82 / 90
アダージョ
14
しおりを挟む
シャワーを浴びて風呂場から出ると、然り気無くタオルが置いてあった。
いつもなら濡れた髪とかそのままにしておくけどどうしよう、雪子さん居間にいるのかな?とか思って寝巻きを着て覗いてみたが居間には居なかった。
まぁ良いやと思い、タバコを吸って二階の寝室に顔を出す。
「タオル、ありがとうございます」
雪子さんはベットの上で本を読んでいた。俺を見るなり動きを止め、暫し沈黙。
「どうしたんですか?」
「いえ…。
風邪引かないようにね」
「…はい」
よくわからんな。
「私もお風呂入ってきます…!」
「はーい」
なんかよそよそしいな。
ここにいるのも何か変だし、居間に戻ろう。そう思って居間の炬燵でのんびりと過ごした。
テレビをつけても特になんもやってなくて。テキトーに垂れ流していた。
ボーッとしてるとそのうち雪子さんが風呂から出てきたようで、「髪の毛乾かしたら?風邪引いちゃうよ?」なんて言われたので、洗面台に戻って髪を乾かした。
隣に立って雪子さんも歯を磨き始めたので終わった頃、「こっち来て」と俺の目の前に呼び、髪の毛を鋤いて乾かした。
やっぱり指通りが良い。
「なんか心地良い、プロみたい」
「よく小夜にもやるから」
「あぁ…小夜ちゃん綺麗よね、髪の毛」
時間をかけてゆっくりと乾かした。
本当に気持ち良さそうな顔をしてる。
「さて、暖かくして寝よう。あともう一歩」
「うん…。あ、あのね、もしよかったら隣の部屋使う?一応布団とか…まだあるけど」
それはつまり旦那が使っていた部屋なんだろうか。
「いや、いいや。炬燵で」
「えっ、それはダメでしょう」
「いやまぁいきなり勝手に来たんだし」
「うーん…あんまりどうかと思ったけど…うーん…。
一応ダブルベットだけど…」
それは確かに嬉しい誘いだけどさ。
「…また今度にします。大丈夫、じゃぁ…隣の部屋借りますね」
刺激がいきなり強すぎるだろう。
「ゆっくり今日は休んで」
「うん、そうする」
仕方なく俺は旦那の部屋に行くこととなった。
どうせ寝れないけど。薬あったかな。
荷物も取り敢えずは運んだ。
旦那の部屋は至ってシンプル、本当にベットしかないような部屋だった。
ベットにパタンと倒れるように寝転んで、いろいろと考える。ケータイを見たら21時。まだわりと早い時間だった。
そんな時にふと、ケータイが鳴った。おっさんだ。珍しいこともあるもんだ。
真里か小夜の差し金かなぁ。
「はい、もしもし」
『あれ?光也?ありゃ、間違えちったー』
酔っぱらってやがるな。
「え?切るよ」
『えー、冷たいなぁ、どうせ間違ったなら来てよ!暇でしょ?』
「はぁ?まぁ暇といえば暇だけどさ…うーん。
てかどこ?なに?」
『いまね、ちょっと飲んでる!』
「わかるよ。ひとり?」
『ひとりひとり。東京ついたとこー!うーんとね、家の近く!』
「わかんねぇよ」
『真里に聞いたらわかるよ代わって!』
どうやら真里と小夜の差し金ではないらしい。
「あー、いまね、いない。てか俺いま外出中」
『え?お前が?ひとりで?なんで?』
「その言葉そっくりそのまま返すよ。ちょっとね」
『あ、訳あり感だねぇ』
「別に。てか明日ちゃんと来てねマジ」
『はーい』
だらだら長くなりそうだからここで電話を切った。
おっさんが休日に出掛けてるとか珍しいな。しかも東京帰ってきたってなんだろう。旅行?いや、昨日店いたしなぁ。
きっと今頃真里あたりが捕まってんだろうな。小夜が居るから外には出れないだろうけどな。
やっぱりボーッとして見ると目につくものはあんまり自分と関連がない物ばかりで。
この部屋はやっぱり喧嘩したときのためとかなのかな、とか色々なことが頭を巡って、面倒臭くなって目を閉じるが、巡らせる思いはなんとなくマイナスなことばかりで。早く寝てしまいたいが体質的に寝付けなくて。
またケータイを見たら23時。2時間もこうしてたのか。
これは最早薬を飲もうと思って取り敢えず睡眠薬の方を飲むことにした。
今日は一日なんだか疲れた。
なんだか久しぶりにこれだけの神経を使った。真里と喧嘩して家出して告白して彼女が出来て。一言で言ったってこれだけのことがあった。
もっと複雑な色々が絡まりあって。俺は今結局何してるんだろう。
目を閉じて景色を遮断する。これがいつだって一人だけの世界だから。
この暗闇が心地よいときも、耐え難い時も、結局目の前に広がる世界。
どうしてこんなに歪んでるんだろう。
いつもなら濡れた髪とかそのままにしておくけどどうしよう、雪子さん居間にいるのかな?とか思って寝巻きを着て覗いてみたが居間には居なかった。
まぁ良いやと思い、タバコを吸って二階の寝室に顔を出す。
「タオル、ありがとうございます」
雪子さんはベットの上で本を読んでいた。俺を見るなり動きを止め、暫し沈黙。
「どうしたんですか?」
「いえ…。
風邪引かないようにね」
「…はい」
よくわからんな。
「私もお風呂入ってきます…!」
「はーい」
なんかよそよそしいな。
ここにいるのも何か変だし、居間に戻ろう。そう思って居間の炬燵でのんびりと過ごした。
テレビをつけても特になんもやってなくて。テキトーに垂れ流していた。
ボーッとしてるとそのうち雪子さんが風呂から出てきたようで、「髪の毛乾かしたら?風邪引いちゃうよ?」なんて言われたので、洗面台に戻って髪を乾かした。
隣に立って雪子さんも歯を磨き始めたので終わった頃、「こっち来て」と俺の目の前に呼び、髪の毛を鋤いて乾かした。
やっぱり指通りが良い。
「なんか心地良い、プロみたい」
「よく小夜にもやるから」
「あぁ…小夜ちゃん綺麗よね、髪の毛」
時間をかけてゆっくりと乾かした。
本当に気持ち良さそうな顔をしてる。
「さて、暖かくして寝よう。あともう一歩」
「うん…。あ、あのね、もしよかったら隣の部屋使う?一応布団とか…まだあるけど」
それはつまり旦那が使っていた部屋なんだろうか。
「いや、いいや。炬燵で」
「えっ、それはダメでしょう」
「いやまぁいきなり勝手に来たんだし」
「うーん…あんまりどうかと思ったけど…うーん…。
一応ダブルベットだけど…」
それは確かに嬉しい誘いだけどさ。
「…また今度にします。大丈夫、じゃぁ…隣の部屋借りますね」
刺激がいきなり強すぎるだろう。
「ゆっくり今日は休んで」
「うん、そうする」
仕方なく俺は旦那の部屋に行くこととなった。
どうせ寝れないけど。薬あったかな。
荷物も取り敢えずは運んだ。
旦那の部屋は至ってシンプル、本当にベットしかないような部屋だった。
ベットにパタンと倒れるように寝転んで、いろいろと考える。ケータイを見たら21時。まだわりと早い時間だった。
そんな時にふと、ケータイが鳴った。おっさんだ。珍しいこともあるもんだ。
真里か小夜の差し金かなぁ。
「はい、もしもし」
『あれ?光也?ありゃ、間違えちったー』
酔っぱらってやがるな。
「え?切るよ」
『えー、冷たいなぁ、どうせ間違ったなら来てよ!暇でしょ?』
「はぁ?まぁ暇といえば暇だけどさ…うーん。
てかどこ?なに?」
『いまね、ちょっと飲んでる!』
「わかるよ。ひとり?」
『ひとりひとり。東京ついたとこー!うーんとね、家の近く!』
「わかんねぇよ」
『真里に聞いたらわかるよ代わって!』
どうやら真里と小夜の差し金ではないらしい。
「あー、いまね、いない。てか俺いま外出中」
『え?お前が?ひとりで?なんで?』
「その言葉そっくりそのまま返すよ。ちょっとね」
『あ、訳あり感だねぇ』
「別に。てか明日ちゃんと来てねマジ」
『はーい』
だらだら長くなりそうだからここで電話を切った。
おっさんが休日に出掛けてるとか珍しいな。しかも東京帰ってきたってなんだろう。旅行?いや、昨日店いたしなぁ。
きっと今頃真里あたりが捕まってんだろうな。小夜が居るから外には出れないだろうけどな。
やっぱりボーッとして見ると目につくものはあんまり自分と関連がない物ばかりで。
この部屋はやっぱり喧嘩したときのためとかなのかな、とか色々なことが頭を巡って、面倒臭くなって目を閉じるが、巡らせる思いはなんとなくマイナスなことばかりで。早く寝てしまいたいが体質的に寝付けなくて。
またケータイを見たら23時。2時間もこうしてたのか。
これは最早薬を飲もうと思って取り敢えず睡眠薬の方を飲むことにした。
今日は一日なんだか疲れた。
なんだか久しぶりにこれだけの神経を使った。真里と喧嘩して家出して告白して彼女が出来て。一言で言ったってこれだけのことがあった。
もっと複雑な色々が絡まりあって。俺は今結局何してるんだろう。
目を閉じて景色を遮断する。これがいつだって一人だけの世界だから。
この暗闇が心地よいときも、耐え難い時も、結局目の前に広がる世界。
どうしてこんなに歪んでるんだろう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる