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38話 みんなでお昼ご飯を食べました

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「「「うまいっ!!!」」」

私が作ったオムライスを一口食べてから、3人は一斉に声を上げた。

「2度目だがやはり美味しいな、このケチャップで味付けされたライスに上にかぶせているトロトロの卵焼きがたまらん!」

とアレクが言った。

「アレックス殿下はこんな美味しいものをずっと食べていたのですか! なんてうらめ… 失礼、羨ましい。」

お父様が恨めしそうにアレクを見ながら言う。

「アンジュの料理も世界一うまいと思っていたが、リアちゃんもそれに匹敵するくらいだ。よおし!きょうの夕飯もここで食べるぞ! リアちゃん、なんでもいいから夕飯も作ってくれないか?」

御祖父様おじいさまが食べる手を止めて『お願い!』という感じで目をウルウルさせながら聞いてくる。

「皆さんに喜んでもらえて嬉しいですわ。御祖母様おばあさま方とも先ほどキッチンで話していたのですが、夜は『すき焼き』にしようと話していたのですが、アレク様、また私の家族とご一緒に食事してもよろしいですか?」

「もちろんだ。『すきやき』というのは食べたことがないから気になる。是非、作ってもらえないか。」

「ありがとうございます。はりきってお作りしますね。」

「本当にリアちゃんは、お料理が上手ね。さっきも私達が手伝う事なんてあまりなかったもの。」

アンジュ御祖母様おばあさまがそう言うと、隣のエマ様も頷いた。

「まったくですわ、手際が良くて目分量で味付けできるのは普段からやっていたからね。すごいわ~。」

みんなにベタ褒めされて照れくさい。

「いえ、そんな大したものではないです。味付けも庶民向けですし、プロの料理人には負けますわ。」

「そんなことない。俺は今までこんなに料理がおいしくて、次も食べたいと思ったことはないぞ。それから、3時のおやつは『しゅわしゅわのスフレケーキ』を頼む。」

私は、可笑しくなってふふ、と思わず笑ってしまった。

1週間ほど一緒に過ごして気づいたが、どうやらアレクは意外と甘党らしい。先日、試しに作ったスフレケーキを1ホールまるまる一人で食べてしまった。
それから、ずっと「次はいつ作る?」と聞いてくる。

「わかりましたわ。本日のおやつはそれに致します。」

「そうか!」

アレクは、嬉しそうに笑ってそのまま食事を続けた。本当に美味しそうに食べるアレクは見ていて飽きないし作ってよかったと思う。今度は何を作って驚かそうかと考えるだけで楽しい。

そんなことを思いながらアレクが食べるのを見ていたらお父様の大きな咳払いがした。

「うぉーほぉん! リア、早く食べないとせっかくの料理が冷めてしまうよ。」

ああっ、しまった。はたから見たら私がアレク様を見惚れているみたいに見えていたのか。

「も、申し訳ございません…。」

恥ずかしくなって、俯き加減でオムライスを口に運んだ。

「まったく。ホント、心の狭い男だこと。」

アンジュ御祖母様おばあさまが小さい声で何か言っていたようだけど恥ずかしさのあまり食べることに集中している私には聞こえなかった。




「ところでアレックス殿下。このお屋敷は最近買ったのかしら?」

食後のお茶をみんなで飲んでいると、御祖母様おばあさまがアレクに聞いてきた。

「はい。官舎にも一応は自分の部屋がありますが、まあ、たまたまここの屋敷の元主人と懇意になりまして買い取りました。」

「なるほどね。なかなかいいお屋敷だわ、購入して正解だったのではないかしら。」

「ありがとうございます。」

「しかし、庭がちと寂しいな。もう少し手入れをすれば……。おお!! いいこと思いついたぞ!」

御祖父様おじいさまがなにやら閃いたらしい。でもこういう時の御祖父様おじいさまはろくでもないことを言いだしそうで嫌な予感がするなあ。

「王都にいる間は、この屋敷のご厄介になろう。アレックス殿下、その間にお屋敷の庭のリニューアルを私、自らやらせていただきたい! どうですかな?」

「へ?」

アレクはいきなりの提案にキツネにつままれた顔をしている。

御祖父様おじいさま! いくら何でも横暴すぎます!! そんなことを言いだすなんて、御祖母様おばあさまからも何とか言ってください。」

「…まあ、でも。仮に婚約者でも結婚前の男女が同じ屋根の下で暮らすのは他に知られたらまずいわねえ。それに、私たちがこのお屋敷に来ているのはもうすでに知られていることだろうし……。アレックス殿下、しばらくの間、ここに滞在してもいいかしら?」

「私はかまいませんが…。ヴィクトリア嬢がメイスフィールド家に戻った方がいいのでは?」

「それがねえ、ヴィクトリアは療養中で今は領地にいることになっているでしょう? 領地にいったはずなのにすぐに戻ってきたらいろいろ勘繰られそうだし、あなたにも一芝居うってもらって陛下にリアちゃんとの婚約の話をしてもらわないといけないの。そのための布石として私たちがあなたのお屋敷にいることを知られた方がいい気がするのだけど。どうかしら?」

「わかりました。部屋も空いておりますし、すぐに使用人の手配を……。」

「いえ、今、使用人を雇うとなるとが紛れ込む可能性もあるからこのままでいいわ。私達だって炊事洗濯くらいできます。」

「しかし、アンジュ様方にそんな使用人のような事はさせられません。」

「そんな細かいことは気にしなくていいのよ。」

「しかし‥‥。」

「まあ、どうせ少しの間になるわ。それまでにいろいろこっちも動きたいから、ここなら動きやすそうだったのだけど。無理なら…。」

「いえ、大丈夫です。此処をお使いになって構いません。ただ、アンジュ様が知っていることを全部教えてほしいのですが。」

アレクが御祖母様おばあさまを真っ直ぐ見据えて言った。

「いいわ、約束しましょう。」

こうして、御祖母様おばあさま達もこのお屋敷に住むことになった。


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