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For Someone
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「え?聞こえてたんじゃないの?」
「いや。なんか小夜が怖がってたからナンパでもされたんだろうって…なにそれメチャクチャ腹立つんだけど」
「今更!?」
「いやさぁ、は?ナンパの方がまだいいわ腹立つけど。
なんやそれ、てかあのガキ共どこの誰や」
「知らない…」
「うーん、それってさ。
当てずっぽうに言ったにしちゃぁ当たっちゃってるよね。なんだろ、ちと危険な臭いがするな。
誰かにさ、お母さんのこと、話たりとかしてないんでしょ?」
「てか、母親なんて忘れてましたよ…」
「なんか、覚えある?」
「いえ、まったく…」
「ストーカーとかかなぁ…」
「まぁなんにせよだ。そーゆー危険なやつがいるかもしれんってことだ。そこはまぁ、腕っぷしの立つドライバー真里様が送り迎えしたとしてや。
あいつらガキやろ?ガキにしちゃ質が悪い。わからん、何を考えているかは。俺も出来ることはするがぴったりくっついてるわけにもいかへんからな。自分でも気ぃつけや」
みっちゃん、いつの間にか関西弁になっている。最近気付いたが酔ってなくても興奮したり、気分の浮き沈みでこれは良く出るようだ。
「はい…」
「小夜はぼーっとしとるとこあるからな。あかんよ。気配を察したらまずは叫べ!誰もおらんかったら走る!」
「はい!」
「そしてな」
「はい…」
「…あれくらいでビビるなや」
「…はい」
「ええか?
お前と母親なんて今や知らん仲やろ。それとも…気になるか?」
そう言うみっちゃんは少し、やっぱり心配と言うかなんというか、気遣ってくれているようだった。
「ううん…」
「気になるんなら…。会わせてやる。なんとでも…頑張るよ、俺は」
「それは本当に大丈夫。なんとも思ってないから」
「まぁ、俺がそう思っとるのだけは覚えといてな。いつでも遠慮せんと言うてや。
…例えばな。
俺の親は弁護士やし資産家やしもうそれはそれは名の知れた金持ちや」
「えっ」
初耳だ。
「俺ぼんぼんの息子やねん。昔から誰も、誰も俺になんてナメた口利かんかったよ。大人も子供も。それどころかみーんな、俺や姉ちゃんに気に入られようと必死やってん。
俺ってそんなやつなんよ」
「はぁ…」
「普通なら胸張って威張り腐っていいわけ。せやけど、胸も張れんし威張れもせん。
俺は俺だからだよ、小夜。」
「それ、あんま説得力ないと言うか…、ズレてねぇ?光也、飲みすぎじゃねぇ?」
飲んでないと思ってたが私が夢中になっていただけかもしれない。確かに考えてみれば仕事中飲んでるだろうし、上がってから一杯は注いだの見たけど…。今何杯目だかは見てないな。
「何杯目ですか?」
「上がってから3杯目」
「うわ、みっちゃん」
「明日には忘れてるからええねんな!
それより!
だから何が言いたいかっていうと、親なんてクソ食らえって言いたいわけだ」
「それは言い過ぎ。光也さんいい加減にして、めんどくさいから」
「嫌だね。珍しく俺が話てんだ、黙ってろ。
俺は父親の葬式すら行かんかった。骨すら拾わんかった。
それでええ。俺がどんな思いして、どうやって生きてきたかなんて、あいつら知らへんねん。だって、他人だから。
わかるやつがわかればいい。自分だけしか多分わからない。せやから、お前そんなこと言われたくらいで狼狽えんな。
安心せえ、お前は俺が知っている。多分全部は知らなくても、俺はお前の多くを見た、感じた。だから大切なんだよ。あー、何言ってるかわかんなくなってきた、言葉じゃ足りない」
とか言ってみっちゃんが私を抱き締めてきた。痛い、そしてお酒とタバコ臭い。けど嫌いじゃない。
「胸くそ悪い話で堪忍な」
「ううん…、みっちゃんありがとう」
みっちゃんの端っこを掴んだ。みっちゃんがこうして自分の話をするのなんてレアだ。多分明日には忘れてるって言ってるから、明日にはみっちゃんにとって、なかったことになっちゃうけど。
「聞けてよかったよ、みっちゃん」
ずっと、貴方は言わなかったから。
「出来れば忘れたくないな」
「忘れて欲しいな」
「考えとく」
それもまた、自分の足で立つことだと思うから。
「いや。なんか小夜が怖がってたからナンパでもされたんだろうって…なにそれメチャクチャ腹立つんだけど」
「今更!?」
「いやさぁ、は?ナンパの方がまだいいわ腹立つけど。
なんやそれ、てかあのガキ共どこの誰や」
「知らない…」
「うーん、それってさ。
当てずっぽうに言ったにしちゃぁ当たっちゃってるよね。なんだろ、ちと危険な臭いがするな。
誰かにさ、お母さんのこと、話たりとかしてないんでしょ?」
「てか、母親なんて忘れてましたよ…」
「なんか、覚えある?」
「いえ、まったく…」
「ストーカーとかかなぁ…」
「まぁなんにせよだ。そーゆー危険なやつがいるかもしれんってことだ。そこはまぁ、腕っぷしの立つドライバー真里様が送り迎えしたとしてや。
あいつらガキやろ?ガキにしちゃ質が悪い。わからん、何を考えているかは。俺も出来ることはするがぴったりくっついてるわけにもいかへんからな。自分でも気ぃつけや」
みっちゃん、いつの間にか関西弁になっている。最近気付いたが酔ってなくても興奮したり、気分の浮き沈みでこれは良く出るようだ。
「はい…」
「小夜はぼーっとしとるとこあるからな。あかんよ。気配を察したらまずは叫べ!誰もおらんかったら走る!」
「はい!」
「そしてな」
「はい…」
「…あれくらいでビビるなや」
「…はい」
「ええか?
お前と母親なんて今や知らん仲やろ。それとも…気になるか?」
そう言うみっちゃんは少し、やっぱり心配と言うかなんというか、気遣ってくれているようだった。
「ううん…」
「気になるんなら…。会わせてやる。なんとでも…頑張るよ、俺は」
「それは本当に大丈夫。なんとも思ってないから」
「まぁ、俺がそう思っとるのだけは覚えといてな。いつでも遠慮せんと言うてや。
…例えばな。
俺の親は弁護士やし資産家やしもうそれはそれは名の知れた金持ちや」
「えっ」
初耳だ。
「俺ぼんぼんの息子やねん。昔から誰も、誰も俺になんてナメた口利かんかったよ。大人も子供も。それどころかみーんな、俺や姉ちゃんに気に入られようと必死やってん。
俺ってそんなやつなんよ」
「はぁ…」
「普通なら胸張って威張り腐っていいわけ。せやけど、胸も張れんし威張れもせん。
俺は俺だからだよ、小夜。」
「それ、あんま説得力ないと言うか…、ズレてねぇ?光也、飲みすぎじゃねぇ?」
飲んでないと思ってたが私が夢中になっていただけかもしれない。確かに考えてみれば仕事中飲んでるだろうし、上がってから一杯は注いだの見たけど…。今何杯目だかは見てないな。
「何杯目ですか?」
「上がってから3杯目」
「うわ、みっちゃん」
「明日には忘れてるからええねんな!
それより!
だから何が言いたいかっていうと、親なんてクソ食らえって言いたいわけだ」
「それは言い過ぎ。光也さんいい加減にして、めんどくさいから」
「嫌だね。珍しく俺が話てんだ、黙ってろ。
俺は父親の葬式すら行かんかった。骨すら拾わんかった。
それでええ。俺がどんな思いして、どうやって生きてきたかなんて、あいつら知らへんねん。だって、他人だから。
わかるやつがわかればいい。自分だけしか多分わからない。せやから、お前そんなこと言われたくらいで狼狽えんな。
安心せえ、お前は俺が知っている。多分全部は知らなくても、俺はお前の多くを見た、感じた。だから大切なんだよ。あー、何言ってるかわかんなくなってきた、言葉じゃ足りない」
とか言ってみっちゃんが私を抱き締めてきた。痛い、そしてお酒とタバコ臭い。けど嫌いじゃない。
「胸くそ悪い話で堪忍な」
「ううん…、みっちゃんありがとう」
みっちゃんの端っこを掴んだ。みっちゃんがこうして自分の話をするのなんてレアだ。多分明日には忘れてるって言ってるから、明日にはみっちゃんにとって、なかったことになっちゃうけど。
「聞けてよかったよ、みっちゃん」
ずっと、貴方は言わなかったから。
「出来れば忘れたくないな」
「忘れて欲しいな」
「考えとく」
それもまた、自分の足で立つことだと思うから。
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