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Freak Disorder
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モヤモヤした気持ちのまま隣の棟の渡り廊下を早足で過ぎ階段を上がり理科室に着いたのは、1分前くらい。
チャイムと同時にさっきの二人が入ってきて「相田、遅いぞ」と理科の先生に言われ号令が掛かった。
理科室では相田さんの彼氏が実験台の向こう側の席だ、と忘れていた。名前順、志波の向かい側の高木くんは「おい志波」と、不機嫌そうに言ってくる。
「お前さっき見たよな」
「…いや、」
「惚けんなよ。バラしたら殺すからな」
そうか、見せつけようとしていたのかと理解した。
「…見せたかったんじゃなかったの」
セットした長めの髪は少し崩れていて「あぁ?」と恫喝されてしまうのだから堪ったもんじゃない。
似合わない恋人。
「…殺すぞこの野郎」
静かに言うけど同じ班の子は「どうした、二人とも」と声を掛けてくる。
くだらない、けれど居心地が悪い。
「…別になんとも思ってないから。そんなに怒らないでよ」
それにしんとしてしまいクラス全体が気付き始めてしまう。気まずい。だけど、くだらない。
「…前からてめぇの態度気に入らね」
「2班、どうした」
先生が声を掛けてくる。
高木くんは今の敵意を一瞬亡くしたように俺を見つめ、言葉を飲んだようだった。
黙った教室に「…仲良くな」と先生は教科書を開き「教科書64ページ」と指示をする。
高木くんは不貞腐れたように「面良いからって調子込みやがって」と、恐らく俺に吐き捨てた。
やってられない。
自然災害かよとイライラもして俺は立ち上がった。
高木くんは唖然としたように見上げるしクラスもまた「志波、」と唖然としているのだけど「座りなさい」と言う先生にも構わず教科書とノートを持ちこの場を去ろうと考えた。
待ちなさい、志波、と呼ばれるのもうざったいので「保健室に行ってきます」と、あとはざわめき始めたのも気にせず理科室を出たけど「おい志波!」と高木くんが出てきたようだ。
だけど気にしない。
廊下、雑踏もなくなりお経のような授業の声が響いた廊下に、溜め息が出るほど嫌になった。
保健室に先輩はいるかなぁ。
少し気になった。良い機会だし行ってみようと思い立つ。
けれども向かっている最中、何かそれは意味があるのかなだとか、そんなことをふと考える。特に会ったって何もないだろうし、会ったからなんだと言うのだろう。
でも、足は止まらない。やり場がなく止まらない。
なんだか、心が酷く乾いている気がするな。
俺の青春はなんだろう。
高校に来た理由は辺鄙だった。知り合いの少ない場所。そこまでして俺は何かから逃れたいと、本気でそう思ったのだろうか。だから、みんなから一線を引いてしまうのだろうかと疑問を抱く。
…そして、だからそういう意味じゃないというのもわかっているのに、顔のことを言われたのは胸がムカムカする。
保健室の扉を開けるとすぐあの先輩がいて、心臓が止まりそうになった。
ジャージに「鳴海」と刺繍されいる。
彼はドアのすぐ前のソファーで裾を捲り、右のふくらはぎを揉んでいた。
一重だったんだ。
見上げた彼のハッキリした瞳が少し下がり「あぁ、利用かな?」と訪ねられて戸惑った。
「悪いな。今俺しかいないんだ。橋都賀先生、すぐ戻るはずだから名前を書いておいてくれないか」
「あ、はい…」
ソファのすぐ側には2リットルのスポーツドリンク、ゴミ箱には沢山の茶色いテープやら湿布のゴミと何かの薬のシートが捨てられている。
「どうしたんですか、」
つい、声を掛けてしまった。
言ってしまったと気付いたのだが「あぁ、体育で足を痛めたんだ」と、何事もないことのように爽やかな笑顔で、先輩はそう言った。
テーピングされた足は無駄も嫌味もなく筋肉がついていた。意外と綺麗なんだな、スマートだと眺めてしまう。
微振動に揺れていた。
これはもしかして痙攣なんだろうか。
「大丈夫ですか?」
「ん?うん、まぁ…処理も早いから。いまはちょっと痛いけど。君も具合は大丈夫かい?」
言われてしまっては「あ、はい…」と微妙な返事になってしまうけれど実際には別に具合は悪くない。
「ベッドなら全部空いてるよ」と言われて取り敢えず寝てみようと思った。
ベッドに入ってすぐに「あったよ鳴海」と先生が入ってきたようだった。
今日は無理なんじゃない?切れちゃうし。いや、部活までにはなんとかなりますよ。
そんな会話が聞こえて来る。
「…このまま行ったらホントにダメになっちゃうよ、それはもう痙攣してるでしょ」
「少しやってダメだったらちゃんと帰ります。冷やせば大分変わるでしょう?」
「先生としては今日はもうやめなさいと言うけど。知らないよ?
あんたは大学も4年あるし、いま切っちゃうこともないでしょ」
先輩、そんなに酷いんだ。
それって相当痛かったんじゃないか、さっきだって。
「…そうだ、さっき1人来たからベッドに通しました」
「ん?」
ガサガサと音がするのみになる。
先生はきっといま俺の名前と「体調不良」を確認しているのだろう。
チャイムと同時にさっきの二人が入ってきて「相田、遅いぞ」と理科の先生に言われ号令が掛かった。
理科室では相田さんの彼氏が実験台の向こう側の席だ、と忘れていた。名前順、志波の向かい側の高木くんは「おい志波」と、不機嫌そうに言ってくる。
「お前さっき見たよな」
「…いや、」
「惚けんなよ。バラしたら殺すからな」
そうか、見せつけようとしていたのかと理解した。
「…見せたかったんじゃなかったの」
セットした長めの髪は少し崩れていて「あぁ?」と恫喝されてしまうのだから堪ったもんじゃない。
似合わない恋人。
「…殺すぞこの野郎」
静かに言うけど同じ班の子は「どうした、二人とも」と声を掛けてくる。
くだらない、けれど居心地が悪い。
「…別になんとも思ってないから。そんなに怒らないでよ」
それにしんとしてしまいクラス全体が気付き始めてしまう。気まずい。だけど、くだらない。
「…前からてめぇの態度気に入らね」
「2班、どうした」
先生が声を掛けてくる。
高木くんは今の敵意を一瞬亡くしたように俺を見つめ、言葉を飲んだようだった。
黙った教室に「…仲良くな」と先生は教科書を開き「教科書64ページ」と指示をする。
高木くんは不貞腐れたように「面良いからって調子込みやがって」と、恐らく俺に吐き捨てた。
やってられない。
自然災害かよとイライラもして俺は立ち上がった。
高木くんは唖然としたように見上げるしクラスもまた「志波、」と唖然としているのだけど「座りなさい」と言う先生にも構わず教科書とノートを持ちこの場を去ろうと考えた。
待ちなさい、志波、と呼ばれるのもうざったいので「保健室に行ってきます」と、あとはざわめき始めたのも気にせず理科室を出たけど「おい志波!」と高木くんが出てきたようだ。
だけど気にしない。
廊下、雑踏もなくなりお経のような授業の声が響いた廊下に、溜め息が出るほど嫌になった。
保健室に先輩はいるかなぁ。
少し気になった。良い機会だし行ってみようと思い立つ。
けれども向かっている最中、何かそれは意味があるのかなだとか、そんなことをふと考える。特に会ったって何もないだろうし、会ったからなんだと言うのだろう。
でも、足は止まらない。やり場がなく止まらない。
なんだか、心が酷く乾いている気がするな。
俺の青春はなんだろう。
高校に来た理由は辺鄙だった。知り合いの少ない場所。そこまでして俺は何かから逃れたいと、本気でそう思ったのだろうか。だから、みんなから一線を引いてしまうのだろうかと疑問を抱く。
…そして、だからそういう意味じゃないというのもわかっているのに、顔のことを言われたのは胸がムカムカする。
保健室の扉を開けるとすぐあの先輩がいて、心臓が止まりそうになった。
ジャージに「鳴海」と刺繍されいる。
彼はドアのすぐ前のソファーで裾を捲り、右のふくらはぎを揉んでいた。
一重だったんだ。
見上げた彼のハッキリした瞳が少し下がり「あぁ、利用かな?」と訪ねられて戸惑った。
「悪いな。今俺しかいないんだ。橋都賀先生、すぐ戻るはずだから名前を書いておいてくれないか」
「あ、はい…」
ソファのすぐ側には2リットルのスポーツドリンク、ゴミ箱には沢山の茶色いテープやら湿布のゴミと何かの薬のシートが捨てられている。
「どうしたんですか、」
つい、声を掛けてしまった。
言ってしまったと気付いたのだが「あぁ、体育で足を痛めたんだ」と、何事もないことのように爽やかな笑顔で、先輩はそう言った。
テーピングされた足は無駄も嫌味もなく筋肉がついていた。意外と綺麗なんだな、スマートだと眺めてしまう。
微振動に揺れていた。
これはもしかして痙攣なんだろうか。
「大丈夫ですか?」
「ん?うん、まぁ…処理も早いから。いまはちょっと痛いけど。君も具合は大丈夫かい?」
言われてしまっては「あ、はい…」と微妙な返事になってしまうけれど実際には別に具合は悪くない。
「ベッドなら全部空いてるよ」と言われて取り敢えず寝てみようと思った。
ベッドに入ってすぐに「あったよ鳴海」と先生が入ってきたようだった。
今日は無理なんじゃない?切れちゃうし。いや、部活までにはなんとかなりますよ。
そんな会話が聞こえて来る。
「…このまま行ったらホントにダメになっちゃうよ、それはもう痙攣してるでしょ」
「少しやってダメだったらちゃんと帰ります。冷やせば大分変わるでしょう?」
「先生としては今日はもうやめなさいと言うけど。知らないよ?
あんたは大学も4年あるし、いま切っちゃうこともないでしょ」
先輩、そんなに酷いんだ。
それって相当痛かったんじゃないか、さっきだって。
「…そうだ、さっき1人来たからベッドに通しました」
「ん?」
ガサガサと音がするのみになる。
先生はきっといま俺の名前と「体調不良」を確認しているのだろう。
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