ア、アレク様のせいじゃありません! 私が勝手についてきたのです。」
「ギュッ!! ギュウルルルルルルル!!」
(あれく、はやくわるいやつらやっつけにいこう!!)
私達のやり取りを見ていたリュウはたいそうご立腹のようでギュルルとうなりながら口から小さい炎を吐き出している。
「ああ、そうだな。その前にヴィクトリア達を安全な場所に移動させる。」
アレクは私の膝に腕を差し込んで抱え上げた。
「あ! ダリアさんの恋人がこの屋敷の地下に監禁されているみたいなのです。」
「恋人というのは、スミス商会のジャンか?」
「はい、そうです。ジャンをどうか助けて下さいませ!」
ダリアさん改めデイジーさんが必死な表情でアレクに訴えた。
そこで私は、デイジーさんとジャンさんが恋人同士だった事とそれを条件に子爵に脅されて魔法具の制作をしていたこと。子爵たちが捕まった時にジャンさんも行方不明になっていて、再会したときはローガン達に無理矢理、デイジーさんを盾にされ魔法具をこの屋敷の地下で作らせられていることを話した。
「わかった。ジャンは必ず助ける、その前に君たちは安全な場所で待っていてくれ。」
そう言って、アレクは部屋の扉を開いて私を抱えながら廊下を歩きだした。その後ろをデイジーさんがついてくる。
屋敷内はすでに騎士達がいて、屋敷内にいる人間を次々に捕まえているみたいだった。
廊下で騎士達がすれ違うたびに敬礼されたりしたので、恥ずかしくなって途中から顔をアレクの胸で隠すようにしがみついていた。
「副団長! いきなり飛び出していくなんて無謀ですよ!!」
屋敷の前で待機していたロイがやってきた。
「至急、ヴィクトリアとこの令嬢を俺の屋敷に連れて行ってくれ。怪我をしているので医者の用意も頼むとアンジュ様達に伝えてくれ。」
「わ、わかった(うわ~、こえ~、マジ切れしているよ)」
それだけ言うと屋敷の門に横付けされた馬車に私を乗せた。
「ヴィクトリア。君をこんな目にあわせた奴らにはきっちりと俺が仕返しをしておく。………本当に、すまなかった。」
真剣に私の目を見て話すアレクの瞳の奥が悲しそうに揺らめいていた。
「アレク様が謝ることなんて何もありませんよ。元はと言えば私がついていったのですから、それに私の体は案外、丈夫みたいなのでこれくらいはすぐに治ります。あまり気にしないでください。」
そう言って笑う私につられて、アレクも少し微笑んだ。
アレクが馬車を降りて代わりにデイジーさんが乗ってきた。そしてそのまま馬車はアレクの屋敷へと向かっていった。
馬車が屋敷から離れていくのを見送っていたアレクは表情がごっそりと抜け落ちたようだ。
「さて、リュウ行くか。」
「ギュルルルルルルルルー!」
(悪い奴らをやっつけよー!!)
その時だった。
ドッゴーーーーーッン!!!
再び屋敷内へと入ろうとした時、屋敷の玄関を破壊して1匹の大きな魔物が飛び出してきた。
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