上 下
2 / 20
第1章

2回目の人生

しおりを挟む
私がこの世界は2回目だと気づいたのは7歳のとき、クローバット侯爵家の長女、シルヴィアこと私は急いでいたのだ。一月ぶりに視察から帰ってくるお父様を出迎えようと屋敷の階段を降りるときに足を踏み外した。周りからは悲鳴が上がり、体が宙に浮く。大丈夫よ、そんなに心配しなくてもお父様が受け止めてくださる…と頭の中に声が浮かぶ。私は自分が落ちてことを知っているのだ。「シルヴィア!!」気づくと私は父の腕に抱かれていた。心臓はばくばくと音を立てて冷や汗が吹き出る。それは落ちたことに対する驚きではなくが現実のものとなってしまったと言う事実からだった。


昔から経験したことのないものや初めての出来事に対して既視感を覚えることがあった。触ったことのないピアノをスラスラと弾けたり、生まれたばかりの従兄弟の名前を教えられることなく呼んだり。それもこれもこの子は天才だ!名前についてはきっと前に話したことを聞いていたんだろうといった風に解釈されていた。自分としてはなぜか知っていたとしか言いようがなかったし、別に不利になることはなかった。しかし7歳にもなると物事を深く理解できるようになってきて、これが偶然…?といえるような経験したことがあるとしか言えない事柄ばっかり起きるのだ。加えて自分が誰かに殺されてしまう夢をみる。それは自分を少しばかり大人にしたような声という形で頭の中に響く。思い出しなさいと…


思い出した、これは私が経験した記憶なんだ。そう理解できた。その証拠に私はこの後侍女のカエティがなんと声をかけてくるのか知っている。『シルヴィア様!!!大丈夫ですか!!!』


「シルヴィア様!!!大丈夫ですか!!!」


そしてお父様が息を整えて『間に合ってよかった…シルヴィ!階段では気をつけなさいといっただろう!!!』


「間に合ってよかった…シルヴィ!階段では気をつけなさいといっただろう!!!」


と言うの。私知ってる。じゃあ…私は将来、夢のとおりに………?息が乱れ呼吸が浅くなる。だんだん手先は冷たくなり…最期には…

「いや!!!!」

そう叫んで7歳の私は意識を失った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと

恋愛
陽も沈み始めた森の中。 獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。 それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。 何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。 ※ ・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。 ・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。

業腹

ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。 置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー 気がつくと自室のベッドの上だった。 先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

処理中です...