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それから隅で翡翠を出待ちしていた二人がどのように商談を纏めたのかを翡翠本人は知らない。
事を受け入れる手立てを済ませて翡翠が戻ればすぐに、奥の空いている見世へ通された。
店主は少年を手放す頃合いで「ごゆるりと」とその他と変わらない挨拶を残してまたふらっと帰っていく。
あの人一体何しに来たのさ。
翡翠が半ば不貞腐れる心持ちと武智の高揚が相反し、引っ張り込まれるかのように見世に入れば呆れた、布団も枕元の灯も用意されている。
あの間に用意したかすらは翡翠の知るところではないけれど、より一層に腹が立った。
障子を締め切ったかどうかの差は計れないが、武智はすぐに乱暴で縺れるようにその布団へ翡翠を押し倒す。
行灯が揺れた。
翡翠の心持ちが少し遅れたせいで「待って、」などと言うのは却って武智を煽ってしまったようで、「へへへ、」とまるで食い散らかす鳥のようにがっつき、翡翠の着物の肩を剥いで口を寄せた。
無表情に愛想も灯に浮かばない。
「綺麗なもんやなぁ、」
濡れきった声、荒々しく解かれる帯。
少しだけその、右肩に入る藤の入れ墨に歯を立てられ「…っ、」と翡翠は泣きたくなった。
解いた帯で手首を絞められ「ちょっ、」と抵抗しようとすればその手すら、武智に噛まれてしまう。
それは昔を思い出す、記憶が浮上し冷や汗が一気に吹き出た。
「待って、やめて!」と少年が懇願をしても「黙れや」と口を手で、荒く塞がれる。
「売り物やないし三分も払ったんや、どーせなら売り物に出来んことさせて貰いましょうやぁ、」
塞ぐ手に歯を立ててやろうと思えば、「店主も良い言うとんのや!」と大人に怒鳴られる。
そんな、
信じられないという心への衝撃が痛む。
だが、翡翠の無表情下の事。
涙目で武智を見つめた翡翠の露になった身体は白く繊細で、少しの傷も残ってしまいそうだった。
武智がそれに感嘆のような息を呑み、舐めるように藤を見つめているとわかる。
この男は自分の肩に墨を入れた男と同じ目をしている。歪んで快楽に塗れていて、それは透明でもねばついた物だと翡翠は知っている。
男がきっと背徳だとか、そんな勝手な物でまた藤に食らいつくのだと。
「……っ!」
「あんさん客取ったことないんやろ、なぁ?俺が教えてやるよ、」
噛み痕にしつこく粘っこい舌を這われるのが、痛い。
だがナメられたものだ。この程度の痛みなどと、舌の這うひりつきに「ふっ、」と、笑ってやりたくなった。
半ば翡翠は自暴自棄だった。
どうしても、あの男に作られたその他の快感すら、身体が思い出して熱を点すからだ。自分など、結局そうやって血に汚れている。
「なんや、」と武智が言うと同時にまだ褌を脱がないその逸物を、白くて細い足で絡むように擦ってやる。
武智の驚くような表情、相乗に快感が露になる。
その艶やかな膝から足の、動きは巧妙。
無表情で愛想も撒かない翡翠に武智は見惚れているよう。
薄笑いになる自分はきっと女と同じ物だ。その獣の目に移る自分の姿の先が見えるような気がした。
「…そうか、はは、これがいいか、」
鼻の下が伸びきる武智の緩い表情。
武智が翡翠の眼前で褌を取る。逸物がぶるっと勢いよく現れた。
翡翠は少し息を呑む。
武智が頬に逸物の先を押し付けてくる。
頬に、陰茎の先から溢れていた透明な体液が粘った。自分はいま快楽として汚されている、この、会ったばかりのよく知りもしない男に。
武智に何も命じられないうちに、翡翠は当然の如く己を咬み切りその陰茎の先端を唇で食む、そして深い口付けの手前のように舌を少し絡ませた。
そのうち深くし透明に滑るその口付けに少し、もどかしいように武智の腰が自然と動くのだが、雁首より少し先まで行ったり来たりを3回ほど繰り返されて軽く歯を立てた。
焦れったいのだろうか、武智に迷いのようなものが見えた。もしこのまま一気に奥まで来たらさぞ、歯が擦って痛かろう。
武智は察したのだろうか、雁首程に戻るけれども、その弾力にちゅっと音を立てて吸ってやる。
だが、少し息苦しい。
はぁ、と掛かるその自分の息が、武智の陰茎に絡み付く熱さ、湿り気を感じる。
武智が目に見えて、それに息を呑んだ。
「外して…くれたら、」とあざとく翡翠は武智に切れ切れな息と上目遣いで懇願をしてみる。
一瞬また武智は迷ったように動きを止める。
「あぁ、はぁ…」と、手枷は意外にもあっさり外された。
解放された手で起き上がった翡翠は無表情のまま。
武智には一瞬、間を作る程の困惑も沸いたよう、いや、半分は期待かもしれない。冷めて翡翠が見つめる先にはそれが見透かせる。
仕方がないと翡翠は意を汲み迷いを捨て武智の陰茎を軽く握りまた口に含むが、正直笑いが出そうだった。
初な物でもないんだ、自分など。
緩く、弱めに武智の陰茎をしごきながら舐めたり吸ったりを繰り返す。
待ちきれないとばかりに武智に前髪を緩く掴まれ、摂理に顔をあげる。
武智はじりじり、先程よりも余裕がなさそで間抜け面。
翡翠は少しだけ口元を意図的に緩ませ、その変態に薄笑いを投げつけてやった。
事を受け入れる手立てを済ませて翡翠が戻ればすぐに、奥の空いている見世へ通された。
店主は少年を手放す頃合いで「ごゆるりと」とその他と変わらない挨拶を残してまたふらっと帰っていく。
あの人一体何しに来たのさ。
翡翠が半ば不貞腐れる心持ちと武智の高揚が相反し、引っ張り込まれるかのように見世に入れば呆れた、布団も枕元の灯も用意されている。
あの間に用意したかすらは翡翠の知るところではないけれど、より一層に腹が立った。
障子を締め切ったかどうかの差は計れないが、武智はすぐに乱暴で縺れるようにその布団へ翡翠を押し倒す。
行灯が揺れた。
翡翠の心持ちが少し遅れたせいで「待って、」などと言うのは却って武智を煽ってしまったようで、「へへへ、」とまるで食い散らかす鳥のようにがっつき、翡翠の着物の肩を剥いで口を寄せた。
無表情に愛想も灯に浮かばない。
「綺麗なもんやなぁ、」
濡れきった声、荒々しく解かれる帯。
少しだけその、右肩に入る藤の入れ墨に歯を立てられ「…っ、」と翡翠は泣きたくなった。
解いた帯で手首を絞められ「ちょっ、」と抵抗しようとすればその手すら、武智に噛まれてしまう。
それは昔を思い出す、記憶が浮上し冷や汗が一気に吹き出た。
「待って、やめて!」と少年が懇願をしても「黙れや」と口を手で、荒く塞がれる。
「売り物やないし三分も払ったんや、どーせなら売り物に出来んことさせて貰いましょうやぁ、」
塞ぐ手に歯を立ててやろうと思えば、「店主も良い言うとんのや!」と大人に怒鳴られる。
そんな、
信じられないという心への衝撃が痛む。
だが、翡翠の無表情下の事。
涙目で武智を見つめた翡翠の露になった身体は白く繊細で、少しの傷も残ってしまいそうだった。
武智がそれに感嘆のような息を呑み、舐めるように藤を見つめているとわかる。
この男は自分の肩に墨を入れた男と同じ目をしている。歪んで快楽に塗れていて、それは透明でもねばついた物だと翡翠は知っている。
男がきっと背徳だとか、そんな勝手な物でまた藤に食らいつくのだと。
「……っ!」
「あんさん客取ったことないんやろ、なぁ?俺が教えてやるよ、」
噛み痕にしつこく粘っこい舌を這われるのが、痛い。
だがナメられたものだ。この程度の痛みなどと、舌の這うひりつきに「ふっ、」と、笑ってやりたくなった。
半ば翡翠は自暴自棄だった。
どうしても、あの男に作られたその他の快感すら、身体が思い出して熱を点すからだ。自分など、結局そうやって血に汚れている。
「なんや、」と武智が言うと同時にまだ褌を脱がないその逸物を、白くて細い足で絡むように擦ってやる。
武智の驚くような表情、相乗に快感が露になる。
その艶やかな膝から足の、動きは巧妙。
無表情で愛想も撒かない翡翠に武智は見惚れているよう。
薄笑いになる自分はきっと女と同じ物だ。その獣の目に移る自分の姿の先が見えるような気がした。
「…そうか、はは、これがいいか、」
鼻の下が伸びきる武智の緩い表情。
武智が翡翠の眼前で褌を取る。逸物がぶるっと勢いよく現れた。
翡翠は少し息を呑む。
武智が頬に逸物の先を押し付けてくる。
頬に、陰茎の先から溢れていた透明な体液が粘った。自分はいま快楽として汚されている、この、会ったばかりのよく知りもしない男に。
武智に何も命じられないうちに、翡翠は当然の如く己を咬み切りその陰茎の先端を唇で食む、そして深い口付けの手前のように舌を少し絡ませた。
そのうち深くし透明に滑るその口付けに少し、もどかしいように武智の腰が自然と動くのだが、雁首より少し先まで行ったり来たりを3回ほど繰り返されて軽く歯を立てた。
焦れったいのだろうか、武智に迷いのようなものが見えた。もしこのまま一気に奥まで来たらさぞ、歯が擦って痛かろう。
武智は察したのだろうか、雁首程に戻るけれども、その弾力にちゅっと音を立てて吸ってやる。
だが、少し息苦しい。
はぁ、と掛かるその自分の息が、武智の陰茎に絡み付く熱さ、湿り気を感じる。
武智が目に見えて、それに息を呑んだ。
「外して…くれたら、」とあざとく翡翠は武智に切れ切れな息と上目遣いで懇願をしてみる。
一瞬また武智は迷ったように動きを止める。
「あぁ、はぁ…」と、手枷は意外にもあっさり外された。
解放された手で起き上がった翡翠は無表情のまま。
武智には一瞬、間を作る程の困惑も沸いたよう、いや、半分は期待かもしれない。冷めて翡翠が見つめる先にはそれが見透かせる。
仕方がないと翡翠は意を汲み迷いを捨て武智の陰茎を軽く握りまた口に含むが、正直笑いが出そうだった。
初な物でもないんだ、自分など。
緩く、弱めに武智の陰茎をしごきながら舐めたり吸ったりを繰り返す。
待ちきれないとばかりに武智に前髪を緩く掴まれ、摂理に顔をあげる。
武智はじりじり、先程よりも余裕がなさそで間抜け面。
翡翠は少しだけ口元を意図的に緩ませ、その変態に薄笑いを投げつけてやった。
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2022/02/15をもって、こちらの短編集は完結とさせていただきます。
ありがとうございました。
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