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つまりそれは…。
「ソラはどういう…」
「逆というか…。
テストステロンが少なく、男性器があるため、エストロゲンがあまり作られないはずが、男性もアンドロゲンから変換はされる。ソラはアンドロゲン分泌が多いため、変換量が何故か多いと推測される。
しかしプロゲステロンが少ないのでイライラしやすい子ではないが、刺激がいまいち少ないので精通がなく毛もない。これかな」
「何かの拍子に俺みたく」
「可能性は大だ。成長期だし。女性の方が成長が早いのはプロゲステロンのせいなんだが、二人ともそれが各々の性より少ない。君の場合突然プロゲステロンが増えたのは、母性本能ではないかと考える。プロゲステロンは脳に子宮のいろいろを伝達して促す効果があるからね」
「母性本能…」
なんか、
変な感じ。
「じゃぁソラは、なにか、もう少し男性的な何かを感じたら」
「エストロゲンの減少が考えられるね」
「つまり…」
自分は男性ホルモンが多い女性、ソラは女性ホルモンが多い男性、なのか、結果は。
「…俺はどちらかと言えばやはり女と言う結論?」
「そうだね…」
雨川は溜め息を吐いた。
「だけど着床時期が少なく、と言うか卵巣があまり働かないとなると、たまに来るかもしれないこの生理には」
「…うん」
意味があまりない。
なんだそれ。
本当にどっち付かずじゃん。
「プロゲステロンには骨盤の開閉の役割もある。閉まってるときが着床しやすくやる気が出る。増えるとやる気がなくなっちゃうわけさ」
「ん?」
「性欲が半端なくなるね雨川くん」
「…あ、」
覚えがある。
触診だ。ヤケにそう、感度があれである。
「俺はなんでそうなっちゃったの?」
その質問には「…不思議だね、」と、なんだか南沢は濁していた。
本当はわかっている。
兄が仕出かしてきたこと、雨川と小さい頃から共に暮らしてあの男がやってしまったこと。
小児気に大量の男性ホルモンを投与した。学者故の興味らしいが。
単に兄は、自分の母を見て、また、モテる男だったが母のせいで、どこか女性を軽蔑していた。
雨川はずっとそれで育てられてしまった。南沢が「女性だ」と言うまで、自分は男として育ってしまった。
だがあの男は雨川に傷を付けた。性に奔放すぎた故の残虐だった。
「まぁ、寝なよ雨川くん。付き合ってくれてありがとう。
夕飯は何が良い?」
横になるように雨川を促せば、すぐに素直に横になり「麻婆豆腐」と言ってうとうとし始めた。
目を閉じて少ししてから南沢も寝転がり、そっと雨川を抱き締めた。
思い出すだけで忌々しかった。
中学三年のとき、リビングを開ければ上下に揺れるソファと、兄に凭れて疲れ果て、意識が危うかった小さな雨川のあの、兄の肩に力なく回された腕に。
死んだ目で自分を見上げた雨川は何も言わないのに、兄は楽しそうに自分に、
「あぁ、お帰り。見ろよこれ」
と、
雨川の腰を掴んで無理矢理、というか痛々しいまでに遊んでいた。
そこら中に染みた血と、兄の欲と。一体どれくらいそうしてたか、凄惨すぎて着いていけなかった。
殴られた綺麗な雨川の裸体すら、見ていられるものでなく。泣いた跡のある雨川の目元に、
激しい殺意が沸いた。
だが、兄はおかしくなっていたのは、大分前から気付いていた。
「こいつも、メス属だよ、どいつもこいつも、俺を愚弄しやがってっ、」
腰を動かしながら言う兄に「辞めろよ真夏、」と肩を掴んで制しようとすれば、兄の表情は泣いていて。
あぁ、なんでだろ。そればかりが募った。耳奥で「痛ぃ、」と聞こえて。
起きた。どうやら寝ていた。
真横にいる雨川の表情は辛そうだった。歯ぎしりするほどだ。
やはり強めの鎮痛剤でもダメかと、南沢は「よしよし…」と背を撫でたが。
情けなくも股間が元気を出していた。
仕方がない。俺はこいつが好きだから。不機嫌さも、なんだかんだで休日に趣味に付き合ってくれることも、そして、兄を忘れてしまっていることも。
「真冬、ごめんな」
背を撫でながらふと出てきた素直な南沢の一言だった。
男性でありたい君を、こんな形で愛してしまって、俺は歪んでいる。俺も兄のように、おかしいのかも知れないが。
君をどうしても見届けたいんだ、兄に変わり。あいつが犯した罪のせいで、こうなってしまった、本当は自分に忠実な君を、どうしても。
「ナツエ、」
後ろから声がして。
振り返ればソラが立っていた。
果たして、君の過去は、どうしたんだろうね、ソラ。
「スケベしてるの?」
また。
自分の語録をこの子供は覚えてしまったらしい。
「スケベしたいねぇ。好きだからね」
「好きだと、すること?」
「そうだよ。まぁ、」
出来ないんだけど。いまの俺には。
至極笑おうと努め、南沢はソラに「お豆腐を切ってください」と頼む。
「スケベしないでね」と楽しそうにソラは言い、キッチンへ消えた。虚しく南沢は「よーしよし…」と、苦しそうに寝る雨川の背を、撫でた。
「ソラはどういう…」
「逆というか…。
テストステロンが少なく、男性器があるため、エストロゲンがあまり作られないはずが、男性もアンドロゲンから変換はされる。ソラはアンドロゲン分泌が多いため、変換量が何故か多いと推測される。
しかしプロゲステロンが少ないのでイライラしやすい子ではないが、刺激がいまいち少ないので精通がなく毛もない。これかな」
「何かの拍子に俺みたく」
「可能性は大だ。成長期だし。女性の方が成長が早いのはプロゲステロンのせいなんだが、二人ともそれが各々の性より少ない。君の場合突然プロゲステロンが増えたのは、母性本能ではないかと考える。プロゲステロンは脳に子宮のいろいろを伝達して促す効果があるからね」
「母性本能…」
なんか、
変な感じ。
「じゃぁソラは、なにか、もう少し男性的な何かを感じたら」
「エストロゲンの減少が考えられるね」
「つまり…」
自分は男性ホルモンが多い女性、ソラは女性ホルモンが多い男性、なのか、結果は。
「…俺はどちらかと言えばやはり女と言う結論?」
「そうだね…」
雨川は溜め息を吐いた。
「だけど着床時期が少なく、と言うか卵巣があまり働かないとなると、たまに来るかもしれないこの生理には」
「…うん」
意味があまりない。
なんだそれ。
本当にどっち付かずじゃん。
「プロゲステロンには骨盤の開閉の役割もある。閉まってるときが着床しやすくやる気が出る。増えるとやる気がなくなっちゃうわけさ」
「ん?」
「性欲が半端なくなるね雨川くん」
「…あ、」
覚えがある。
触診だ。ヤケにそう、感度があれである。
「俺はなんでそうなっちゃったの?」
その質問には「…不思議だね、」と、なんだか南沢は濁していた。
本当はわかっている。
兄が仕出かしてきたこと、雨川と小さい頃から共に暮らしてあの男がやってしまったこと。
小児気に大量の男性ホルモンを投与した。学者故の興味らしいが。
単に兄は、自分の母を見て、また、モテる男だったが母のせいで、どこか女性を軽蔑していた。
雨川はずっとそれで育てられてしまった。南沢が「女性だ」と言うまで、自分は男として育ってしまった。
だがあの男は雨川に傷を付けた。性に奔放すぎた故の残虐だった。
「まぁ、寝なよ雨川くん。付き合ってくれてありがとう。
夕飯は何が良い?」
横になるように雨川を促せば、すぐに素直に横になり「麻婆豆腐」と言ってうとうとし始めた。
目を閉じて少ししてから南沢も寝転がり、そっと雨川を抱き締めた。
思い出すだけで忌々しかった。
中学三年のとき、リビングを開ければ上下に揺れるソファと、兄に凭れて疲れ果て、意識が危うかった小さな雨川のあの、兄の肩に力なく回された腕に。
死んだ目で自分を見上げた雨川は何も言わないのに、兄は楽しそうに自分に、
「あぁ、お帰り。見ろよこれ」
と、
雨川の腰を掴んで無理矢理、というか痛々しいまでに遊んでいた。
そこら中に染みた血と、兄の欲と。一体どれくらいそうしてたか、凄惨すぎて着いていけなかった。
殴られた綺麗な雨川の裸体すら、見ていられるものでなく。泣いた跡のある雨川の目元に、
激しい殺意が沸いた。
だが、兄はおかしくなっていたのは、大分前から気付いていた。
「こいつも、メス属だよ、どいつもこいつも、俺を愚弄しやがってっ、」
腰を動かしながら言う兄に「辞めろよ真夏、」と肩を掴んで制しようとすれば、兄の表情は泣いていて。
あぁ、なんでだろ。そればかりが募った。耳奥で「痛ぃ、」と聞こえて。
起きた。どうやら寝ていた。
真横にいる雨川の表情は辛そうだった。歯ぎしりするほどだ。
やはり強めの鎮痛剤でもダメかと、南沢は「よしよし…」と背を撫でたが。
情けなくも股間が元気を出していた。
仕方がない。俺はこいつが好きだから。不機嫌さも、なんだかんだで休日に趣味に付き合ってくれることも、そして、兄を忘れてしまっていることも。
「真冬、ごめんな」
背を撫でながらふと出てきた素直な南沢の一言だった。
男性でありたい君を、こんな形で愛してしまって、俺は歪んでいる。俺も兄のように、おかしいのかも知れないが。
君をどうしても見届けたいんだ、兄に変わり。あいつが犯した罪のせいで、こうなってしまった、本当は自分に忠実な君を、どうしても。
「ナツエ、」
後ろから声がして。
振り返ればソラが立っていた。
果たして、君の過去は、どうしたんだろうね、ソラ。
「スケベしてるの?」
また。
自分の語録をこの子供は覚えてしまったらしい。
「スケベしたいねぇ。好きだからね」
「好きだと、すること?」
「そうだよ。まぁ、」
出来ないんだけど。いまの俺には。
至極笑おうと努め、南沢はソラに「お豆腐を切ってください」と頼む。
「スケベしないでね」と楽しそうにソラは言い、キッチンへ消えた。虚しく南沢は「よーしよし…」と、苦しそうに寝る雨川の背を、撫でた。
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