61 / 90
Bitter&Sweet
10
しおりを挟む
話しているうちにカレーが出された。確かに少し、スープっぽい。
手を合わせて二人で「いただきます」と言ってから食べ始める。だけどなんだか、「光也くん、丁寧ね」と言われた。
「そうですか?あ、これなんだろ、大根?」
「あぁ、時期的にそうかもね。
いやぁ、なんかなんとなくいただきますがなんか本当に有難い感じが伝わってくる…」
「んー?」
別にそういう自覚もないけどなぁ。
「これは大根じゃないなぁ…」
「うん、なんだろう?カブかなぁ?」
「これはきっとさやえんどう」
「なんか…楽しそう」
「また出汁が野菜に合ってて美味いな…これ」
なんだろう和食のような、それでいてちゃんとカレーだし。出汁は本だしかな。
一人で考えながら食っていてはっと気付いた。そう言えば雪子さんと来ていた。
雪子さんを見ると、綻ぶような優しい笑顔で俺を見ていて。
「うわ、なんかすみません。美味かったんで、つい」
「気に入ってくれたみたいでよかった」
「ここ、おっさん来たら喜びそう。おっさんよく、「素材を生かせる味付けって素晴らしいよな」って言ってるから。それをカレーで出せるってすごいなって」
「光也くんも料理やるの?」
「まぁ…あんまりやらないけど、一人暮らし長かったんで。今は小夜も真里もいるし」
「あ、そっか」
「なんとなく、朝は最近小夜が担当で、真里は仕事で作ってるし…って感じで休日は俺が作ったり小夜が作ったり。
なんか新作開発したい時なんかは真里が作ったりもするけど」
「光也くんの得意料理は?」
「んー、なんだろう…一般的な定番っていうか…あ、ハンバーグとかオムライスとかは真里に美味いって言われたかなぁ…。まぁ子供が好きそうなのは小夜が小さいときわりと一緒に作ったから…」
雪子さんはずっと楽しそうに話を聞いてる。凄く聞き上手なんだよなぁ、この人。
「雪子さんは?得意料理ありますか?」
「実はね…私料理あんまり得意ではないの」
「えっ、意外」
「人並みくらいには多分…炒め物とか煮物とかね。けど胸を張って得意!ってほどじゃないのよ。ホント生きていく最低限って感じ。
いま光也くんがハンバーグとかオムライスって言って凄いなって思ったもの」
それがいわゆる最低限のような気がするんだが…。
「それこそカレーとか?」
「そう!」
男子大学生並みなのだろうか。
でも…。
「アップルパイ、美味かったですよ?」
「お菓子はね、得意なの」
「なるほど…」
「ご飯は旦那任せだったのよ」
「じゃぁ今は?」
「うーん、外食が増えたかなぁ」
なるほど、それで毎日のようにウチに来るのか。
「たまに作ると楽しいんだけどね。やっぱ一人だと、作るよりも買ってきたりした方が安かったりすることもあるのよねー」
「それわかるかも…。
俺も一人の時あんまり作らなかったな。でもたまにはまっちゃったりして」
「そうそう!
光也くん今の生活長いの?」
「いや…。今の感じになったのは半年くらいじゃないかなぁ…?基本的には一人です」
「そうなんだ…」
雪子さんは少し考え始めた。まぁ確かに普通の人から見れば俺たち三人の生活は少し異風なんだろうな。
「まぁ、変わってますよね」
「え?…いや、」
「なんとなくわかります。俺も変わってるなって思ってるから」
「あ、うん…」
「…もともと、真里は昔バイトの後輩で、おっさんが社員。おっさんが辞めて店開くからお前ら二人来いって言われていまあの店があるんですよ。そのころ俺たち一緒に住んでて…。
小夜はその少し前くらい、まだ8歳の頃に出会ったんです」
溢れるように言葉が出ていく。普段自分のことなんて語らないから少しぎこちないけど。
「…まぁ、あんまり話すのも…二人のこともあるから」
「複雑な感じ…なのね」
「多分。
初めて小夜を見たときはホントに咄嗟の行動でした。いま思うと支離滅裂だし、よくやってこれたなって思うけど、あの勢いは…なんて言うんだろう、青臭さだったのかな。
俺たちは多分凄く曖昧な関係なんです。多分ちょっとぶつかったら骨折する。だけどなんだかんだで上手かったり下手だったりでやって来てる気がする。今となっては良い親友であり戦友…かな?」
「なんか…夫婦みたい」
「え?」
「いや、また違うのかもね。でも…なんだろ、夫婦には似てる…。一生に会うか会わないかの存在、なんでしょうね」
そう言って雪子さんはにっこり笑った。
「ホントはちょっと興味あるけど、それは3人の秘密ね。
なんか良いわね。なんか…辛いこともきっとたくさんあったんだろうけど、でもなんだかごめんなさい、聞いてたら暖かくなっちゃった。
…性格悪いかしら?」
「いや…!それは逆じゃないかな?」
今度はちょっと思案顔で。なんだかそういう雪子さんを見てたらこっちまで顔が緩むのがわかって。
「光也くん?」
「いや、すみません、なんかちょっと…、雪子さん、そんなになんか不安そうに「性格悪いかしら?」なんて言われちゃったら、ちょっと面白くて…!」
「まぁ!」
「表情がコロコロ変わるんだもん…!
やば、俺が性格悪いかな、なんか…」
可愛らしい。
「…素敵です。いいなぁ、そーゆーの」
「…そう?」
そうやって少し恥ずかしそうなのも。
「大人になってもそんな感性があるのって、いいな」
「…褒め上手ね」
「褒めて…るのか、確かに。思ったことそのまま言いました」
「貴方も充分…」
なんだろう。
「あ、休憩よね、光也くん」
「あぁ、まあ…」
「そろそろ行きましょうか!」
急に雪子さんは慌て始めて伝票を持った。もうちょっと余裕あるけど、残念。
伝票の金額は見ておいたので、雪子さんが伝票を出したタイミングでお金を出した。
「え、」
戸惑っていたが取り敢えず、「ごちそうさまです」とおばちゃんに挨拶をして二人で店を出た。
手を合わせて二人で「いただきます」と言ってから食べ始める。だけどなんだか、「光也くん、丁寧ね」と言われた。
「そうですか?あ、これなんだろ、大根?」
「あぁ、時期的にそうかもね。
いやぁ、なんかなんとなくいただきますがなんか本当に有難い感じが伝わってくる…」
「んー?」
別にそういう自覚もないけどなぁ。
「これは大根じゃないなぁ…」
「うん、なんだろう?カブかなぁ?」
「これはきっとさやえんどう」
「なんか…楽しそう」
「また出汁が野菜に合ってて美味いな…これ」
なんだろう和食のような、それでいてちゃんとカレーだし。出汁は本だしかな。
一人で考えながら食っていてはっと気付いた。そう言えば雪子さんと来ていた。
雪子さんを見ると、綻ぶような優しい笑顔で俺を見ていて。
「うわ、なんかすみません。美味かったんで、つい」
「気に入ってくれたみたいでよかった」
「ここ、おっさん来たら喜びそう。おっさんよく、「素材を生かせる味付けって素晴らしいよな」って言ってるから。それをカレーで出せるってすごいなって」
「光也くんも料理やるの?」
「まぁ…あんまりやらないけど、一人暮らし長かったんで。今は小夜も真里もいるし」
「あ、そっか」
「なんとなく、朝は最近小夜が担当で、真里は仕事で作ってるし…って感じで休日は俺が作ったり小夜が作ったり。
なんか新作開発したい時なんかは真里が作ったりもするけど」
「光也くんの得意料理は?」
「んー、なんだろう…一般的な定番っていうか…あ、ハンバーグとかオムライスとかは真里に美味いって言われたかなぁ…。まぁ子供が好きそうなのは小夜が小さいときわりと一緒に作ったから…」
雪子さんはずっと楽しそうに話を聞いてる。凄く聞き上手なんだよなぁ、この人。
「雪子さんは?得意料理ありますか?」
「実はね…私料理あんまり得意ではないの」
「えっ、意外」
「人並みくらいには多分…炒め物とか煮物とかね。けど胸を張って得意!ってほどじゃないのよ。ホント生きていく最低限って感じ。
いま光也くんがハンバーグとかオムライスって言って凄いなって思ったもの」
それがいわゆる最低限のような気がするんだが…。
「それこそカレーとか?」
「そう!」
男子大学生並みなのだろうか。
でも…。
「アップルパイ、美味かったですよ?」
「お菓子はね、得意なの」
「なるほど…」
「ご飯は旦那任せだったのよ」
「じゃぁ今は?」
「うーん、外食が増えたかなぁ」
なるほど、それで毎日のようにウチに来るのか。
「たまに作ると楽しいんだけどね。やっぱ一人だと、作るよりも買ってきたりした方が安かったりすることもあるのよねー」
「それわかるかも…。
俺も一人の時あんまり作らなかったな。でもたまにはまっちゃったりして」
「そうそう!
光也くん今の生活長いの?」
「いや…。今の感じになったのは半年くらいじゃないかなぁ…?基本的には一人です」
「そうなんだ…」
雪子さんは少し考え始めた。まぁ確かに普通の人から見れば俺たち三人の生活は少し異風なんだろうな。
「まぁ、変わってますよね」
「え?…いや、」
「なんとなくわかります。俺も変わってるなって思ってるから」
「あ、うん…」
「…もともと、真里は昔バイトの後輩で、おっさんが社員。おっさんが辞めて店開くからお前ら二人来いって言われていまあの店があるんですよ。そのころ俺たち一緒に住んでて…。
小夜はその少し前くらい、まだ8歳の頃に出会ったんです」
溢れるように言葉が出ていく。普段自分のことなんて語らないから少しぎこちないけど。
「…まぁ、あんまり話すのも…二人のこともあるから」
「複雑な感じ…なのね」
「多分。
初めて小夜を見たときはホントに咄嗟の行動でした。いま思うと支離滅裂だし、よくやってこれたなって思うけど、あの勢いは…なんて言うんだろう、青臭さだったのかな。
俺たちは多分凄く曖昧な関係なんです。多分ちょっとぶつかったら骨折する。だけどなんだかんだで上手かったり下手だったりでやって来てる気がする。今となっては良い親友であり戦友…かな?」
「なんか…夫婦みたい」
「え?」
「いや、また違うのかもね。でも…なんだろ、夫婦には似てる…。一生に会うか会わないかの存在、なんでしょうね」
そう言って雪子さんはにっこり笑った。
「ホントはちょっと興味あるけど、それは3人の秘密ね。
なんか良いわね。なんか…辛いこともきっとたくさんあったんだろうけど、でもなんだかごめんなさい、聞いてたら暖かくなっちゃった。
…性格悪いかしら?」
「いや…!それは逆じゃないかな?」
今度はちょっと思案顔で。なんだかそういう雪子さんを見てたらこっちまで顔が緩むのがわかって。
「光也くん?」
「いや、すみません、なんかちょっと…、雪子さん、そんなになんか不安そうに「性格悪いかしら?」なんて言われちゃったら、ちょっと面白くて…!」
「まぁ!」
「表情がコロコロ変わるんだもん…!
やば、俺が性格悪いかな、なんか…」
可愛らしい。
「…素敵です。いいなぁ、そーゆーの」
「…そう?」
そうやって少し恥ずかしそうなのも。
「大人になってもそんな感性があるのって、いいな」
「…褒め上手ね」
「褒めて…るのか、確かに。思ったことそのまま言いました」
「貴方も充分…」
なんだろう。
「あ、休憩よね、光也くん」
「あぁ、まあ…」
「そろそろ行きましょうか!」
急に雪子さんは慌て始めて伝票を持った。もうちょっと余裕あるけど、残念。
伝票の金額は見ておいたので、雪子さんが伝票を出したタイミングでお金を出した。
「え、」
戸惑っていたが取り敢えず、「ごちそうさまです」とおばちゃんに挨拶をして二人で店を出た。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ボッチによるクラスの姫討伐作戦
イカタコ
ライト文芸
本田拓人は、転校した学校へ登校した初日に謎のクラスメイト・五十鈴明日香に呼び出される。
「私がクラスの頂点に立つための協力をしてほしい」
明日香が敵視していた豊田姫乃は、クラス内カーストトップの女子で、誰も彼女に逆らうことができない状況となっていた。
転校してきたばかりの拓人にとって、そんな提案を呑めるわけもなく断ろうとするものの、明日香による主人公の知られたくない秘密を暴露すると脅され、仕方なく協力することとなる。
明日香と行動を共にすることになった拓人を見た姫乃は、自分側に取り込もうとするも拓人に断られ、敵視するようになる。
2人の間で板挟みになる拓人は、果たして平穏な学校生活を送ることができるのだろうか?
そして、明日香の目的は遂げられるのだろうか。
ボッチによるクラスの姫討伐作戦が始まる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ノスタルジック・エゴイスト
二色燕𠀋
現代文学
生きることは辛くはない
世界はただ、丸く回転している
生ゴミみたいなノスタルジック
「メクる」「小説家になろう」掲載。
イラスト:Odd tail 様
※ごく一部レーティングページ、※←あり
あと3年の彼女は心の映像を盗み見る
響ぴあの
ライト文芸
ラブコメ風恋愛青春物語!
寿命を取り引きする喫茶店幻想堂の息子、時羽金成(ときわかねなり)は、友達がほしいが友達がいない。しかし、目つきが悪く時羽が人を寄せ付けないバリアを作るからであり、実は女子に人気がある。そのことに本人は気づいていない。
寿命と引き換えに見える力を得て、あと3年弱の寿命になった少女雪月風花(せつげつふうか)。
時羽金成はクラスメイトの雪月があと数年しか生きられないことに気づく。
呪いを扱う死神堂の岸海星と共に雪月風花を助ける手段を模索する。
青春ラブストーリーと喫茶店のお客の人間ドラマ。
あと3年の本当の意味は最終話で!
主な店
【喫茶店幻想堂】
寿命=時間を買い取ってくれる喫茶店があるらしい。その名は喫茶店幻想堂。お金で買えない運や才能や発想力、人の心を寿命の一部と引き換えに手に入れることができるらしい。寿命の譲渡も可能。
【死神堂】寿命と引き換えに呪いをかける古本喫茶店。
【主な登場人物】
時羽金成(ときわかねなり)……高校生1年生で雪月とクラスメイト。幻想堂の店員として寿命の取引を行うが、ネガティブ思考で自分は人から嫌われていると思い込んでいる。目つきが悪く鋭い瞳は人嫌いだと誤解されるが本当は友達がほしいこじらせ男子。実はモテるが自覚なし。
雪月風花(せつげつふうか)……高校生1年生で時羽のクラスメイト。幻想堂で寿命と引き換えに触れた相手の心が映像で見える力を得た。そのため寿命があと数年らしい。時羽になついている元気で明るい少女。
岸海星(きしかいせい)……高校生1年生で時羽と雪月と同級生。寿命と引き換えに暗殺や怨み晴らしを請け負う古本喫茶の息子。雑学王子。タレ目イケメン。女子ファン多数。実は学校イチの情報通。桔梗の幼馴染。
眩しさの中、最初で最後の恋をした。
織原深雪
ライト文芸
眩しさの中で
あなたを初めて見た時。
ずっと諦めていた、人を好きになるという事を
痛い程に、初めて知ったの……。
言いたくても言えない気持ちが
胸を苦しくすることも……。
みんな、あなたに出会えて知れた……。
諦めていたこの気持ちを知ることが出来て
私は良かったと思ってる。
だから、これが私の……
きっと最初で最後の恋になる。
【完結】背中に羽をもつ少年が32歳のこじらせ女を救いに来てくれた話。【キスをもう一度だけ】
remo
ライト文芸
ーあの日のやり直しを、弟と入れ替わった元カレと。―
トラウマ持ちの枯れ女・小牧ゆりの(32)
×
人気モデルの小悪魔男子・雨瀬季生(19)
↓×↑
忘れられない元カレ警察官・鷲宮佑京(32)
―――――――――
官公庁で働く公務員の小牧ゆりの(32)は、男性が苦手。
ある日、かつて弟だった雨瀬季生(19)が家に押しかけてきた。奔放な季生に翻弄されるゆりのだが、季生ならゆりののコンプレックスを解消してくれるかも、と季生に男性克服のためのセラピーを依頼する。
季生の甘い手ほどきにドキドキが加速するゆりの。だが、ある日、空き巣に入られ、動揺している中、捜査警察官として来た元カレの鷲宮佑京(32)と再会する。
佑京こそがコンプレックスの元凶であり、最初で最後の忘れられない恋人。佑京が既婚だと知り落ち込むゆりのだが、再会の翌日、季生と佑京が事故に遭い、佑京は昏睡状態に。
目覚めた季生は、ゆりのに「俺は、鷲宮佑京だ」と告げて、…―――
天使は最後に世界一優しい嘘をついた。
「もう一度キスしたかった」あの日のやり直しを、弟と入れ替わった元カレと。
2021.12.10~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる