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アダージョ
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昼前くらいに、小夜がベランダに出てチューリップに水をあげていた。青空が本当に綺麗で、花の色もよく映えていた。
「小夜、」
「ん?」
「はい、撮るよ」
ケータイのカメラで写真を撮る。
良い出来だ。
俺が一人満足していると小夜が、「私も撮りたい」と言ってくる。
「え?」
「二人で撮ろう?久しぶりにさ」
「うん…いいよ」
小夜のケータイのインカメラで、チューリップを真ん中にして二人で撮った。
意外と良い出来。
その場ですぐに小夜はメールで写メを送ってくれた。
「今度は三人で撮りたいなぁ…よく考えたら三人でってあんまりないよね。ここじゃ狭いかな?」
「そうかもね」
部屋に入るときにコロコロをしてから入る、というのが最近の日課というか癖になっていることに気付いた。
俺は自然と意識もせずにコロコロをして小夜に渡していて。除湿器を強にしたりして。これは花粉対策だ。
俺は花粉症じゃないし小夜も花粉症じゃないけども。それは真里の為で。ベランダはリビングに直結していて、リビングは真里が一番いるスペースでもあるから。
「…そろそろマリちゃん、帰ってくるね」
「…多分ね」
「そしたら、ちゃんと話し合わないとね」
それには答えない。
小夜はリビングでテレビを見始めた。俺は部屋で作業を始める。
自分一人なんて本当に大したことなかった。少なくても真里みたいに、コロコロだとか除湿器だとか、そんなものはなくてもなんとかなるんだなと思った。
昼飯を簡単に作り、真里の分はラップをして冷蔵庫に閉まっておく。少し落ち着いてタバコをキッチンの換気扇の下で吸っていると、玄関が開く音がした。
「マリちゃん!」
その音を聞いて小夜はすぐに玄関へすっ飛んで行った。
「どこ行ってたの!?」
「ごめんなーただいま」
「もー!心配してました!」
「ごめんって!」
仲が良いやりとり。少し安心した。
リビングの扉が開いた。俺の顔を見るなり、ぎこちない笑顔で真里は、「ごめん、ただいま」と言った。
「おかえり」
タバコの火を消して部屋に戻り、コートとマフラーを着けて荷物を持つ。
そんな姿を見て二人はなんとも言えない表情で俺を見ていた。
「え?」
「みっちゃん…?」
「…ちょっとさ、雪子さん、体調悪いみたいだからさ…行ってくる」
下手すぎる嘘。
いや、半分は本当なんだけど。
「じゃぁ…また明日、バイトで」
それだけ言って去ろうとすれば、すれ違い様に肩を掴まれ、「待って…」と真里に言われた。
「…昼飯、冷蔵庫にあるから。
小夜、留守番頼んだよ」
「光也さん、」
「真里、」
それから間が生まれた。
ごめんな、ホントごめんな。
「うぜぇんだよ、じゃぁな」
肩の力が降りた。そのまま黙って家を出ていく。無機質な扉の音が耳に付いた。
今日は風がない日だ。落ち着いていてやけに外の空気が無機質だ。
ケータイ画面がうるさく鳴る前に雪子さんに電話を掛けた。
『もしもし…』
案外すぐ出てくれたがその声が酷く掠れていた。やっぱり悪化したか。
「もしもし、光也です…風邪、酷そうですね」
『大丈夫よ…』
「勝手ながら今から行きます。すみません。なにか買ってきますね」
『えっ…』
「俺も今日暇なんで。大丈夫。そうだなぁ、30分くらいでつきます。では」
電話を切ると不在着信が3件ほど入っていた。真里と小夜だ。
「小夜、」
「ん?」
「はい、撮るよ」
ケータイのカメラで写真を撮る。
良い出来だ。
俺が一人満足していると小夜が、「私も撮りたい」と言ってくる。
「え?」
「二人で撮ろう?久しぶりにさ」
「うん…いいよ」
小夜のケータイのインカメラで、チューリップを真ん中にして二人で撮った。
意外と良い出来。
その場ですぐに小夜はメールで写メを送ってくれた。
「今度は三人で撮りたいなぁ…よく考えたら三人でってあんまりないよね。ここじゃ狭いかな?」
「そうかもね」
部屋に入るときにコロコロをしてから入る、というのが最近の日課というか癖になっていることに気付いた。
俺は自然と意識もせずにコロコロをして小夜に渡していて。除湿器を強にしたりして。これは花粉対策だ。
俺は花粉症じゃないし小夜も花粉症じゃないけども。それは真里の為で。ベランダはリビングに直結していて、リビングは真里が一番いるスペースでもあるから。
「…そろそろマリちゃん、帰ってくるね」
「…多分ね」
「そしたら、ちゃんと話し合わないとね」
それには答えない。
小夜はリビングでテレビを見始めた。俺は部屋で作業を始める。
自分一人なんて本当に大したことなかった。少なくても真里みたいに、コロコロだとか除湿器だとか、そんなものはなくてもなんとかなるんだなと思った。
昼飯を簡単に作り、真里の分はラップをして冷蔵庫に閉まっておく。少し落ち着いてタバコをキッチンの換気扇の下で吸っていると、玄関が開く音がした。
「マリちゃん!」
その音を聞いて小夜はすぐに玄関へすっ飛んで行った。
「どこ行ってたの!?」
「ごめんなーただいま」
「もー!心配してました!」
「ごめんって!」
仲が良いやりとり。少し安心した。
リビングの扉が開いた。俺の顔を見るなり、ぎこちない笑顔で真里は、「ごめん、ただいま」と言った。
「おかえり」
タバコの火を消して部屋に戻り、コートとマフラーを着けて荷物を持つ。
そんな姿を見て二人はなんとも言えない表情で俺を見ていた。
「え?」
「みっちゃん…?」
「…ちょっとさ、雪子さん、体調悪いみたいだからさ…行ってくる」
下手すぎる嘘。
いや、半分は本当なんだけど。
「じゃぁ…また明日、バイトで」
それだけ言って去ろうとすれば、すれ違い様に肩を掴まれ、「待って…」と真里に言われた。
「…昼飯、冷蔵庫にあるから。
小夜、留守番頼んだよ」
「光也さん、」
「真里、」
それから間が生まれた。
ごめんな、ホントごめんな。
「うぜぇんだよ、じゃぁな」
肩の力が降りた。そのまま黙って家を出ていく。無機質な扉の音が耳に付いた。
今日は風がない日だ。落ち着いていてやけに外の空気が無機質だ。
ケータイ画面がうるさく鳴る前に雪子さんに電話を掛けた。
『もしもし…』
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『大丈夫よ…』
「勝手ながら今から行きます。すみません。なにか買ってきますね」
『えっ…』
「俺も今日暇なんで。大丈夫。そうだなぁ、30分くらいでつきます。では」
電話を切ると不在着信が3件ほど入っていた。真里と小夜だ。
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