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店を閉めて駐車場まで三人で歩く。
「あの人明日には娘さんと仲直り出来るといいなー」
とか言いながら光也さんが空を見上げていた。多分星を見てるんだろう。よくある光景だけどなんか、吐く息の白さとか月明かりとかが綺麗で。
知らないうちに見惚れていたようで、柏原さんがニヤニヤしながら、「タバコでも吸うか」と立ち止まり、タバコに火をつけた。
「さっき吸ったじゃん、寒いよ」と言いつつ、付き合ってタバコに火をつけるあたり、この人甘いなとか思う。
うん、やっぱなんだかんだイケメンだな。しゃがみこんでタバコ吸いながらずっと無言で空を見てる。いつも思うがなんかタバコの持ち方が綺麗というか、指の上の方に挟むんだよなぁ、この人。
「星見えねぇな、都会ってさ」
「あ?星?」
「そう。金星くらいしか見えねぇ。つまんないな」
柏原さんがふと俺を見た。
え、なんだろ、なんか絶対意味ある目線。でも絶対この人語らないよなこんなとき。
「そう言えば光也やけに天文詳しいよな」
「詳しくはないよ。別に天文学がっつり専攻…まぁしたけどしてない。ガキのとき暇だったからちょっと遊んだだけだよ」
「遊んだ?」
「うん。ちっちゃい望遠鏡あったからね。まぁ最後姉ちゃんがぶっ壊しちゃったけどね」
懐かしそうに話して溜め息を吐いた。
「疲れたなぁ」
「ありゃ、珍しいな」
「けど楽しかったな」
そうしみじみ言う光也さんの頭をガシガシと撫でる柏原さんに、ちょっと不機嫌そうに手を払う光也さん。なんだよう。俺もやりたいよそれ。
「はい、お前も頭出せ金髪」
「えっ、何それ」
「二人ともよく頑張りました」
「なんかおっさんそれ本格的におっさんだわ」
「うるせぇな減額するよ?」
「は?訴えるよ」
「あ、それリアル負けるからダメだ」
出たよ、光也さんブラックジョーク。
「さて、帰ろうか」
柏原さんがそう言うと立ち上がり、光也さんはケータイ灰皿に全員分の吸い殻回収してまた歩き出す。駐車場につくまで、「金星ってどれよ」「あれだよ」とか言ってた。俺も流石によく二人で眺めるので金星は覚えた。
「光也さんってさ」
「ん?」
「なんかそーゆーとこ女性的だよね」
自分で言っててよくわかんなかった。柏原さんにもなんかスッゴい興味深そうな目で見られて、「おっ」とか言われた。
「うん、よくわかんないけどなんっつーか感性?これは何?繊細って言ったらいいのか?
だって男なんて星は全部星じゃん。でも光也さんってさ、あれが何星とかさ、気にするわけじゃん?なんかそーゆーのいいよね」
「真里然り気無ぇな」
「そんな俺だって毎日気にしてねぇよ。ふと見たときに、あれ?月齢どんなもんかなってぼーっと思うくらいだよ」
「多分真里が言いたいのは、普通そこ思わなくね?ってことじゃん?」
「そうそれ」
「…なんていうかぼーっとしてんの好きだからかな。え、ぼーっとしてるときってなんだかんだでなんか考えてるっしょ?それがたまたま月見えたら月のことなだけであって」
「うーん。まぁ考えるだろうけど、俺にはその感性ないからちょっとね、いいなって思っただけ」
「ちょっと、そーゆーのは帰ってからにしろ。俺居にくいでしょうが」
「は?なんで?」
「うん、鈍感。まぁそれが光也の良いとこだよ」
「え、なんか褒められてねぇんだけど…」
その鈍感さに助かりつつ、もどかしい思いを抱きつつ。
そして敏感な俺は気付くんだな。柏原さんのなんとなくな合図にさ。どうせこれ、ちょっとクリスマスヒントなんだろ?俺へのさ。
お節介だけどありがとう。そうだね、ちょっとヒント見えたかもね。
そして俺と光也さんは柏原さんと別れ、車で家まで帰った。本当に疲れたらしく、光也さんは車に乗ってすぐにこくこくとし始め、着く頃には小さく肩を上下させながら寝ていた。
然り気無くシートベルトを外してやるとき、ちょっと近すぎるし体制的にもなんかアレだしで自分やばいなと思い、起こす前に一度深呼吸をした。
「光也さん、着いたよ」
「んー…」
なんだよこの野郎マジこのままね、助手席倒して襲ってもいいんだよ?
「ったく。おんぶしますか?」
「んっ。起きる…」
もの凄く眠そうに起きて外に出た。そして深呼吸して、「冷てぇな…」とか言って肺あたりを軽く擦って階段に上った。
あぁ理解出来ない。
「何してんの?」
「いや、夜の冷たい空気って刺さらない?起きるかなって…」
寝ぼけてますな。まぁ確かにわかるけど。
「なんでそう自分を苦しめるかな」
鍵を開けてやって中へ促すと、やっぱり眠そうにベットに一直線着替えもせずにそのままパタンと寝転ぼうとするので右腕つかんで阻止。
「着替えて。てか変な風に寝ない!どうせ寝心地悪くて変な時間起きちゃってまた薬飲みすぎるんだから」
「はぁい…」
そう言うと素直に着替えてちゃんと布団にくるまって寝た。寝たのを見届けて俺も布団を準備して、最後にもう一度だけ寝顔を見て、綺麗だなと思ってから寝た。
「あの人明日には娘さんと仲直り出来るといいなー」
とか言いながら光也さんが空を見上げていた。多分星を見てるんだろう。よくある光景だけどなんか、吐く息の白さとか月明かりとかが綺麗で。
知らないうちに見惚れていたようで、柏原さんがニヤニヤしながら、「タバコでも吸うか」と立ち止まり、タバコに火をつけた。
「さっき吸ったじゃん、寒いよ」と言いつつ、付き合ってタバコに火をつけるあたり、この人甘いなとか思う。
うん、やっぱなんだかんだイケメンだな。しゃがみこんでタバコ吸いながらずっと無言で空を見てる。いつも思うがなんかタバコの持ち方が綺麗というか、指の上の方に挟むんだよなぁ、この人。
「星見えねぇな、都会ってさ」
「あ?星?」
「そう。金星くらいしか見えねぇ。つまんないな」
柏原さんがふと俺を見た。
え、なんだろ、なんか絶対意味ある目線。でも絶対この人語らないよなこんなとき。
「そう言えば光也やけに天文詳しいよな」
「詳しくはないよ。別に天文学がっつり専攻…まぁしたけどしてない。ガキのとき暇だったからちょっと遊んだだけだよ」
「遊んだ?」
「うん。ちっちゃい望遠鏡あったからね。まぁ最後姉ちゃんがぶっ壊しちゃったけどね」
懐かしそうに話して溜め息を吐いた。
「疲れたなぁ」
「ありゃ、珍しいな」
「けど楽しかったな」
そうしみじみ言う光也さんの頭をガシガシと撫でる柏原さんに、ちょっと不機嫌そうに手を払う光也さん。なんだよう。俺もやりたいよそれ。
「はい、お前も頭出せ金髪」
「えっ、何それ」
「二人ともよく頑張りました」
「なんかおっさんそれ本格的におっさんだわ」
「うるせぇな減額するよ?」
「は?訴えるよ」
「あ、それリアル負けるからダメだ」
出たよ、光也さんブラックジョーク。
「さて、帰ろうか」
柏原さんがそう言うと立ち上がり、光也さんはケータイ灰皿に全員分の吸い殻回収してまた歩き出す。駐車場につくまで、「金星ってどれよ」「あれだよ」とか言ってた。俺も流石によく二人で眺めるので金星は覚えた。
「光也さんってさ」
「ん?」
「なんかそーゆーとこ女性的だよね」
自分で言っててよくわかんなかった。柏原さんにもなんかスッゴい興味深そうな目で見られて、「おっ」とか言われた。
「うん、よくわかんないけどなんっつーか感性?これは何?繊細って言ったらいいのか?
だって男なんて星は全部星じゃん。でも光也さんってさ、あれが何星とかさ、気にするわけじゃん?なんかそーゆーのいいよね」
「真里然り気無ぇな」
「そんな俺だって毎日気にしてねぇよ。ふと見たときに、あれ?月齢どんなもんかなってぼーっと思うくらいだよ」
「多分真里が言いたいのは、普通そこ思わなくね?ってことじゃん?」
「そうそれ」
「…なんていうかぼーっとしてんの好きだからかな。え、ぼーっとしてるときってなんだかんだでなんか考えてるっしょ?それがたまたま月見えたら月のことなだけであって」
「うーん。まぁ考えるだろうけど、俺にはその感性ないからちょっとね、いいなって思っただけ」
「ちょっと、そーゆーのは帰ってからにしろ。俺居にくいでしょうが」
「は?なんで?」
「うん、鈍感。まぁそれが光也の良いとこだよ」
「え、なんか褒められてねぇんだけど…」
その鈍感さに助かりつつ、もどかしい思いを抱きつつ。
そして敏感な俺は気付くんだな。柏原さんのなんとなくな合図にさ。どうせこれ、ちょっとクリスマスヒントなんだろ?俺へのさ。
お節介だけどありがとう。そうだね、ちょっとヒント見えたかもね。
そして俺と光也さんは柏原さんと別れ、車で家まで帰った。本当に疲れたらしく、光也さんは車に乗ってすぐにこくこくとし始め、着く頃には小さく肩を上下させながら寝ていた。
然り気無くシートベルトを外してやるとき、ちょっと近すぎるし体制的にもなんかアレだしで自分やばいなと思い、起こす前に一度深呼吸をした。
「光也さん、着いたよ」
「んー…」
なんだよこの野郎マジこのままね、助手席倒して襲ってもいいんだよ?
「ったく。おんぶしますか?」
「んっ。起きる…」
もの凄く眠そうに起きて外に出た。そして深呼吸して、「冷てぇな…」とか言って肺あたりを軽く擦って階段に上った。
あぁ理解出来ない。
「何してんの?」
「いや、夜の冷たい空気って刺さらない?起きるかなって…」
寝ぼけてますな。まぁ確かにわかるけど。
「なんでそう自分を苦しめるかな」
鍵を開けてやって中へ促すと、やっぱり眠そうにベットに一直線着替えもせずにそのままパタンと寝転ぼうとするので右腕つかんで阻止。
「着替えて。てか変な風に寝ない!どうせ寝心地悪くて変な時間起きちゃってまた薬飲みすぎるんだから」
「はぁい…」
そう言うと素直に着替えてちゃんと布団にくるまって寝た。寝たのを見届けて俺も布団を準備して、最後にもう一度だけ寝顔を見て、綺麗だなと思ってから寝た。
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