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アダージョ
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「光也さーん」
寒さと、身体を揺さぶられたことで目が覚めた。
「おぉ、ごめん…おはよ…」
よほど熟睡していたらしい。こんなに見事に起きないなんてなかなかない。
「あれ?あんた熱いんじゃない?」
「え?」
「いま触った感じ。うーん…」
背中に右腕を回され、左手は額に触れられてる。俺より真里の方がだいぶ紳士的だなぁ、とかぼんやりした頭で思う。
「真里…」
「え?」
「ダルいかもしれん」
「…取り敢えず起きようか」
急に身体が浮いたなと思ったら真里の背に背負われて。なるほどなと思いつつ、なんだか懐かしいし、安定感もあった。
「最近頑張ってたからなー、光也さん」
「うん…」
「やっぱり熱いね。部屋行ったら熱図ろうか」
そんなに熱いかな?確かに起きてみて少しダルいけども。疲れの方が強い気がする。
ちらっと顔を見ると真里はやっぱり平然とした顔していた。
部屋の前まで来て流石に背中から降りた。真里が鍵を開けてくれた。
小夜は先に風呂に入っているようだ。
リビングを通って部屋に戻ってから着替えていると、「体温計置いとくよー」と言われる。
まさに至れり尽くせり。
リビングの台所に行って手洗いうがいをしていると、真里はソファに置いてあった寝巻きに着替えていた。今やソファは真里のベッドだ。
検温中じっとしていると、水と薬を持ってきてくれた。ホント神。ここまで来ると最早真似できない。
音が鳴って体温計を見ると37.5°。微熱だな。一番ダルい。
「何度?」
「37.5」
「微熱だね。あれ、でもあんた低体温じゃなかったっけ?」
「昔ね。今はそうでもないよ多分」
「それ以外はどう?」
「うーん、どうだろう。ダルいかも」
「まぁ、休んだら?悪化してもめんどいでしょ?」
「まぁね。あ、そうだ」
忘れてた。
「ん?」
この日のために昨日こっそり作っといたんだ。
立ち上がって冷蔵庫から取り出す。プリンだ。
「え?」
「プリン」
「うん…え?」
「ほら、もらったから、バレンタイン」
「え、えー!」
「あれ?嫌いだった?」
「いや、ちょっ…」
なんか真里が言葉を失ってる。そんなに微妙だったかな。確かに初めて作ったけど。
次の瞬間真里が抱き付いてきたのはわかった。景色が天井になった。これはあれか、押し倒されたのかと理解するまでに数秒かかった。
「ん?」
どうしよう、ここまでの危機は初だと気付いた。だけど真里もはっとした顔をしてすぐ、肩を掴まれてまた起き上がらせられた。だけどそのままずっと抱き締められたままで。
片腕で取り敢えず二人分の体重を支え、今日くらいはいいかと真里の背中を撫でてやる。
「今かなり動揺しました」
「ですよね。俺もっす」
「俺は貞操の危機ですか?だとしたらこのまま蹴り飛ばすしかないんですが」
「そんな元気ないでしょ?」
「つか腕痛ぇよ!」
「あー、ごめんごめん」
やっと離れてくれた。両肩掴まれ、見つめられててこれはこれで危機なような気がするけど。
「ありがと…」
「いや、こちらこそ?」
「まさかお返しくれると思ってなかった」
「うん…そっか」
ソファに寝転ぶ。意外とやっぱりダルいかも。
「後で感想聞かせろよー…」
多分そこから気付いたら寝てて。
次に起きたとき、真里が横に突っ伏すように寝ていた。ちゃんと布団も掛けられていた。
「真里…」
寒そうなので声をかけ、肩を揺らすとすぐに起きた。だが寝ぼけて、上に乗ってきたので軽くビビる。
「ま、マリちゃん…!?」
勃ってやがる。これ寝ぼけてるフリかな。
半身起こしていたが押し倒される形になって抱きつかれた。だけどなんか、もの凄く切なそうに、それはもう今にも泣きそうに「光也さぁん…」なんて言われたら。取り敢えずなんもしてこないし、「…よしよし…」とか言って頭を撫でた。
漸く一度顔を上げ、凄くビックリした顔をして「うあぁぁ!」とか言って真里の方から離れた。
「あれ?あれ!?」
「おはよう…?」
「ごめん、俺…なんかした?」
「いや、なんも…」
気まずい。
「まぁいいけどさー、これお前のベッドだし」
「うん…え?」
「起こしてくれたらよかったのに」
「それこっちのセリフってか、え?いいの?」
「何が?」
「いや、俺がなんかしちゃっても」
「いやそれはだめだよ?」
「あ、うん、そうだよね、うん、混乱してるわ。
イヤだってさ、具合悪ぃって言ってたし、でも気持ち良さそうに寝てたらなんかね、起こせなくなるじゃん」
「お前はなんか悲しそうだったな。嫌な夢見た?」
「うーん…覚えてないや。今ので吹っ飛んじゃった」
「そっか、よかったな」
悪い夢が忘れられて。
純粋にそう思ったのになんだか真里に笑われてしまった。
「…なんだよ」
「いや…覚えてる?こんなやり取り昔したの、ふと思い出して」
「え?」
「その時は逆だった。俺が光也さんに言ったんだ」
そんなこと、あったかなぁ。
寒さと、身体を揺さぶられたことで目が覚めた。
「おぉ、ごめん…おはよ…」
よほど熟睡していたらしい。こんなに見事に起きないなんてなかなかない。
「あれ?あんた熱いんじゃない?」
「え?」
「いま触った感じ。うーん…」
背中に右腕を回され、左手は額に触れられてる。俺より真里の方がだいぶ紳士的だなぁ、とかぼんやりした頭で思う。
「真里…」
「え?」
「ダルいかもしれん」
「…取り敢えず起きようか」
急に身体が浮いたなと思ったら真里の背に背負われて。なるほどなと思いつつ、なんだか懐かしいし、安定感もあった。
「最近頑張ってたからなー、光也さん」
「うん…」
「やっぱり熱いね。部屋行ったら熱図ろうか」
そんなに熱いかな?確かに起きてみて少しダルいけども。疲れの方が強い気がする。
ちらっと顔を見ると真里はやっぱり平然とした顔していた。
部屋の前まで来て流石に背中から降りた。真里が鍵を開けてくれた。
小夜は先に風呂に入っているようだ。
リビングを通って部屋に戻ってから着替えていると、「体温計置いとくよー」と言われる。
まさに至れり尽くせり。
リビングの台所に行って手洗いうがいをしていると、真里はソファに置いてあった寝巻きに着替えていた。今やソファは真里のベッドだ。
検温中じっとしていると、水と薬を持ってきてくれた。ホント神。ここまで来ると最早真似できない。
音が鳴って体温計を見ると37.5°。微熱だな。一番ダルい。
「何度?」
「37.5」
「微熱だね。あれ、でもあんた低体温じゃなかったっけ?」
「昔ね。今はそうでもないよ多分」
「それ以外はどう?」
「うーん、どうだろう。ダルいかも」
「まぁ、休んだら?悪化してもめんどいでしょ?」
「まぁね。あ、そうだ」
忘れてた。
「ん?」
この日のために昨日こっそり作っといたんだ。
立ち上がって冷蔵庫から取り出す。プリンだ。
「え?」
「プリン」
「うん…え?」
「ほら、もらったから、バレンタイン」
「え、えー!」
「あれ?嫌いだった?」
「いや、ちょっ…」
なんか真里が言葉を失ってる。そんなに微妙だったかな。確かに初めて作ったけど。
次の瞬間真里が抱き付いてきたのはわかった。景色が天井になった。これはあれか、押し倒されたのかと理解するまでに数秒かかった。
「ん?」
どうしよう、ここまでの危機は初だと気付いた。だけど真里もはっとした顔をしてすぐ、肩を掴まれてまた起き上がらせられた。だけどそのままずっと抱き締められたままで。
片腕で取り敢えず二人分の体重を支え、今日くらいはいいかと真里の背中を撫でてやる。
「今かなり動揺しました」
「ですよね。俺もっす」
「俺は貞操の危機ですか?だとしたらこのまま蹴り飛ばすしかないんですが」
「そんな元気ないでしょ?」
「つか腕痛ぇよ!」
「あー、ごめんごめん」
やっと離れてくれた。両肩掴まれ、見つめられててこれはこれで危機なような気がするけど。
「ありがと…」
「いや、こちらこそ?」
「まさかお返しくれると思ってなかった」
「うん…そっか」
ソファに寝転ぶ。意外とやっぱりダルいかも。
「後で感想聞かせろよー…」
多分そこから気付いたら寝てて。
次に起きたとき、真里が横に突っ伏すように寝ていた。ちゃんと布団も掛けられていた。
「真里…」
寒そうなので声をかけ、肩を揺らすとすぐに起きた。だが寝ぼけて、上に乗ってきたので軽くビビる。
「ま、マリちゃん…!?」
勃ってやがる。これ寝ぼけてるフリかな。
半身起こしていたが押し倒される形になって抱きつかれた。だけどなんか、もの凄く切なそうに、それはもう今にも泣きそうに「光也さぁん…」なんて言われたら。取り敢えずなんもしてこないし、「…よしよし…」とか言って頭を撫でた。
漸く一度顔を上げ、凄くビックリした顔をして「うあぁぁ!」とか言って真里の方から離れた。
「あれ?あれ!?」
「おはよう…?」
「ごめん、俺…なんかした?」
「いや、なんも…」
気まずい。
「まぁいいけどさー、これお前のベッドだし」
「うん…え?」
「起こしてくれたらよかったのに」
「それこっちのセリフってか、え?いいの?」
「何が?」
「いや、俺がなんかしちゃっても」
「いやそれはだめだよ?」
「あ、うん、そうだよね、うん、混乱してるわ。
イヤだってさ、具合悪ぃって言ってたし、でも気持ち良さそうに寝てたらなんかね、起こせなくなるじゃん」
「お前はなんか悲しそうだったな。嫌な夢見た?」
「うーん…覚えてないや。今ので吹っ飛んじゃった」
「そっか、よかったな」
悪い夢が忘れられて。
純粋にそう思ったのになんだか真里に笑われてしまった。
「…なんだよ」
「いや…覚えてる?こんなやり取り昔したの、ふと思い出して」
「え?」
「その時は逆だった。俺が光也さんに言ったんだ」
そんなこと、あったかなぁ。
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