アルカロイド

二色燕𠀋

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White Dust

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『楓くん、可愛いなぁ…、』

 ふと耳元に、背中から湿った声が掛かった気がして。

「ねぇ楓、」

 その耳元に熱い手が伸び、マーサの、湿った微笑みとじわりと汗をかいた額が目に入る。

 腹の底が熱いのを思い出したら、マーサが切れ切れな、静かな呼吸に「こんなとき、っ…なに、考えてるの?」と、言う年下の好機な目に、少し考えてしまった。

 自分の息も上がっている。

 首元に触れていたマーサの手は動く喉仏を撫で、マーサは俺の性器を眺め、そこへ滑りそうなのだけどその手を取り、ただ暖かい掌を頬に感じていたかった。

「…、一回、休憩する?」
「…ううん、」
「…もうちょっと?」

 腹の中でマーサが少し落ち着いたのがわかった。それはもどかしかったようで、マーサが俺の腰を掴んでいた手を思い出す。「なんかめちゃエロい顔してる」と言うのに若干興奮した。

「あっ、急に」

 逃がしたくないと、突かれるより先に動いてやろうとふと意識を掠めた。腰の手を、あの太腿へ誘導してしまった自分に嫌悪も、興奮もすることが俺の腹の底にある何かを掻き立てた。

 ここは目映い。

「うっ、へ、か、楓ちゃん?だ、大丈夫?まだ、息が」
「大丈夫、もっと、」

 なんとも言えない年下の彼は一気に、少し余裕を欠いたらしい。吐き出すと言うよりは堪えたように「くっ、」と息をしたら自分の性器はいつの間にか握られ、しごかれていて。
 「あっ、」と言う間に快楽の主導権が塗り替えられた。

 半身を起こした恋人はそのせいで奥を、腹の奥を苛めるように突いてくる、それが堪らなくなるような、どこかへ行ってしまいたくなるような、いや、脳内はぐちゃぐちゃで激しくアドレナリンに犯されてた。

 遠くなる、突き放され…、

「うぅっ…、」

 意識で駆け抜ける。耐えた自分の声まで脳に響いて、力は抜けてその肩に凭れた。

 自分を支えていた片腕の力も抜けそうだったが「はぁ…、楓?」と、疲れながら優しく顔を覗き込んだ恋人、次に視線は腹元。

 つられて眺めた。流星のようだ。どうやら自分はイッてしまったらしい、マーサの右手は精子で汚れていた。

 一度落ち着くように「よしよし」と背中を撫でる年下に申し訳なくなった。しかし話そうにも、息が上がってなにも言えない。

 マーサの「よしよし」と「よしよし」と首筋にかかるあの…椅子の上で、夜で、目の前は朧に電気スタンドの光があるのに、暗い向こう側の夜、窓ガラスに映った幼い自分が交差した。

 あれ、多分おかしいよな。
 意識を流星のように駆け抜けた景色。

「…まーさ、」
「ん?」

 腹の中にまだマーサの性器はあるが、まぁまぁ冷めているだろう。

 少し背を撫でてから体勢を変えようかと太腿を掴むマーサの動きの先はわかったが、「待って、」と弱めの声が出た。

「…いいよ、楓。ちょっと落ち着い」

 マーサの汚れた右手を手に取り、「ん?」と言う間にその手に舌を、這わせた。
 驚いたようだった。
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