上 下
9 / 30
冒険者ギルド編

9話 最初のクエスト

しおりを挟む


「んじゃ、さっそくテストさせてもらうか。ギルマス、何かよさそうなクエストはないか?」

ファーガスがギルドマスターに問いかける。

「そうですねえ。Fランクだと難易度が一番低いものしかできないので……、あ!そうだ。丁度いいのがあります。昨日からスライムが大量発生しているので駆除をお願いしようとしていました。あいつらは弱いですが小さくてすばしっこいので倒すのが面倒くさいのですがその割に単価が安いので誰もやりたがらないのです。まあ、初心者用のクエストにはうってつけなのですが。これなら殿下でも倒せるでしょう。」

俺ではスライムくらいしか倒せないだろうと言われている気がして少しカチンときたが、今は黙って成り行きを見ることにした。

「ま、しゃーねえな。そのクエストを受けるわ。但し、やるのはこいつ一人だけだ。」

ファーガスがそう言うと耐えきれないといった感じでギルドマスターが苦言を呈してきた。

「ファーガス様!先ほどから気になっておりましたが、その御方はこの国の王子にあらせられます。言葉使いにお気を付けください!!」

「ギルドマスター殿、そのように目くじらを立てなくてもいいですよ。私は今、ファーガス様に無理を言ってお願いしている身です。それにこのように親しく接していただいて嬉しいです。」

ここでファーガスの機嫌を損ねるのはまずいと思い助け舟を出す。

「そういうことらしいぞ。ギルマス。俺も敬語なんて使え―ねーし、ガハハハッ。」

「はぁ~…、アーノルド殿下がそうおっしゃられるのであれば仕方ありませんね。ですが、殿下の身の安全は必ずお守りくださいね。殿下に何かあったら私の首が飛ぶどころじゃありませんから。」

「それは安心してください。クエストはアーノルド殿下おひとりでやってもらいますが、もし殿下の御身に危険が及んだら私がすぐに対応致します。」

ギルドマスターは長い溜息の後、くぎを刺したがそれにはすぐに後ろに控えていたウィルが答える。

「ま、そういうことらしいぞ。よほどのことがない限り手は出さねえが俺もいるしな。」

「…わかりました。ではクエストを依頼しますのでアーノルド殿下、冒険者証をお渡しいただけますか。」

俺が冒険者証を渡すと魔法のペンで裏面に文字を書き始めた。

【依頼:スライムの駆除。報酬は核1グラムにつき、100ゼニー】

書き終えた冒険者証を俺に渡した。

「これが今回のクエストになります。駆除は何匹でも構いません。『核』というのはスライムを倒したときに出るドロップアイテムの事です。これがポーションなどの材料になります。それからこれが一番大事なのですが初心者の冒険者は夜に山に入るのは禁止しています。夜は昼と違って凶暴な魔物が活動を始めますのでこれだけはお守りください。」

「ああ、わかった。」

俺はギルドマスターの言葉に頷いた。






「んじゃ、早速だが始めるか。」
冒険者ギルドを出て、俺達は山の入り口まで来た。

「俺からのテストの内容は、そうだな……。今回のクエストの内容はスライムの駆除だったな。では、日没までスライムの核を1000グラム集めろ。」

「なっ!?ファーガス様、それはいくら何でも無謀です!スライムはどんなに大きいものでも単体の核は5グラムくらいしか取れませんよ。それを1日で1000グラムなんて……。」

「できなくはないぞ。逆に俺達のパーティに入りたいのならこれくらいはしてもらわないとな。やり方はお前に任せる。できるか?」

ウィルが非難の声を上げたが意に介さずファーガスは俺を見て聞いてきた。

「やります!」

「おう、いい返事だ。だが、1000グラム集められなかったら俺のパーティに入るのはきっぱり諦めてもらうぞ。いいな?」

「わかりました!」

こうして俺は、ファーガスのテストを兼ねた最初のクエストをする事になった。





*******************************************

※1ゼニー ⇒ 1円


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

転生したらドラゴンに拾われた

hiro
ファンタジー
トラックに轢かれ、気がついたら白い空間にいた優斗。そこで美しい声を聞いたと思ったら再び意識を失う。次に目が覚めると、目の前に恐ろしいほどに顔の整った男がいた。そして自分は赤ん坊になっているようだ! これは前世の記憶を持ったまま異世界に転生した男の子が、前世では得られなかった愛情を浴びるほど注がれながら成長していく物語。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

処理中です...