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22話 なんで嫌がるんですか!
しおりを挟む「お嬢さまぁ! どうしたのですかっ!? その髪も格好も!! ああ、でもご無事で何よりでございますぅ……うう、私は、お嬢様がいなくなってからというものそれは心配で気が休まる事はございませんでした。」
侍女のメイが私に会ったとたんに大騒ぎしたがなんとか落ち着かせて家出をしてからの今までの話を全部した。
「そんなことがあったんでございますね、しかし、副団長様はお嬢様をお雇いになられるなんてっ、あまりにも横暴ですわっ。」
「ちょっと待ってよ、私の話ちゃんと聞いていた? 私は元々貴族の名を捨て平民になるつもりだったのよ。仕事も探すつもりだったし、それをアレク様からお仕事の斡旋してくださったのだもの感謝しているのよ。」
それでも、メイは納得していないようだったが私がなんとか宥めて事なきを得た。
「とりあえず、私はもう平民なのだからお嬢様は止めて。ヴィクトリアとこれからは呼んでね。」
「何をおっしゃいますか! 例え平民になろうともお嬢様はお嬢様です! お嬢様は私の命の恩人ですもの、こればっかりは譲れません!」
「はあー、その頑固さは誰に似たのかしら。まあいいわ、それは譲歩するけど、私の仕事に口は出さない事。いい?」
私もこればっかりは譲れない。与えられた仕事はキッチリと最後までやる!それがわたしのモットーだから。
「でも、お嬢様……。」
「だーめ! こればかりは私も譲れないわ。それに今回のアレク様の怪我は私のせいでもあるから私がきちんと看病する! わかった?」
「わかりました。お嬢様がそこまで言うなら私は何も申しません。ただお手伝いはさせてください。」
「ありがとう。私、ちょっとアレク様の様子見てくるわ。あなたは空いている部屋に自分の荷物持っていったらいいわ、アレク様には私から話します。」
「はい、お嬢様。」
メイと別れた後、アレクの部屋へと向かった。
コンコン
「アレク様、入りますね。」
部屋へ入るとベッドで寝ているアレクが見えた。近寄ると寝ているようだ。しかし、先生が言っていたように熱が出ているみたいで顔が火照ったように赤く眉間にしわを寄せて少しうなされていた。体も汗でびっしょりだ。
先生が処方した薬を飲ませた方がいいかもしれない。その前になにか食べ物をたべてもらわないと、あと頭を冷やす氷水と体も拭いた方がいいわね。
「アレク様、もうちょっと辛抱してくださいね。何か食べるものとお薬をお持ちしますので。」
私の声に反応して、苦しそうに閉じていた瞳をわずかに開けて私の方を見た。
「……別に、何も、しなくていい。俺は、怪我には、なれている、から、おまえは、もう……休め。」
荒い息で話すアレクはかなり苦しそうだ。
「大丈夫です。私はあなたのメイドなのですよ、これくらいはお世話させてくださいませ。それでは、準備してきますので。」
「お、おい……。」
アレクの部屋を出てからキッチンへと向かう。ちょうど部屋からでてきたメイにさっそく手伝いをお願いすると二つ返事で快諾された。
二人で準備した後、またアレクの部屋へと向かった。
部屋に入るとアレクは先ほどより苦しそうに顔をゆがませて寝ていた。
「アレク様、りんごをすりつぶしたものをお持ちしました。これを食べてお薬を飲みましょう。」
「……いいと言っている、のに。」
「だめですよ、お薬を飲んだら少しは楽になりますので……さ、少し起き上がれますか? 腰にクッションを置きますので………はい、ありがとうございます。」
アレクの背中を支えて上体を少し起こせるようにクッションを置いた。アレクの背中は燃えるように熱くて汗で服が濡れていた。
「りんごをすりおろしたものをお持ちしました。これなら食べやすいと思いまして。……はい、あーーーん。」
皿からスプーンですくいあげてアレクの口元へと持っていく。
「はあ? おま、なに、やっているんだ、これくらい、自分で食べられる、貸せ!」
ギプスをしていない手で皿を取り上げようとしたのでわざと皿を遠ざけた。
「駄目です! 利き腕をお怪我された状態でどうやって食べるのですか! こういう時は私に看病させてください。」
「くそ、覚えていろよ。」
何だか悔しそうにしていたがその後は大人しく食べてくれた。
そして薬まで飲んでくれたのだが………。
「なんで嫌がるのですか!!」
「嫌がるにきまっているだろ!!」
「体を拭かないと気持ち悪いでしょう? 拭いたらすっきりしますよ。」
私たちがさっきからもめているのは私がアレクの体を拭くのに思いっきり抵抗されているのだ。
「だから、自分でするって!」
「駄目です! そんな状態ではできませんよ、大丈夫です。前世では兄たちや父で男の上半身なんて見慣れていますから恥ずかしがらなくていいのですよ!」
「いや、そういう問題ではなくてなっ。」
「もう! 埒があきませんわ! こうなったら実力行使させていただきます!!」
「なっ!? おまっ。」
私は一瞬のうちに魔法でアレクのシャツをはぎ取った。
「さあ! これで大人しく拭かれてください。ちょ、ちょっと暴れないでくださいっ、きゃあ!」
拭こうとする手を阻まれて、もみくちゃになっている間に膝をベッドへ置いていた私がバランスを崩してアレクを押し倒すような形になってしまった。
ガッシャーーン、ガラガラ
そして、タイミング悪く氷水を持ってきたメイに見られてしまった。
「お、お、お嬢さま、な、なんて破廉恥なっ…!!」
「「ちっがーーーーーう!!」」
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