5 / 73
月に痙攣
3
しおりを挟む
マーサなる来訪者はラフで、マーサ、のわりには男の日本人だった。
染色感のある赤っぽい茶髪、体系的には程ほどの多分細マッチョ。迷うことなき日本人。
それがラフにトートバックを肩掛けしているのだし、近い友人だろう。
意外だと感じた。マーサになのか、志波になのか。
暖かい笑顔で「同級生の…作田くん」と、一瞬名前に迷ったようだが、志波はマーサに俺を紹介をした。
「同級生?」
「うん、小学から中学みたい」
マーサはそれからいつもやるような、そんな自然な動作で「はいよ」とトートバックを志波に渡してから「…小、中?」と、疑問を隠さずに俺に言う。
…どうも、マーサの寝癖に気がいってしまう。
「どうも、作田です」
「…まあさです…?」
挙動不審というか、俺が不審なようだ。
まあさは志波をそんな目で見ては、「見崎くんっていう、共通の知り合いから聞いたんだって」とやり取りをしている。
「共通の?」
「みたい。俺は覚えてないんだけど、見崎くんは高校まで一緒だったらしい」
「そうなのか」
一体、彼は誰なんだろう。
ふとまあさは「早いな」と俺の真横にあった点滴を触ろうとするが、「逆流したんだよ」と志波が補足する。
「止めちゃった訳じゃないよ」
「…まぁ、」
「体温が上がったわけでもない。あまりにも遅かったから」
まあさはそれに、何故だか少し気まずそうに俯いて点滴から手を離し、俺の向かいに座るついでに志波の額に触れた。
「ホントだ、冷たい」と言うまあさと、何も言わずに微笑んでいる志波の二人の空気に俺は少なからず気まずかった。
他者が介入しづらい呼吸感、空気をそこに見た気がした。
「あ、そうだ楓。
これ終わったら飲み薬に変えるって」
「え、聞いてない」
「大丈夫大丈夫。錠剤じゃないから。針ぶっ刺さなくて済むじゃん?」
「うーんそうか…。前回マーサが間違えて止めちゃったから?」
「…うん…?」
「あ、思い出さないでなんか。うん俺が止めたから」
「…今考えちゃったじゃんか、そうだよな。そんで、暖まって血流が良くなって逆流した」
「うんそう。わかった。ほら作田くんが着いていけないから」
非常に仲が良いようだな。家族のようだ。
新鮮だが違和感がある。あの志波がこうして友人と楽しそうにしているなんて。
「いや、気にしないで大切なことだろうから」
「サクタくん…」
ぎこちなくマーサが俺を呼ぶ。
それになんだか「は、はい」とこっちまでぎこちなくなってしまうが、案外マーサの表情は普通、それどころか冷めているようにも見えた。
「お見舞い来てくれてありがとう。どうして来たの?」
「え?」
どうやら、俺は良く思われていないようだった。
「いや…、聞き方が悪いな。けど、地元から来たのかなとか、どうして今更来たのかなとか」
「…いや、病気になったって聞いて」
「あんた、楓がなんでここにいるのか、知ってんの?」
言われてみれば、知らないけど。
今更ってなんだろう。
染色感のある赤っぽい茶髪、体系的には程ほどの多分細マッチョ。迷うことなき日本人。
それがラフにトートバックを肩掛けしているのだし、近い友人だろう。
意外だと感じた。マーサになのか、志波になのか。
暖かい笑顔で「同級生の…作田くん」と、一瞬名前に迷ったようだが、志波はマーサに俺を紹介をした。
「同級生?」
「うん、小学から中学みたい」
マーサはそれからいつもやるような、そんな自然な動作で「はいよ」とトートバックを志波に渡してから「…小、中?」と、疑問を隠さずに俺に言う。
…どうも、マーサの寝癖に気がいってしまう。
「どうも、作田です」
「…まあさです…?」
挙動不審というか、俺が不審なようだ。
まあさは志波をそんな目で見ては、「見崎くんっていう、共通の知り合いから聞いたんだって」とやり取りをしている。
「共通の?」
「みたい。俺は覚えてないんだけど、見崎くんは高校まで一緒だったらしい」
「そうなのか」
一体、彼は誰なんだろう。
ふとまあさは「早いな」と俺の真横にあった点滴を触ろうとするが、「逆流したんだよ」と志波が補足する。
「止めちゃった訳じゃないよ」
「…まぁ、」
「体温が上がったわけでもない。あまりにも遅かったから」
まあさはそれに、何故だか少し気まずそうに俯いて点滴から手を離し、俺の向かいに座るついでに志波の額に触れた。
「ホントだ、冷たい」と言うまあさと、何も言わずに微笑んでいる志波の二人の空気に俺は少なからず気まずかった。
他者が介入しづらい呼吸感、空気をそこに見た気がした。
「あ、そうだ楓。
これ終わったら飲み薬に変えるって」
「え、聞いてない」
「大丈夫大丈夫。錠剤じゃないから。針ぶっ刺さなくて済むじゃん?」
「うーんそうか…。前回マーサが間違えて止めちゃったから?」
「…うん…?」
「あ、思い出さないでなんか。うん俺が止めたから」
「…今考えちゃったじゃんか、そうだよな。そんで、暖まって血流が良くなって逆流した」
「うんそう。わかった。ほら作田くんが着いていけないから」
非常に仲が良いようだな。家族のようだ。
新鮮だが違和感がある。あの志波がこうして友人と楽しそうにしているなんて。
「いや、気にしないで大切なことだろうから」
「サクタくん…」
ぎこちなくマーサが俺を呼ぶ。
それになんだか「は、はい」とこっちまでぎこちなくなってしまうが、案外マーサの表情は普通、それどころか冷めているようにも見えた。
「お見舞い来てくれてありがとう。どうして来たの?」
「え?」
どうやら、俺は良く思われていないようだった。
「いや…、聞き方が悪いな。けど、地元から来たのかなとか、どうして今更来たのかなとか」
「…いや、病気になったって聞いて」
「あんた、楓がなんでここにいるのか、知ってんの?」
言われてみれば、知らないけど。
今更ってなんだろう。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる