アルカロイド

二色燕𠀋

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White Dust

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「楓ちゃんっ?」

 苦いもんだ。

「え、ウェットティッシュあるからあの…」

 反応が面白いもんだな。少し微笑ましい気がして腕まで舐めてみればマーサが生唾を飲んだのが見て取れる。

 頭を撫でようとしたのか、離そうとしたのか定かになる前に「よい、しょっ、」離れてマーサの性器を抜いたのも少し、痺れる、声が出そうになった。

「…半勃ちでも相当あたるね、」
「おぉお、え?」
「んー、」

 驚いたままだったのでそこから押し倒すのは楽だった。

 「あ、マジ?もういっ…」と言っている間にマーサのゴムを外すのも楽だった。「え?ちょっ、なに?」と萎えつつある性器を口に含んだらゴムの味、だけど少し苦いような、まだ甘いような。

 「ふっ…、」と成り行きを見守っている怯えたような、期待のようなマーサの眼差しに、笑いかけてみたかったが、出来ない。
 「楓くん、」とあの男の優しい声が脳に絡み付く気がして妙に傷心していく。それと合わさるように口の中がキツくなるのだから、思考は少し、残虐だなと先を舌で押したり開いたりと味わっていく。

「…っ、」

 何も言えずに眺めている彼は皮肉そうな顔をしている気がして仕方ないから、自分の性器に手を掛けるのだけど、「大丈夫だよ、楓、」と悲しそうな気がしたその声は記憶の中でどれとも被らなかった。

 そこから眺めてみた彼の、どこか心配そうな宇宙の広さがある瞳に、俺は何に感傷的になっているんだろうか、と少し緊張は解れた。その配慮が時に、呼吸不全になりそうなほど甘く切ないのだから、性器に伸ばした手は行き先を変え、口も離してまずは恋人を上から眺めてみる。

 事の成り行きを見つめることにしたらしい恋人に漸く傷心出来たから、上書きして塗りたくりたいな、と自棄になり枕元のローションとゴムを手に取った。

「あ、マジで?そのパターン?」

 手に取ったローションの冷たさに「ひや~」と声が出た。これは暫く暖めなければならないと掌で遊んでみる。

「なにが?」
「…いやぁなんと言うか、予想外と言うか…」
「うんまぁ、わくわくする?」
「確かにどっちかなってのは…」

 ちょっと遊んでやろうかなと、少し暖まったローションでマーサの性器を握り遊び始めれば「そっちかー!」と言うのには「あはは」と笑ってしまい、ゆったりマーサの穴に指を入れた。

「…たまにあんた、雄スイッチが、ありますよねっ、」
「まぁねぇ」
「…たまには、言ってほし、欲しいもんです、」
「健気に毎回洗ってるの知ってるもん」
「…ヒドイ大人、」

 ねちゃねちゃ。
 しばらくは無言。久しぶりだなぁ、なんか、わくわくしてきた気がする。

 ヒドイ、大人、か。
 生でいい?とも聞けなくなったな、ちゃんと、して。

『楓、これはなに?』

 母親の困惑した顔がふいに浮かんだ。信じられないだとか、嘘でしょ?だとか、恐怖に近いものだったそれに、あぁ悪いことだったんだと、確信したんだ。

「…まぁさ、」

 充分かな、と足を持ち上げて、マーサが力を抜いたのがわかったから、ゴムして場所を確認して、けど。

「ぃっ…!」

 息が止まりそうなマーサの息と「うぅっ、」が一気に重なった。
 
 はぁ、と漸く息を一息吐いたマーサの目は、びっくりか痛かったのかまぁ一気に進んでしまったし、涙を浮かべて睨み付けるのが、やっぱり、母親のそれだけど。

 自分の汗ばんだ髪が視界に入って、息をしようかと思えば「…ごめんねぇ、マーサ」と、痺れるような、歯が鳴りそうな、なんだか弱い声が出てしまった。

「…楓?」

 最悪だろうな。萎えるかもと思ったが、慈悲深い目に変わったマーサが髪を耳に掛けてくれて「…いいよ」と、そのまま手を腰辺りに回す。
 熱い。

「頑張って下さいな、楓さん」
「…ははっ、」

 笑いと共になぜ泣きそうになるのか。

 ギシギシいうベットに「これはお馬さんごっこだよ楓くん」と、先生の膝に乗って、あれは素股だよなとか、はぁはぁいう年下のマーサだとか、ぐちゃぐちゃになる。俺は母の帰りを待っていただけで、先生は優しい先生だったのに、どうして浮上してくるのかな。
 「足を閉じておいて」と、言われて、マーサのように、いまのように裸じゃなかったけど、やっぱりおかしかったな、これは、なんなんだろう。

 「イくから、」で、最終的にはマーサの方がやはり力持ちだった。軽々半身を起き上がらせてキツくなり「あっ、」と言う間にキスをされて、崩れ落ちるような景色に、二人で駆け抜け、終わってしまった。

 力はなくなったが抱き締めてくれたマーサはとても幸せそうに笑ったのだった。

 頭が、真っ白になった。じわりと、広がっていく、けど何が混ざる?
 誰もいない、空、誰もいない宇宙は。
 灰色か。
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