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ディナー開店してからしばらくは暇すぎて、三人で雑談していた。もちろんほぼ、『クリスマスについて』だった。
「取り敢えずケーキだよね」
「宣伝看板出しとく?一応無料とかにしといてオーダーされたら出すとかさ」
「あとチキンだよね」
「これはもう地鶏。これは店内かなぁ」
「飾りとかの美的センスあるやつさ、考えたらいないな。だってさ、お前よくわかんない資格保持者、こっち調理師、こっちも調理師。お前さ、なんかそーゆー系資格ないの?」
「ない。でも多分こーゆーのはセンス」
「あと企画力」
「だけど俺は優柔不断だしおっさんぶん投げタイプだし真里は言われたらやるタイプだ。これは最早誰一人企画を立てるヤツがいないから流れそうな気がする」
「おお、流石光也。分析タイプ」
「じゃなくて!
もういいんじゃね?ケーキとチキンでってかメニューを限定品何品か作るとかで。だって俺らさ、イベント事向いてないよ。企画があればリーダーシップは真里担当だがそもそも企画がこれ立たないもん」
「てか俺はすごいことに気付きました」
「なんですかオーナー」
「つまりはその限定メニュー企画すらこれ立たない疑惑じゃないでしょうか光也議長」
「…チキンとケーキ」
「だーもー!わかったわかった!俺そのリーダーシップとやらで頑張って企画立てる!せめてメニューだけは!だから落ち込むなよ年上組!」
二人、息ぴったりに「うっ!」とか言う。
「その一言かなり堪えるわ…」
「こんなおっさんでごめんな、老後看取ってね」
「嫌だそれは。骨は拾うよ。
まず酒!クリスマスっぽい酒はちょっといまからちょくちょく考えてピックアップして宣伝考えてね!
料理!はい!クリスマス代表料理明日までに考えてこようね!各自解散!」
もうこれはラチがあかない。
それから各自、お客さんが来るまで悶々とケータイと格闘したり棚を眺めたりメモ書きしたりした。
よくよく考えたら方向性が『クリスマス』という漠然としたものしかなくてなかなか手強い。料理なんて検索したらもっての他。これは余計にラチがあかないかもしれない。
結局今日はお客さんもそれほど来なくて、俺たちは漠然とクリスマス格闘。
ふとしたとき、柏原さんが言った。
「そもそもクリスマスってお前なに食ってた?」
「え?ケーキと…あとなんだろ。やっぱチキンかな」
「他だよ」
「わかってますよ。ピザ?」
「一般的にきっとそれだよね。俺もきっとそれだった。光也はー?」
「へ?俺仏教」
「大抵の日本人そうだから。そうじゃなくてさ」
「京都にそんな文化なくね?」
「いやあるから。流石に」
光也さんは頑張ってカクテル大事典とにらめっこしてカクテルを作って飲んでいた。
「お客さんクリスマスなに食ってました?」
出た、光也流接客術。わからないことは客に聞いてしまえスタイル。今日の貴重なお客様のご意見。
「えぇー私ぃー」
ふー、と溜め息だかタバコの煙だかよく分からない息を吐きながら厨房の方を見る光也さん。
なんて罪な男なんだ。女必死に可愛い子ぶって喋ってんのに話振った本人嫌になってカクテルと格闘始まったよ。まあ見てて笑えるけどさ。
「あいつなんであんな腹黒いのにモテるかね」
「腹黒いからでしょ」
女が話終えた頃にテキトーに笑顔でまた話を戻してる。収穫はなかったらしい。まぁ俺と柏原さんに聞こえた話でも大してピンときたもん言ってないしね。
「光也さんはぁ?仏教ってなぁに?」
「仏教は大仏奉ってある宗教ですよ」
あぁ、完璧面倒臭がってんなあの野郎。
「じゃぁ家のお墓お寺に大仏ないんだけど違うのかなぁ~?」
「あらぁ、そうなんですかー」
なんという栓のない会話。
「俺さあ」
ここで突然、一番端の、厨房側の席に座っていた40代くらいのスーツを着た真面目そうな男が参戦。さっきの女はその男から二つくらい空いたところに座っていたのだけど。
「取り敢えずケーキだよね」
「宣伝看板出しとく?一応無料とかにしといてオーダーされたら出すとかさ」
「あとチキンだよね」
「これはもう地鶏。これは店内かなぁ」
「飾りとかの美的センスあるやつさ、考えたらいないな。だってさ、お前よくわかんない資格保持者、こっち調理師、こっちも調理師。お前さ、なんかそーゆー系資格ないの?」
「ない。でも多分こーゆーのはセンス」
「あと企画力」
「だけど俺は優柔不断だしおっさんぶん投げタイプだし真里は言われたらやるタイプだ。これは最早誰一人企画を立てるヤツがいないから流れそうな気がする」
「おお、流石光也。分析タイプ」
「じゃなくて!
もういいんじゃね?ケーキとチキンでってかメニューを限定品何品か作るとかで。だって俺らさ、イベント事向いてないよ。企画があればリーダーシップは真里担当だがそもそも企画がこれ立たないもん」
「てか俺はすごいことに気付きました」
「なんですかオーナー」
「つまりはその限定メニュー企画すらこれ立たない疑惑じゃないでしょうか光也議長」
「…チキンとケーキ」
「だーもー!わかったわかった!俺そのリーダーシップとやらで頑張って企画立てる!せめてメニューだけは!だから落ち込むなよ年上組!」
二人、息ぴったりに「うっ!」とか言う。
「その一言かなり堪えるわ…」
「こんなおっさんでごめんな、老後看取ってね」
「嫌だそれは。骨は拾うよ。
まず酒!クリスマスっぽい酒はちょっといまからちょくちょく考えてピックアップして宣伝考えてね!
料理!はい!クリスマス代表料理明日までに考えてこようね!各自解散!」
もうこれはラチがあかない。
それから各自、お客さんが来るまで悶々とケータイと格闘したり棚を眺めたりメモ書きしたりした。
よくよく考えたら方向性が『クリスマス』という漠然としたものしかなくてなかなか手強い。料理なんて検索したらもっての他。これは余計にラチがあかないかもしれない。
結局今日はお客さんもそれほど来なくて、俺たちは漠然とクリスマス格闘。
ふとしたとき、柏原さんが言った。
「そもそもクリスマスってお前なに食ってた?」
「え?ケーキと…あとなんだろ。やっぱチキンかな」
「他だよ」
「わかってますよ。ピザ?」
「一般的にきっとそれだよね。俺もきっとそれだった。光也はー?」
「へ?俺仏教」
「大抵の日本人そうだから。そうじゃなくてさ」
「京都にそんな文化なくね?」
「いやあるから。流石に」
光也さんは頑張ってカクテル大事典とにらめっこしてカクテルを作って飲んでいた。
「お客さんクリスマスなに食ってました?」
出た、光也流接客術。わからないことは客に聞いてしまえスタイル。今日の貴重なお客様のご意見。
「えぇー私ぃー」
ふー、と溜め息だかタバコの煙だかよく分からない息を吐きながら厨房の方を見る光也さん。
なんて罪な男なんだ。女必死に可愛い子ぶって喋ってんのに話振った本人嫌になってカクテルと格闘始まったよ。まあ見てて笑えるけどさ。
「あいつなんであんな腹黒いのにモテるかね」
「腹黒いからでしょ」
女が話終えた頃にテキトーに笑顔でまた話を戻してる。収穫はなかったらしい。まぁ俺と柏原さんに聞こえた話でも大してピンときたもん言ってないしね。
「光也さんはぁ?仏教ってなぁに?」
「仏教は大仏奉ってある宗教ですよ」
あぁ、完璧面倒臭がってんなあの野郎。
「じゃぁ家のお墓お寺に大仏ないんだけど違うのかなぁ~?」
「あらぁ、そうなんですかー」
なんという栓のない会話。
「俺さあ」
ここで突然、一番端の、厨房側の席に座っていた40代くらいのスーツを着た真面目そうな男が参戦。さっきの女はその男から二つくらい空いたところに座っていたのだけど。
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