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冒険者ギルド編
10話 クエスト開始
しおりを挟む「じゃあ、始めるか。俺達は離れた所から見ているからお前の好きなように動いていいぞ。」
ファーガスはテストを始める合図を出した。が、俺は山へ入る前にまずはアイテムボックスからモンスター図鑑を取り出した。この図鑑は必要になるだろうと王宮の図書館から持ってきた物だ。モンスターの特徴や生息地、弱点などが事細かく書かれている。
スライムの項目を探して読み始めた。
「……なるほど。これなら効率よくドロップアイテムを回収できそうだ。」
図鑑をアイテムボックスに収めて山の地図を見ながらスライムが発生する沼地へと向かった。
「あの、ファーガス様。あれってカンニングになりませんか?」
そこから少し離れた木の枝に立ちアーノルドの行動を見ていたウィルが隣に立っているファーガスに話しかけた。
「ああ、まあいいんじゃねえの?俺は禁止とは言わなかったし、それに敵の情報を調べるのは冒険者にとっては大事だからな。それを実践で活かせるかどうかだが、まあこのまま見ていようぜ。」
ファーガスは面白そうに目を細めてアーノルドが歩いていくのを見ていた。
“ぽよ~ん、ぽよよよ~~~ん”
沼地を目指して歩いているとスライムが現れた。
「ファイア。」
“ポンッ”
スライムは水系のモンスターで火属性の攻撃に弱いと書かれていたので試しにファイアをぶつけたら簡単に倒すことができた。ドロップアイテムを回収して判定すると【スライムの核 2グラム】と表示されている。
「倒すのか簡単だけどこんな事を、チマチマしていたら日没までに1000グラムなんて集められないな。やはりあの方法を試すしかないか。」
“ぽよ~ん、ぽよよよ~~~ん”
そのまま沼地へと向かっていると再びスライムが現れた。今度は一気に3体出てきた。
一斉に飛びかかって来たスライムを躱してその内の1体を剣で斬りつけた。斬られたスライムが慌てて他のスライムと合体した。3体が合体し1つの大きなスライムとなった。
「これを待っていたぜ。ファイア!!」
“ボンッ!!!”
ファイアをぶつけると弾けるように消えた。アイテムを拾い判定をすると【スライムの核 18グラム】と表示されていた。
「やはりスライム同士で合体すると核の質量が倍になるのだな。これなら日没までに間に合いそうだ!」
俺は意気揚々と沼地へと向かった。
“ぽよ~ん、ぽよよよ~ん、ぼよよ~ん”
沼地に着くとそこには沼が覆いつくされそうなくらいのたくさんのスライムたちが飛び跳ねていた。
「さて、やりますか。」
ある程度、大きくさせてから狩る。この量なら1000グラムは行けそうだ。
まずは個体のスライムを倒さないように剣で弱攻撃を加えた。そしたら面白いようにスライムがどんどんと合体し始めた。
「やば、これやりすぎたか?」
もう少し大きくなってから倒そうとスライムの合体を眺めていたらかなりの大きさになってしまった。高さは既に5メートルくらいにまでになっていた。
踏みつぶされたら確実にただのケガでは済まされないだろうな。だが、俺はこの状況でも何故か胸がワクワクしていた。
“ボヨ~ン、ボヨヨ~ン”
スライムの大きな体が跳ねて俺を踏みつぶそうとしてきた。俺はそれを素早くよける。
「ファイア!!」
“シュンッ”
「何っ?」
ファイアを放ったがスライムはビクともせず火はそのままスライムの体の中で消えた。
「もしかして、まずったか?」
このままではまずいな。何か方法があるはずだ……。
手に持っていた剣に目を向ける。
「一か八かやってみるか。ファイアソード!!」
剣に魔力を注ぎ込んだ。魔鉱石作られた剣なら属性の魔力を込めたら変化できると本で読んだことがあった。試したことはなかったけど意外と簡単にできたことに安心する。
「そんじゃ、行きますか!!」
俺は風魔法を使い高く飛翔してスライムの真上からファイアソードを叩き込んだ。
“ボンッ!!!”
真っ二つになったスライムが大きな音と共に爆散した。
辺りにはたくさんのドロップアイテムが落ちていた。その中で一番大きかったのがスライムの核だった。ドロップアイテムをすべて回収し判定すると。【スライムの核 1100グラム、魔石、ポーション、ハイポーション】などが表示されていた。
「よっしゃ!!これでテストはクリアだな。…ん?」
近くで物音がした気がして目を向けると、草むらのなかに白い塊が見えた。近づくと子犬が血まみれで倒れていた。
「犬というより、オオカミか?しかし、酷い怪我だな……。」
抱えあげるとどうやら息はまだしている。
「アーノルド!!逃げろっ!!!!」
何故かファーガスの切羽詰まった声が聞こえて顔を上げると、そこには巨大な狼が怒りの表情で俺を睨みつけていた。
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