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Bitter&Sweet
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その夜は案の定不眠。ひたすら頭の中で思いや考えやおっさんの言葉が巡って目が冴えてしまった。
久しぶりに薬を飲んだ。お陰で朝寝坊しかけた。おっさんが焦ったように起こしたので目覚めは最悪だった。
「おぉ…よかった」
「おはよう…」
かなり不機嫌そうにしてると、「ごめん、ごめんって!」とか謝ってきて、数少ない情報を引っ張り出してみればまぁ仕方ないなと納得したので「別にいいよ…」と受け流す。
「最近血圧低いんだよね」
「まぁ、でしょうね」
「だから朝は大抵機嫌が悪いの」
「…それは可愛い女の子が言うならいいけどさ、いい歳した独身男が言うのはどうなの?」
「真里は多分可愛いって言うよ」
「お前それでいいのか!?」
「うーん、複雑だね。てか朝からそんな喋んないでよ…」
頭痛いんだからさ。
まぁ久しぶりに誰かと過ごす朝は、おっさんにとっては楽しいんだろうけどさ。
朝飯はトーストとスクランブルエッグと豆腐の味噌汁だった。最後和食という意味のわかんなさがおっさんらしい。
二人で出勤。俺としてはいつもより少し早めだった。少し経ってから真里が出勤。いつも通りの一日が始まった。
「やっぱ真里すげぇな…俺は真里を尊敬するわ…」
「なんっすかいきなり」
「でもちょっとね、気持ちわからんでもない。
光也係はやっぱり真里だね」
「あーね。でもね、わがままもわりと可愛いよ?」
「そこが尊敬ポイントだよなー。朝とかこいつマジ機嫌悪いってかどんよりしてたよ」
なんだ、人を変な風に言いやがって。
「あれ、てか光也さん不眠でしょ。顔白いよ」
「んー」
「枕変わっちゃったからね」
「お前らなんだ、夫婦かよ。昨日は情熱的な一夜だったな光也」
「おっさんいい加減働いて。マジ殴るよ?」
「ひゃー怖い」とか言いながらテキトーに仕事を始めた。まぁ大体は支障なんてきたすほど遊ばないけどうるさいからたまにはこうやって渇入れないと。
しかし渇を入れたはいいが俺の方が頭は冴えない。在庫確認しておっさんに最終チェックをしてもらうと、「お前結構カオスだよ」とか言われた。
「カシス133本ってどんな発注ミスだよ…あぁ、こっちも!山崎は18本も置けねぇよ!え、ちょっと待って俺確認するわ」
「ごめん違うわ書きミスった。カシス5本の山崎3本だよ」
「えぇ!なんて突拍子のない数字!?」
一応見てくれた。結局山崎は8本もあった。
「多いな…お前頑張って売って、てかこれ山崎フェアやんなきゃ」
「春のパン祭り的な?」
「うるせぇ、発注一回ミスっただろこれ!よく置けたな…」
「下にいっぱいあった。飲んでいい?」
「なんなら持って帰れよ。下にあったってことは他のウィスキーは?」
「一本づつくらい」
「まぁ…種類あるから品切はないかなぁ…」
その他かなり確認ミスってて、「お前大丈夫か?」とか少し心配された。
「ちょっと面白いけど致命的だな。光也くん気を引き締めておくれや」
「へーい。すみませーん」
確かに訂正してくれたやつと見比べたらかなり自分がカオスなことになっていたのがわかった。やっぱりボーッとしてる。
ただおっさんの一言で気は引き締まった。いけないいけない。
自然とチューリップを眺めた。あれ、栄養剤がないな。しかもちょっと土も渇いてる。
カウンターの手元にある引き出しから栄養剤を取りだし交換する。水をコップに注いであげると、急に「光也、」と声をかけられておっさんの方を見る。パシャっと音がした。どうやら写メを撮られたらしい。
「タイトル、花とイケメン」
「どれどれ」
とか言って真里と二人で盛り上がってる。もういいほっとこう。
どうせならと思い、外のチューリップのメンテナンスもした。オープン前だというのにまだ二人は盛り上がってる。
「これさ、原像出来ないの?」
「できますよ?」
「え、してよしてよ!店に飾らね?従業員の写真とかさ、飾ったらよくない?」
「珍しく良い提案っすね」
確かに。無駄にホームページにアップされるより断然いいな。
「だろ?お前なんか特に幽霊ポジションだしさ」
「え、そうなの?」
「うん、わりかし。たまにくる程度の常連さんからは「新入り?」とか言われるよ」
「マジか。まぁいいけど」
「初期メンって言うとみんな最初は驚くよな」
「初期メンって使い方間違ってるよおっさん。バンドじゃないんだからさ」
「え、どうやってやんの?」
真里がおっさんに事細かく説明をすると、「じゃぁ俺ちょっと用紙買ってくる!オープン任せた!」とか言って突然店を出て行ってしまった。
まったく。いつも思い付きで行動しやがるんだから。
ランチオープンから10分ほどしておっさんは帰ってきた。
今日はいつもより暇だった。あまりにも暇すぎてまたおっさんは写メ原像に手を焼く。
「家にも飾ろうかな」
「気持ち悪いからやめた方がいいと思う」
「なんか趣味見つけたいじゃん」
「小夜みたいに花育ててみたら?今朝もスッゲー嬉しそうに水やってたよ」
「あ、いいね!」
確かにそれは名案かもしれない。生き物だと、この人はあまり家にいないから殺しそうだけど、植物なら大丈夫だろう。
「光也!お前今日花買ってきて!」
は?
「は?なんで?」
「どうせ行くんだろ?」
「え、買ってきてって何をだよ」
「なんでもいーよ」
なんて無責任なんだ。
「わかったよ…」
それでも渋々引き受けちゃう辺りちょっと甘いけど、これはこれで多分、おっさんなりの下手すぎる気遣いなんだろうとは思う。
久しぶりに薬を飲んだ。お陰で朝寝坊しかけた。おっさんが焦ったように起こしたので目覚めは最悪だった。
「おぉ…よかった」
「おはよう…」
かなり不機嫌そうにしてると、「ごめん、ごめんって!」とか謝ってきて、数少ない情報を引っ張り出してみればまぁ仕方ないなと納得したので「別にいいよ…」と受け流す。
「最近血圧低いんだよね」
「まぁ、でしょうね」
「だから朝は大抵機嫌が悪いの」
「…それは可愛い女の子が言うならいいけどさ、いい歳した独身男が言うのはどうなの?」
「真里は多分可愛いって言うよ」
「お前それでいいのか!?」
「うーん、複雑だね。てか朝からそんな喋んないでよ…」
頭痛いんだからさ。
まぁ久しぶりに誰かと過ごす朝は、おっさんにとっては楽しいんだろうけどさ。
朝飯はトーストとスクランブルエッグと豆腐の味噌汁だった。最後和食という意味のわかんなさがおっさんらしい。
二人で出勤。俺としてはいつもより少し早めだった。少し経ってから真里が出勤。いつも通りの一日が始まった。
「やっぱ真里すげぇな…俺は真里を尊敬するわ…」
「なんっすかいきなり」
「でもちょっとね、気持ちわからんでもない。
光也係はやっぱり真里だね」
「あーね。でもね、わがままもわりと可愛いよ?」
「そこが尊敬ポイントだよなー。朝とかこいつマジ機嫌悪いってかどんよりしてたよ」
なんだ、人を変な風に言いやがって。
「あれ、てか光也さん不眠でしょ。顔白いよ」
「んー」
「枕変わっちゃったからね」
「お前らなんだ、夫婦かよ。昨日は情熱的な一夜だったな光也」
「おっさんいい加減働いて。マジ殴るよ?」
「ひゃー怖い」とか言いながらテキトーに仕事を始めた。まぁ大体は支障なんてきたすほど遊ばないけどうるさいからたまにはこうやって渇入れないと。
しかし渇を入れたはいいが俺の方が頭は冴えない。在庫確認しておっさんに最終チェックをしてもらうと、「お前結構カオスだよ」とか言われた。
「カシス133本ってどんな発注ミスだよ…あぁ、こっちも!山崎は18本も置けねぇよ!え、ちょっと待って俺確認するわ」
「ごめん違うわ書きミスった。カシス5本の山崎3本だよ」
「えぇ!なんて突拍子のない数字!?」
一応見てくれた。結局山崎は8本もあった。
「多いな…お前頑張って売って、てかこれ山崎フェアやんなきゃ」
「春のパン祭り的な?」
「うるせぇ、発注一回ミスっただろこれ!よく置けたな…」
「下にいっぱいあった。飲んでいい?」
「なんなら持って帰れよ。下にあったってことは他のウィスキーは?」
「一本づつくらい」
「まぁ…種類あるから品切はないかなぁ…」
その他かなり確認ミスってて、「お前大丈夫か?」とか少し心配された。
「ちょっと面白いけど致命的だな。光也くん気を引き締めておくれや」
「へーい。すみませーん」
確かに訂正してくれたやつと見比べたらかなり自分がカオスなことになっていたのがわかった。やっぱりボーッとしてる。
ただおっさんの一言で気は引き締まった。いけないいけない。
自然とチューリップを眺めた。あれ、栄養剤がないな。しかもちょっと土も渇いてる。
カウンターの手元にある引き出しから栄養剤を取りだし交換する。水をコップに注いであげると、急に「光也、」と声をかけられておっさんの方を見る。パシャっと音がした。どうやら写メを撮られたらしい。
「タイトル、花とイケメン」
「どれどれ」
とか言って真里と二人で盛り上がってる。もういいほっとこう。
どうせならと思い、外のチューリップのメンテナンスもした。オープン前だというのにまだ二人は盛り上がってる。
「これさ、原像出来ないの?」
「できますよ?」
「え、してよしてよ!店に飾らね?従業員の写真とかさ、飾ったらよくない?」
「珍しく良い提案っすね」
確かに。無駄にホームページにアップされるより断然いいな。
「だろ?お前なんか特に幽霊ポジションだしさ」
「え、そうなの?」
「うん、わりかし。たまにくる程度の常連さんからは「新入り?」とか言われるよ」
「マジか。まぁいいけど」
「初期メンって言うとみんな最初は驚くよな」
「初期メンって使い方間違ってるよおっさん。バンドじゃないんだからさ」
「え、どうやってやんの?」
真里がおっさんに事細かく説明をすると、「じゃぁ俺ちょっと用紙買ってくる!オープン任せた!」とか言って突然店を出て行ってしまった。
まったく。いつも思い付きで行動しやがるんだから。
ランチオープンから10分ほどしておっさんは帰ってきた。
今日はいつもより暇だった。あまりにも暇すぎてまたおっさんは写メ原像に手を焼く。
「家にも飾ろうかな」
「気持ち悪いからやめた方がいいと思う」
「なんか趣味見つけたいじゃん」
「小夜みたいに花育ててみたら?今朝もスッゲー嬉しそうに水やってたよ」
「あ、いいね!」
確かにそれは名案かもしれない。生き物だと、この人はあまり家にいないから殺しそうだけど、植物なら大丈夫だろう。
「光也!お前今日花買ってきて!」
は?
「は?なんで?」
「どうせ行くんだろ?」
「え、買ってきてって何をだよ」
「なんでもいーよ」
なんて無責任なんだ。
「わかったよ…」
それでも渋々引き受けちゃう辺りちょっと甘いけど、これはこれで多分、おっさんなりの下手すぎる気遣いなんだろうとは思う。
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