Eccentric Late Show

二色燕𠀋

文字の大きさ
上 下
73 / 107
in DIVE CITY Tokyo

2

しおりを挟む
「エッレのギターは東京ってか千葉ちばだけど」
「そうなのげんちゃん」
「確か」
「昴、まだ着かんの?観覧車これやん」
「一回建物通るんだよ」
「なんば?」
「わからん」

 建物内に入れば太一、「すげぇー!」だの、展示された車を見て「車!スバルやん!」とか言ってる。

 とにかく太一、興奮中。ライブ前のこのテンション、大丈夫だろうか。

「…この人テレビの丸いヤツみたらさぁ」
「失神どころか死ぬかも知れないな」

 あれなんとなく帰りに視界に入るもんな。あれ、てかさっきは入らなかったのか?

 まぁそんなもんか。

「今日のライブ、なんか中継あるらしいね」
「え、なにそれ富士?」
「んなバンドじゃないやんico生。まぁマイナーバンドあるあるだよね」

 それは確かに。
 会社立ち上げるには有難いのか?多分。なんかそんなバンドあった気がする。

 しかしだ。

 果たして今日のライブ自体、まずどこの会社持ちなんだろうか。今月いっぱいとか言ってたし、新柴あらしば

「来るのかなぁ…」
「先輩、降りるよ」

 建物から出たときに声を掛けられた。太一は「うぉぉ、」と下を見て驚く。

「ここだけ非現実的というか…なんや隔離されとるなぁ…」

 確かに。

 上がファンシー(観覧車とか)なのに対して急になんか、The ライブハウスが下にあるんだから。
 しかもここだけ2人分くらいしか横幅のない階段だし、もう露骨なるライブハウスの、入り口横のロッカーわちゃわちゃだし。

 手すりみたいな仕切りの線が扉にあって、扉の前でスタッフがチケット確認している。

 そうだと思い、俺は太一に、ショルダーバッグ(サブカルクソ眼鏡?)からチケットを取り出し、階段を降りながら渡す。それに太一はビビっていた。

「あぶねぇよ、高いし!降りてからでも…」
「はい」

 わりと慣れている。
 ついでにタバコと財布とケータイをジーパンのポケットに移動。これで大体準備OK。

 しかし、まぁ。

「あたしも準備しなきゃなぁ」
「俺はもう」
「あー、太一は見た瞬間わかったよ。お前それでよく来れたなマジ」
「まぁなー」
「つかタバコ中吸える?」

 まずは降りて、階段下の灰皿前で議論。最早わりと人がいるので、向かいの石段に座ることにする。

 三人でタバコに火をつけながら「あー」と思い返す。

「狭かったと思う。自販機は確かなかったような気がする」
「じゃやっぱ持ってこ。ワンドリンク確か500円だよね」
「うん」
「てか財布持ってくの古里さん」
「持ってく。だってCD買うもん」
「ん?」
「新曲先行だもーん」
「マジか。じゃぁあとで返すからあたし財布しまうわ」
「俺もそうする!」
「じゃ1個でいいな。行くかー。てか中確かロッカーあったよ。中にしね?
 まだ時間あるからロッカー開いてんだろ、つうか意外と開いてんだろ」

 3人で吸い殻を頑張って灰皿に捨て、入場。
 入場してすぐに太一にドリンクを任せ、北谷はなんだかんだアルバムを、新曲のミニアルバム含めトータル3枚とタオルとライブTシャツを買っていた。俺も多分同じくらい買った。
 太一には手土産にタオルと新曲を買ってやった。

 中のロッカーは案外誰も気付いてないらしい。空きまくりだった。

 どうせ楽屋挨拶してから出るからいいや、帰りに人の波でこれを開けるのは困ることもないが、一応北谷達にはそれを告げ、別々に荷物を入れた。

 ちゃっかり俺はタバコのフィルムに1000円を挟み、財布もしまうことにした。ポケットにはタバコのみ。みんなそんな感じで。

 ドリンクはジントニックを頼んだ。やっぱ最初はこれ。

「場所取っとくの?」
「あそうだね」
「別々?それとも一緒派?」
「どっちでもいーよ、明日休みだし」
「でも意外と地蔵なのか」 
「意外と盛り上がるけどな」
「まぁ失神してるもんな」
「今回ほら!ここ一段一段手すりあるから大丈夫!」
「じゃ手すり前にしよ。真ん中あたりにしよ」

 良い選択だねぇサブカルクソ女子。

「しっかし昴。こんバンド俺YouTubeでしか見られんかったけん、」
「あぁ、昨日の今日だかんね。えぇっとね」

 ふいに思い出した。
 昨日の帰りを。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

Slow Down

二色燕𠀋
青春
バンドさんたちの高校時代。 「Eccentric Late Show」より。 ※別編。「Eccentric Late Show」なくても読める。

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

白い鴉の啼く夜に

二色燕𠀋
現代文学
紫陽花 高校生たちの話 ※本編とはあまり接点がないです。 「メクる」「小説家になろう」掲載。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

九月の優しさ

長尾十二
現代文学
・不思議な深夜サイクリング ・溝男 ・ファイヤーワークス 三編、短編集

タイトル『夜』 昨日のバイク事故ご報告2024年10月16日(水曜日)犯人逮捕

すずりはさくらの本棚
現代文学
 タイトル『夜』 作者「すずりはさくらの本棚」 ジャンル「随筆」  基本的に「随筆」は本当に起きたことしか書けません。嘘が苦手というか…。なんなんだろうね。  本日決定事項「2024年10月17日(木曜日)」入院(強制入院)か前の住所に戻るでした。  もう一点が「監視の目を増やして見届ける」。入院がだめな場合。三点目「施設に入居する」。  四点目「今の現状でがんばる!しかし、今よりも監視の目を増加する。」  まるで「監視、監視、監視……。」犯罪者ですか?とコパイロットに相談したくらいです。  私なにかしましたか?監視なので、娑婆に出てきたばかりの監視が必要な人ですか?  と相談したくらいです。それくらい昨日の事故を理解できていません。  生命の危機に瀕しているのに、本人が理解できていないから。警察への届けを出してくださった方々。  ありがとうございました。おかげさまで、住所不定がなくなりそうです。  ナイトタイムという言葉がある。  一見なんの意味もない言葉だが、深い意味がありそうだ。  職圧された人間社会にて、たたずむ君と私がいる。  色違いな場違いな色合いだが、社会に馴染んでいる。  ころあいを見計らって、社会という帳に身を委ねる。  パステルカラーの複雑な感性は充実しながら膨張する。  深夜になれば、君と私は早朝、昼間、深夜という具合に色褪せて行く。  夜は深々と降り積もるごとく…。夜という名前に満たされて行く。  もう一杯、ブラックコーヒーでも飲もうか……。

処理中です...