22 / 73
迷睡
4
しおりを挟む
「楓、」
ダルいような、けど甘い空気。
向けられた背中の右肩甲骨辺りに、小さな黒子を発見した。
それを食めば、「ん、なに…?」と楓がまだ切ない声をあげた。
「黒子」
「…そこ?」
「うん」
背中を抱き締め、恐る恐る、慎重にその腕に手が伸びる。
「真麻、」と、耳の横で聞こえるのだから、髪を掛けて「好きだよ」と吐き掛ける。
甘さに、また興奮してきて、太股の黒子あたりをすりすりと汚して、そして張った首筋を食む。
少し、身体を縮こまらせたようだった。
はぁ。
と腕の中が甘い。
そのまま楓の性器を軽く指先で弄れば、多分興奮はあるのだが、少し穏やかだった。
「…疲れたね」
「うん、でも、ね」
「ん?」
「中で、」
その、破壊衝動に俺はきっと。
「ダメだよ。明日が辛いでしょ」
「明日また、」
「いいよ。たっぷり、ゆっくり。
…息が熱いけど、眠い?」
「…ちょっと」
「よしよし」
頭を撫でると、気持ち良さそうに緩く微笑み、少しだけ身を翻しては、アゴをさらっと舐める楓。
堪らなくて、少し下を向いてぐちゃぐちゃにキスをするだけで、勿論興奮してしまう。第二回戦に「若いなぁ」という後頭部も緩く撫で、くしゃくしゃにして。
「…やっぱ、」
「うん…」
「いい?」
「うん」
背中を撫で上げ、また組み敷いて、肩にまわる手に、ああ捕まっていると体温を感じて。
髭で優しく耳から、首から、鎖骨から、乳首まで。食んで触れる場所すべてが甘い。混乱するような酩酊が、凄く。
結局、痩せていてより筋ばった肋骨も、腸骨も、痛々しいけど、舌触りが好き。
腹あたりを舌で舐めると「最近、さ」と言う。
「ちょっと、弛んできたかな」
「んー」
確かに。
出会った頃よりは年を重ねた。そうか、もう30が近いね、楓。
「けど、好きだよ」
「…そう?」
「より暖かい」
「ねぇ、」
臍あたりの筋に舌を這わせれば「まぁさ、」と切ない。
「温泉、」
「ん?」
「どこ、だったの?」
「…箱根?あたり」
「ん、そうなんだぁ、」
「気持ちよかった?」
「んん、」
性器を撫でる。
「あぁ、うん」と息が切れ切れになるのに、「またやろうね」と言えるのが、幸せだった。
「ま…あさ、」
「うん」
「あぁ、あの、」
頭を、乱すように撫でられる。だから、乱すように中を擦って。
「どうして、」あぁ、いまはさ。
「どうして、俺だった?」
「楓」
こんな灰色の俺なんかを、と濡れて虚ろに続ける。
「いや、」
真っ白な、その溶けそうな破壊衝動が。
「仕方ないじゃん」
せせらぎに降り注いだその衝動を、ただ見送っていきたかったんだよ、俺はずっと。
「いつか、行きたいね、楓」
「うん…?」
「箱根湯本?」
「まぁさ、」
休憩をするように、一回キスをして。
何もかもぐちゃぐちゃで、甘く溺れていく。「力を抜いて」と、息を吐くように導いて。
楓の目は酷く、怯えたような泣きそうなような色っぽさを持っていて。
虚ろなそれは確かに、灰色に見えるのかもしれないけどさ。
何度目かにしても苦しいくらいにキツかった。
何度でも、何度かわからなくなっても。
「あっ、」と、実に色っぽい。だが仰け反って逃げそうなので、抱いたまま起きる。
それで余裕なくも「あぁっ、」と笑った楓の細い腰を掴んだ。
「好きだよね、楓これ」
「んんっ、」
「俺もね、まぁ、捕まえてる感あって好き」
「ん、うん」
「だから、」
行かないでね、どこにも。
「はっ、」と呼吸が止まり、締まり、楓は射精した。
くったり凭れた楓の耳元に聞こえるか、わからないから「好きだよ、」と。聞こえているかはわからないから。
それもいつかわからなくなるまで。灰色で真っ白なこの破壊衝動に、混乱するように。
息をなくすまで、好きだよ。飲み込んで、この世界に酔っていたい。愛とか、そんな何色かわからないものの意味が、なくなるまで、ずっと。逃げるよりは、追いかけるようにさ。
ダルいような、けど甘い空気。
向けられた背中の右肩甲骨辺りに、小さな黒子を発見した。
それを食めば、「ん、なに…?」と楓がまだ切ない声をあげた。
「黒子」
「…そこ?」
「うん」
背中を抱き締め、恐る恐る、慎重にその腕に手が伸びる。
「真麻、」と、耳の横で聞こえるのだから、髪を掛けて「好きだよ」と吐き掛ける。
甘さに、また興奮してきて、太股の黒子あたりをすりすりと汚して、そして張った首筋を食む。
少し、身体を縮こまらせたようだった。
はぁ。
と腕の中が甘い。
そのまま楓の性器を軽く指先で弄れば、多分興奮はあるのだが、少し穏やかだった。
「…疲れたね」
「うん、でも、ね」
「ん?」
「中で、」
その、破壊衝動に俺はきっと。
「ダメだよ。明日が辛いでしょ」
「明日また、」
「いいよ。たっぷり、ゆっくり。
…息が熱いけど、眠い?」
「…ちょっと」
「よしよし」
頭を撫でると、気持ち良さそうに緩く微笑み、少しだけ身を翻しては、アゴをさらっと舐める楓。
堪らなくて、少し下を向いてぐちゃぐちゃにキスをするだけで、勿論興奮してしまう。第二回戦に「若いなぁ」という後頭部も緩く撫で、くしゃくしゃにして。
「…やっぱ、」
「うん…」
「いい?」
「うん」
背中を撫で上げ、また組み敷いて、肩にまわる手に、ああ捕まっていると体温を感じて。
髭で優しく耳から、首から、鎖骨から、乳首まで。食んで触れる場所すべてが甘い。混乱するような酩酊が、凄く。
結局、痩せていてより筋ばった肋骨も、腸骨も、痛々しいけど、舌触りが好き。
腹あたりを舌で舐めると「最近、さ」と言う。
「ちょっと、弛んできたかな」
「んー」
確かに。
出会った頃よりは年を重ねた。そうか、もう30が近いね、楓。
「けど、好きだよ」
「…そう?」
「より暖かい」
「ねぇ、」
臍あたりの筋に舌を這わせれば「まぁさ、」と切ない。
「温泉、」
「ん?」
「どこ、だったの?」
「…箱根?あたり」
「ん、そうなんだぁ、」
「気持ちよかった?」
「んん、」
性器を撫でる。
「あぁ、うん」と息が切れ切れになるのに、「またやろうね」と言えるのが、幸せだった。
「ま…あさ、」
「うん」
「あぁ、あの、」
頭を、乱すように撫でられる。だから、乱すように中を擦って。
「どうして、」あぁ、いまはさ。
「どうして、俺だった?」
「楓」
こんな灰色の俺なんかを、と濡れて虚ろに続ける。
「いや、」
真っ白な、その溶けそうな破壊衝動が。
「仕方ないじゃん」
せせらぎに降り注いだその衝動を、ただ見送っていきたかったんだよ、俺はずっと。
「いつか、行きたいね、楓」
「うん…?」
「箱根湯本?」
「まぁさ、」
休憩をするように、一回キスをして。
何もかもぐちゃぐちゃで、甘く溺れていく。「力を抜いて」と、息を吐くように導いて。
楓の目は酷く、怯えたような泣きそうなような色っぽさを持っていて。
虚ろなそれは確かに、灰色に見えるのかもしれないけどさ。
何度目かにしても苦しいくらいにキツかった。
何度でも、何度かわからなくなっても。
「あっ、」と、実に色っぽい。だが仰け反って逃げそうなので、抱いたまま起きる。
それで余裕なくも「あぁっ、」と笑った楓の細い腰を掴んだ。
「好きだよね、楓これ」
「んんっ、」
「俺もね、まぁ、捕まえてる感あって好き」
「ん、うん」
「だから、」
行かないでね、どこにも。
「はっ、」と呼吸が止まり、締まり、楓は射精した。
くったり凭れた楓の耳元に聞こえるか、わからないから「好きだよ、」と。聞こえているかはわからないから。
それもいつかわからなくなるまで。灰色で真っ白なこの破壊衝動に、混乱するように。
息をなくすまで、好きだよ。飲み込んで、この世界に酔っていたい。愛とか、そんな何色かわからないものの意味が、なくなるまで、ずっと。逃げるよりは、追いかけるようにさ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる